UTでもターフを
取るくらいの意識で
170~180Yの長いパー3は難関ホール。やさしいユーティリティでティショットするからにはグリーン周りくらいにはボールを運んでおきたいところ。
しかし、実際には、ひどくダフったり左に引っかけたりして、グリーンを大きく外すミスが出がち。
そんなミスを、甲斐慎太郎プロは「ユーティリティの使い方が間違っている」と指摘する。
甲斐 ユーティリティは、ロングアイアンよりも球が上がりやすいし、つかまりやすい。だからややダウンブローに打つのが正解なのに「球を上げたい」という意識からあおり打ちになる人が多いんです。ティアップが高い人なんて「上げたい欲」がそこに現れていて、もう打つ前からミス確定ですよ。
つかまりのいいユーティリティであおったら引っかけやすいし、長いぶんだけクラブが寝てダフリもある。ユーティリティは、低くティアップしてターフを取るくらいのつもりで打つことが性能を引き出す秘訣だと甲斐プロ。
ユーティリティはやさしいけれど長くてつかまりやすい
ユーティリティは同じロフトのアイアンよりもソールが広いぶん重心が深く、球が上がりやすくつかまりもいい。一方で長さが長めで振り遅れやすい。
ユーティリティで上げようとすると、ダウンスウィングでクラブが寝て振り遅れ、ダフリやすく、つかまりがいいぶんフェースが急激に返って引っかけも出やすい。
ユーティリティのティアップは最高でも5㍉
ユーティリティはアイアンの延長のイメージ。ゆるやかなダウンブローでボールをとらえたい。そ
のためにはティアップは低め。最高でも5㍉くらいまで。
【鉄則】ユーティリティはアイアンの延長。最下点の手前で打とう
ボールの先のターフを薄く取るイメージ
ダウンブローとはいえ強く打ち込む必要はない。ゆるやかな入射角で、ティアップしていてもボールの先のターフが薄く取れるくらいが理想だ。
これが甲斐プロのターフ跡!
実際に甲斐プロがユーティリティでティショットした際のターフ跡。ティの2~3㌢先から薄くターフが取れている。入射角がゆるやかなダウンブローでボールをとらえている証拠だ。
「打ち込む」ことより
「あおらない」意識
ユーティリティもダウンブローで打たなければいけないのはわかったが、実はそれが難しい。どうすればユーティリティでうまく打ち込めるのだろうか。
甲斐 必要以上に「打ち込む」と考えずに、あおり打ちの要因を消してスウィングすればいいと思います。あおり打ちになる人は上体の前傾が崩れてしまうので、まずはしっかり前傾を保ってインパクトするのがポイント。
甲斐プロのショット
コンパクトなトップから、しっかり踏み込んで低く長いフォローでボールを押し込む。体の回転を止めずに最後までしっかり振り切ることが大事。
甲斐 ハンドファーストの状態でボールをとらえましょう。しっかりと左に乗ってインパクトすることも大事なので、少し左足下がりのライから打つ感覚でスウィングするのもおすすめです。球を上げようという意識も消えるし自然とヘッドが上から入ってくれますよ。
実際に打つ前に、右足のかかとでボールを踏んで素振りをするのが効果大だ。
かかとで踏めば左に乗っていける
右足のかかとでボールを踏みながらスウィングすることで、右足で地面をしっかりと押し、左に乗りつつ体を回していける。
「左足下がり」で素振りするのも○
ティーイングエリアの端の傾斜を利用して、実際に左足下がりのライで素振りをするのも効果的だ。フォローを低く出していこう。
【ポイント1】 お腹を下に向けて軸を意識する
上体が起き上がるのがあおり打ちの典型。軸の傾きを意識し、ダウンスウィングからインパクト後までお腹を下に向けておこう。
【ポイント2】 アドレスの形よりもハンドファーストに当てる
インパクトはアドレスよりもハンドファースト。手元が少し押し込まれることで最下点がボールの先に来てダウンブローで当たる。
【ポイント3】 太い軸を意識して太い筒の中で回る感覚
あまり体を左右に揺さぶらず、太い軸を意識して回転する。太い軸の幅の中でしっかりと左右の股関節に乗ることで体を回そう。
【ポイント4】 シャフトが左わきにくっついたフォロー
正しいハンドファーストは、クラブを短く持って素振りし、インパクト後もグリップ部分がわき腹についたままの状態であること。
【狙い方】基本はグリーンセンター狙い外すならピンから遠いサイド
グリーンに乗りさえすればOK、基本はグリーンセンター狙い。保険をかけるなら、外しても寄せやすいピンから遠いサイドに残るように狙おう。
ソールが滑れば
ダフっても大丈夫
甲斐プロは、ユーティリティのティショットにはもう1ポイントあると言う。それは、ソールをうまく使うことだ。
甲斐 ソールの広さはUTの武器。それを上手に使えば、多少ダフってもナイスショットの9割くらいの距離が出てくれます。だからあまりクリーンなインパクトにこだわらず、ボール前後の芝を削り取るくらいの感じでアバウトに打ち込んでいけるんです。
ポイントはシャフトの「逆しなり」を意識すること。インパクトではハンドファーストになるが、シャフトの逆しなりでロフトの立ちすぎが緩和され、ソールから接地できる。だからダフリ気味でも刃が刺さらずソールが滑るのだ。
甲斐 ユーティリティは1つの番手で担当する距離の幅が広くなりがちです。なのでボール位置で5㍎の距離をプラスマイナスできるようになると、無理に強振したりゆるめたりせずに済むので、余計なミスが減ります。ボール位置が変わると入射角が変わり、スピン量が変わります。その違いで距離が変わる感覚がわかれば、もうユーティリティ名人ですよ。
【ポイント1】 シャフトの“逆しなり”をイメージしよう
ダウンスウィングでしなったシャフトが逆しなりでインパクトする感覚。これによってロフトが立ちすぎずソールから接地できる。
【ポイント2】 フィニッシュまで止めずに振り切ろう
体の回転を途中で止めずにフィニッシュまで振り切ることで、ダフリの抵抗に負けずに振り抜け、飛距離の低下を抑えられる。
【ドリル】 片手素振りでソールを“トン”
ソールから接地させる感覚を覚えるには、左右それぞれの片手素振りが有効。クラブの重さを感じてソールでトンと地面を叩こう。
±5㍎はボール位置で
打ち分ける!
スウィングを変えずに距離の保険をかけられる
ボール位置を普段とボール半個ぶんズラすことで入射角が変わりスピン量が変わって飛距離も変わる。右に置くとスピン多めの球で吹き上がって止まり‐5㍎。左に置くとスピン少なめの高弾道でランも増え+5㍎。
プラス5㍎…ボール半個左寄りで少しだけティを高めに
【ポイント1】 右を向いて構えて横から払って打つ
ボール位置を少し左寄りにし、少しだけティアップは高め。ドローのイメージなので少し右を向いて構えよう。アッパーにはならない。ように払い打ちのイメージ。ヘッドはボールより手前に置くのがコツ。
【ポイント2】 あおり打ちはNG、右手首の角度をキープ
あおり打ちにならないよう、インパクトでは右手首の角度を維持してハンドファースト。フェースを返しすぎないように注意しよう。
マイナス5㍎…ボール半個右寄りでティアップせずに打つ
【ポイント1】 左を向いて構えて少し打ち込んでいく
ボール位置を少し右寄りにし、ティアップはしないか、してもごく低く。フェードのイメージなので少し左を向いて構える。ハンドファースト強めで、普段より打ち込む意識を強めに持ってもOK。
【ポイント2】 バックスウィングが浅くならないように注意
左を向くぶんバックスウィングが浅くなりがちなので、左肩を押し込んで体が十分回ったトップを作ろう。過度に打ち込むのはNG。
Text/Kosuke Suzuki、Photo/Hiroyuki Okazawa、Illust/Takeshi Shoiji
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