石川遼
1991 年生まれ。埼玉県出身。2007年に15歳でツアー優勝を果たし、09年には18歳で史上最年少の賞金王に輝く。ここ数年は不振が続いたが、今シーズンは成績、飛距離ともに絶好調。
ヘッドを離して構えると体重移動がラクになる
石川選手のドライバーのアドレスを見ると、クラブヘッドをボールからかなり離して構えていることがわかります。これは、今季から取り入れたセットアップですが、最大のメリットは、右へのウェートシフトがしやすくなることにあります。
テークバックでは、重心を右に移して右股関節に体重を乗せつつ、体をターンさせながらヘッドを引いていくという作業が必要になります。しかし、あらかじめヘッドを右にセットすることによって、右へウェートをシフトするという工程を省略することができるわけです。
実際、昨年に比べると、バックスウィングで右の股関節にしっかりと乗れていることがわかります。また、トップ・オブ・スウィングにおいても右の肩甲骨が正面から見えるほど、上体の捻転が深くなりました。
このバックスウィングの変化によって、ダウンで頭が左へ突っ込む度合いは抑えられ、ビハインド・ザ・ボールで右軸をキープしたまま、鋭く体を回転させることが可能になっています。
石川選手のように高速で体をスピンさせてボールをとらえるタイプは、スウィング中のわずかな軸のブレが大きなミスにつながります。そういう軸のブレを抑えるという意味で、このセットアップに大きな効果があったのではないでしょうか。
今季の石川選手は、ものすごく飛んでいます。フジサンケイクラシックなどでは、ドライビングデ
ィスタンス1位のC・キム選手をアウトドライブする場面も見られたほどです。
攻撃的なゴルフを身上とする石川選手にとって、ドライバーはスコアの生命線。そのドライバーが好調な今季は、さらなる活躍が期待できそうです。
2019年の石川遼ドライバーショット
2018年の石川遼ドライバーショット
腕のロールが抑えられた
今季、ドライバー以上に素晴らしいのがアイアンショットです。石川選手が米ツアーから撤退する直前は、ナイスショットをしているのにスコアにならないという試合を目にすることがありました。
それは、インパクト以降のフェースローテーションがやや大きかったために、自分がイメージしているより少し強い球になっていたことが原因だったと思います。セッティングの厳しい米ツアーでは、そのわずかな狂いが許されなかったのです。
しかし、今季は腕と体の同調性が素晴らしいために、腕のロールが抑えられ、フェースローテーションが適正になっています。その結果、スピンコントロール力、ショットの精度が各段にアップしているのです。
たとえば、インパクト直前、フェース面がボールに向き、あとは体を回すだけという体勢ができているところ。あたかも胸の前にボールをはさんでいるかのように、腕が体の正面にキープされていると
ころ。
クロスバンカーからのコントロールショット
そして、フォローで腕が走りすぎず、フェースローテーションを抑えてボールをコントロールしているところなどを感じ取ってもらえたらと思います。
【解説】内藤雄士
ないとうゆうじ。プロコーチ。日大ゴルフ部時代、米国にゴルフ留学し、最新の理論を学ぶ。その後、丸山茂樹、平塚哲二、矢野東らのコーチを務める。ラーニングゴルフクラブ代表。
PHOTO/Tadashi Anezaki
週刊GD2019年10月8日号より
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