ない〝直ドラ〟だ。この練習は、アマチュアにも効果があるという池村寛世プロ。
ドライビングレンジで「直ドラ練習」をする男子プロが増えている。その先駆けともいうべき存在が、実際のラウンドでも直ドラを多用する池村寛世プロ。本人によれば、直ドラ練習にはいくつものメリットがあると言う。
池村 ボクは、(横峯)さくら姉さんから直ドラの打ち方を教わったのですが、『直ドラは調子のバロメーター』とは、さくら姉さんがよく言っていた言葉です。つまり、いいスウィングをしていれば直ドラでもちゃんと打てるし、でもスウィングが悪くなるとまったく当たらない。だから直ドラを普段の練習に取り入れると、スウィング作りやスウィングが悪くなって当たらなくなったときの矯正に絶大な効果があるのです。
さくら姉さんとは、横峯さくらのことだが、彼女がトーナメントで直ドラをよく使っていたことはご記憶の向きも多いだろう。
スウィングの課題が浮き彫りになる
直ドラ練習の効用を具体的に列挙すると、次の通り。
①直ドラは、ボールが地面にあるので、軸のブレや体重移動によるちょっとしたスウェイでもミスヒットになる。だから、スウィング中に体がブレないようになり、コンパクトな回転で、ボールの芯をとらえて飛ばすというスウィングの基本をチェックできる。
②ボールをコントロールするには正しいスウィングプレーンで、インパクト時にフェースの向きや打点の高さをコントロールする必要があるため、理想的なスウィングプレーンが作れる。
③直ドラは、ボールを芯でとらえないとちゃんと飛ばない。だから必然的にミート率が上がり、結果的に飛距離も伸びる。
池村プロは、身長166センチ。ツアープロのなかで決して恵まれた体格といえないが、ドライバーの平均飛距離はティアップしたときで310ヤード。
直ドラのときでも280~290ヤード飛ばすという。スウィング矯正にもなると話す。
池村 ボクの場合、ドライバーでティアップしたボールを打っていると、もっと飛ばそうとして力んだときに、切り返しで右肩が下がってアッパーブローのスウィングになる傾向があるのです。
池村 その矯正に直ドラの練習は最適なんです。なぜなら、直ドラはアッパーブローではなく、レベルブローで振らないとボールにちゃんと当たらないからです。
力んだときに、切り返しで右肩が下がるのは、飛ばし屋に共通して見られる現象だが、その修正が
いとも簡単にできるという。むろん、ドライバーでダフったり、トップしたりする人のスウィング矯正にも大いに役立つ。それだけではない。
クラブヘッドがインパクトでレベルに入るようになるため、多くのアマチュアが苦手とする3番ウッドや、フェアウェイバンカーからの、ロングアイアンやユーティリティなどの長いクラブを使ったショットも、直ドラ練習で劇的にやさしく打てるようになるのだとか。
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直ドラのメリットとは?
直ドラ練習のメリットは、スウィング作りやスウィングの矯正に最適なだけではない。直ドラをしてみたときにトップが出るときはあおり打ち。ダフるときは突っ込み打ち。シビアな練習なだけに結果が今の自分の状態を示してくれる。また直ドラを練習に取り入れることで、苦手なクラブの克服にも効果がある。
池村 直ドラの練習をしておくと、フェアウェイウッドがめちゃくちゃやさしくなります。あとフェアウェイバンカーから打つのが上手くなる。なぜなら直ドラは、究極の『払い打ち』だからです」
これはもう説明をするまでもないだろう。ドライバーのロフト角は9度~11度。多くは10.5度前後だが、対してフェアウェイウッドは、一番ロフトの立った3番ウッドでも15度前後ある。
言い換えると、10.5度のドライバーの直ドラでボールをしっかりとらえて、高さの出る打ち方をマスターしておくと、それよりもロフトの寝たフェアウェイウッドは、楽にボールをつかまえて上げられるようになるというわけだ。
直ドラのメリット
【メリット①】その日の調子のバロメーターになる
スタート前にドライビングレンジで直ドラを打ってみよう。軸のブレや体重移動による微妙なスウェイ、ちょっとした上下動でもミスヒットにつながる直ドラは、その日のスウィングの調子を見極めるバロメーターになる。
むろん、いい当たりが出れば自信をもってスタートに臨めるし、ミスの傾向によって軌道の良し悪しを判断できる。
【メリット②】正しい体重移動が自然に身につく
地面にあるボールをドライバーで直接打つ直ドラは、正しいスウィングプレーンと、タイミング、正しい体重移動の3つが揃わないと思い通りの球が出ない。
たとえば、写真右のように右サイドに体重が残るとトップしか出ない。逆に言えば、直ドラでクリーンに打てるようになれば正しい軌道やタイミング、体重移動が整ってきた証拠といえる。
【メリット③】フェアウェイウッドが楽に打てるようになる
直ドラの練習をすると、アマチュアの多くが苦手とするフェアウェイウッドやロングアイアンが簡単に打てるようになる。
直ドラは究極の「払い打ち」であり、クラブヘッドがレベルに入りやすくなるからだ。結果、長いクラブが上手く打てるようになると同時に、フェアウェイバンカーからのショットも楽に打てるようになる。
当然ながら、ミート率もよくなり、フェアウェイウッドによるダフリやトップも激減する。いわば距離のあるホールでのスコアメークが飛躍的に楽になる。フェアウェイバンカーから、ロングアイアンやユーティリティなどの長いクラブを使うときのショットも、同じ理屈で上手くなることは言うまでもない。
ちなみに、池村プロは試合中にも直ドラを多用してスコアメークにつなげているが、それはどのような理由からだろうか?
池村 トーナメントで直ドラを使う理由は2つあります。1つは、直ドラで打つと3番ウッドで打つよりもスピン量が少ないため曲がりが少ない。当然ながら、アゲンストの風のときに、曲がりや吹き上がりを気にせずに打っていけます。
池村 もう1つは、3番ウッドは右にも左にも曲がるけど、直ドラは右にしか曲がらないので、左を消して思いきり攻めていけるのです。
試合中にも直ドラを使うため、池村はバッグにフェアウェイウッドを1本も入れていない。ドライバーの次はアイアン型ユーティリティを3本入れ、この3本で200ヤードから250ヤードまで対応する。それ以外では直ドラを多用しフェアウェイウッドの代わりに使用している。
たとえば、打ち下ろしの狭いホールでアゲンストの風が吹いていて、左サイドにOBや池があるような、絶対に左に行かせたくない場面は、直ドラを使うのにピッタリのシチュエーションと池村は言う。
池村 アゲンストの風ではボールが浮くとスピンと風でボールが吹き上がります。風に負けない球、つまり低い球が必要なときは3番ウッドだと低く打とうとしなければいけません。でも直ドラは、低く打とうと意識しなくても、ちょうどよい球の高さ(中弾道)で風に負けない強いボールが飛び出してくれるんです。
池村 弾道はほぼストレート。フェードを打つ意識はとくにないのですが、フェアウェイ左端を狙って打つと、低い弾道でフェアウェイの中央に戻ってきます。
直ドラ成功のための3ステップ
【ステップ1】
ハイティアップでのアイアンショット
直ドラの際にヘッドが手前のマットに当たってダフるようなら、まずは高いティアップのボールをアイアンで打ってみよう。直ドラとは真逆の発想だが、両方ともスウィング軸やスウィングプレーンを安定させる練習になる
【ステップ2】
通常よりティアップを1センチ低くする
ハイティアップのアイアンショットが打てるようになったら次はこれ。ドライバーでティの高さを1センチ低くする。慣れてきたらまた1センチ低くする。ここで力みが出るようであれば力を抜いて打てるまで練習しよう
【ステップ3】
最後は思いっきり
直ドラしてみよう
直ドラは、ティアップ時よりやや内側にボールを置き、インパクトでは究極の払い打ちを目指して思い切り振り抜こう。最近のドライバーはスウィートエリアや慣性モーメントが大きいのでやさしく、直ドラ向きだそう。「スコアラインの下から2番目の線でボールをとらえるイメージなら完璧です」と池村。さっそくトライしてみよう。
これから先、冬場の風の強いときに直ドラを使えたら、強力な武器になること間違いなし。たとえ直ドラがコースで使えなくても直ドラ練習には、スウィングの矯正やインパクトの向上などたくさんのメリットがある。いろんな可能性を秘めた直ドラ練習。さっそく、練習場で試してみよう。
週刊GD2019年12月10日号より
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