クラブが遅れて下りてきてフェースが開いて当たる「振り遅れ」。この原因は上半身と下半身の「オーケストレーション」が取れていないことが原因であるとクォン教授。今週の通勤GDは「Dr.クォンの反力打法」第25話。

【通勤GD】通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。ワンテーマを3回~6回のシリーズでお届け。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家

振り遅れの原因とは?

吉田 今日は読者から質問がきています。「地面反力を使うと、たしかに体が勢いよく回る感覚はあるのですが、インパクトで振り遅れてしまい、ボールが右に出ることが多いです。もっと腕を振ることを意識したほうがいいのでしょうか?」

クォン ふむ。これはオーケストレーションの問題だね。

吉田 オーケストレーション?

クォン オーケストラは、いろんな楽器が別々の音階を奏でながら、ひとつの「音楽」として見事に統合されているね。ゴルフのスウィングも、足や腰、腕、クラブとさまざまなパーツが異なる動きをしながらも、それらが上手く作用し合ってひとつのスウィングを作り上げる。

クォン これがバラバラになると、不協和音が生じてしまうわけだ。

画像: スウィングもオーケストラ同様、バラバラになると不協和音が生じる

スウィングもオーケストラ同様、バラバラになると不協和音が生じる

吉田 そのひとつが「振り遅れ」だと。

クォン スウィングがオーケストレート(統合)されるためには、体の各部がしっかりとコーディネートされていなければならない。

吉田 オーケストレートとコーディネート……なんだかややこしいですね。

クォン コーディネートというのは、各部の運動がちゃんと順番どおり行われるということ。

吉田 以前からおっしゃっている、足→腰→胸→肩→腕……という正しい動きの順序のことですね。

クォン そう。ダウンスウィングは下半身(足と骨盤)が引っ張って、上半身(お腹、胸、肩、腕、クラブ)が後からついてくる、というのが正しい順番。切り返しでの腰の鋭い回転が、上半身と下半身のオーケストレーションを生むわけだ。

吉田 でも今回の質問者のように、腰を強く切ることを意識するあまり、腕が振り遅れてしまうケースもあります。

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クォン それはおそらく、切り返しで腰や胸が回転するタイミングが早すぎるのが原因。いわゆる「開きが早い」ために、上半身と下半身がバラバラになり、腕とクラブが体の後ろに下りてきてしまっているのだろう。

吉田 これを防ぐにはどうすれば。

クォン 前回紹介した「斜め前ステップ・ロープ素振り」はまさにうってつけだね。

吉田 左足を前にステップしながらロープ素振りをするアレですね。たしかに上体の開きを抑えられますし、ロープをスムーズに振るにはタイミングよく各部を回していく必要があります。

クォン 指揮者が腕だけでなく体全体でリズムを取るように、ゴルフも腕だけを速く振ろうとしてもオーケストレーションは上手くいかないよ。

上体の開きが早すぎるのが振り遅れの原因

上半身と下半身のオーケストレーションが取れた状態とは、必ずしも上半身と下半身が同時に回転することではない。切り返しで足から腰、肩、腕と各部が順序よく動いていくこと(コーディネーション)ができれば、振り遅れることはない(写真左)。

一方上半身が早く回転しすぎると、体の各部の連動が崩れ「振り遅れ」が生じてしまう(写真右)。

画像: 体の各部のコーディネーションが大事

体の各部のコーディネーションが大事

ILLUST/Kazuhisa Uragami

週刊GDより

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