前回、第23話のお話し
前々回、第22話のお話し
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
GD 球の曲がりはボールの回転軸がどう傾いているかで決まるというのが前回の話。その軸の傾きをどう意図的に作り出すかが問題ですね。要はスライス、フックの打ち分け方ですが……。
湯原 かつて、サム・スニードが「どうやってボールを曲げているんですか?」という質問対して「曲げようと思っているだけですよ」と答えていたように、プロは何か特別なことをやって曲がる球を打つことは特殊な場合を除いてほとんどありません。
GD でも、スライスとフック、あるいはストレートといった球筋は、物理的に何らかの違った要素がなければ打ち分けられないはずですよね。
湯原 では、2つのダウンスウィングを見てください。「大きなフック」と「大きなスライス」ですが、少し違いが見て取れます。「大きなフック」は明らかにインサイドからクラブが下りてきているし、「大きなスライス」はアウトサイドから下りてきています。
GD やはりフックはインサイドアウト、スライスはアウトサイドインに振り抜くということですか?
湯原 いや、それだけではないんです。ヘッド軌道をインサイドアウトにしただけでは、右に打ち出して真っすぐ右に飛ぶだけの球筋になってしまいます。フェースを少し左向きにしておかなければ、右に飛び出してセンターに戻ってくるような球筋は打てません。逆に、大きなスライスを打つ場合のアウトサイドインではフェースを少し開いておけば、左に飛び出してセンターに戻ってくる球筋が打てるのです。
湯原 つまり、スウィングをまったく変えていないからですよ。
GD ということは……変えているのはフェースの向きだけですか。
湯原 そのとおり。フックを打つときはフェースを少し左に向けて構えます。そのまま打てば左に飛び出して、さらに左に曲がる球筋になってしまうから、その曲がり幅に応じて体を少し右に向けておくのです。
GD トーナメント中継で解説者が「フックで狙っていますね」などと言うことがありますが、そのときの選手の体の向きを見ると、目標方向(例えばピンフラッグ)に対して右向きに構えていますね。
湯原 右に向いてそのままスウィングすればボールは真っすぐ右に飛ぶだけですが、フェースを閉じておくことで、右に飛び出して目標方向に戻る球が打てるわけです。
グリップは変えずフェース向きだけ変える
GD スウィングを変化させなくても、フェースのセットアップだけでフックとスライスが打ち分けられるなら、アマチュアでも練習次第で、できそうな気がします。
湯原 できますよ。どれぐらいフェースの向きを変化させると、どんな球筋になるのか。これを練習してしっかり把握しておく必要があります。
GD 具体的にどんな練習から始めればいいのでしょうか。
湯原 練習場のマットなどを使った練習がいいでしょう。目標方向にスクェアに立ち、マットの直線を参考にしてフェースの向きだけ変えて打ってみてください。ほんの少しフェースを閉じてスウィングすれば、ボールは左に飛び出して、さらに左へ曲がる球筋になるはずです。その曲がり具合に応じて体の向きを少し右に向けてやれば、右に飛び出してセンターに戻ってくるようになるはずです。
普通のフック
大きなフック
GD フェースを閉じて普通にスウィングするだけでいいんですか。
湯原 それだけで大丈夫。スライスを打つときはその逆のことをすればいいんですよ。そのときに気をつけることは、どうやってフェースを開閉するかです。例えば、バンカーショットでフェースを開くときのこと。
湯原 手首を捻ったり、手首の角度を変えたりしてフェースを開こうとする人がたまにいますが、そうやってフェースを開いても、クラブを上げて下ろすと、インパクトでフェースはいつもどおりに戻ってしまうから、フェースを開いた意味がないのです。グリップはいつものままでフェースを開くようにしないと、インパクトで開いた状態になりませんから。
普通のスライス
大きなスライス
GD なるほど。でも、グリップのバックラインに逆らうように握るのは抵抗がありますね。あっ、だから湯原プロはバックラインのないグリップを愛用しているんですね。
湯原 バックラインが人ったグリップのほうが、いつでも同じように握れると思っている人が多いようですが、私としては、毎回同じように握る必要はないし、打ちたい球筋によって握り方は変わるわけだし、その日の体調によって握り方に微調整が必要になることもあるので、バックラインがないほうがしっくりくるのです。
湯原 バックラインありのクラブを使っていた頃は、グリップ交換をクラフトマン任せにせずに、最後に自分で微調整をしていました。自分でいちばんしっくりするところにバックラインがくるように、接着剤が乾く前に調整するのです。
GD そこまでこだわってグリップ交換していたんですか。
湯原 そのうちに、バックラインが邪魔だと感じるようになって、まだバックラインなしのグリップがなかった頃は、バックラインが上側にくるように差していました。
GD 人によっては、バックラインなしのグリップは握ったときのしっかり感がなくなりそうな不安があるかもしれません。でも、意図的にボールを曲げるショットを打つためには、試してみる価値はありそうですね。
湯原 バックラインのある、なしは慣れです。当初は違和感を感じじきに使えるようになりますよ。
GD 以前この連載で湯原プロが言っていたように、要は「グリップにしっかりとした密着感があればいい」ということですね。ところで、話をスライス、フックの打ち方に戻します。スタンスの向きはどのように考えればいいのでしょうか。
湯原 フックを打つときに、スタンスのラインが右を向いているだけではダメ。そういうスタンスで、ひざから上がマットのラインと平行なら、フェースを閉じている分だけ左に飛び出してさらに左に曲がる球筋になってしまいます。肝心なのは、ひざから上がどういう向きになっているかです。
GD スタンスの向きではなく、ひざから上のボディラインで打ち出す方向を決めるということですね。
湯原 スタンスがクローズだからフック。オープンだからスライスではありません。問題はひざから上がどうなっているかですよ。
週刊GDより
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