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この写真は、昨年の日本女子オープンでのひとコマ。普段はピッチ&ランと少し上げるアプローチで
グリーン周りを攻略していた渋野だが、この時はラフが深く、グリーンも固くて速いため、ロブショットを打つ場面が多々あった。今オフは、ワンランク上のステージを目指すため、青木コーチのもと、ロブショット練習に取り組んだという。その内容について青木コーチに聞いてみることにした。
画像: 青木翔。1983 年生まれ。渋野日向子を指導するプロコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

青木翔。1983 年生まれ。渋野日向子を指導するプロコーチ。2020年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞

【アドレス】
スタンスとボール位置が変わるだけ

GD シーズン前に、渋野プロと上げるアプローチ、いわゆるロブショットの練習をしてきたとお聞きしましたが。

青木 今まで、しぶこはほぼ“ピッチ&ラン”や”チップショット”だけで戦ってきました。でもある程度、基本ができてきたので上げるアプローチの習得に取り組んでいます。

画像1: 【アドレス】 スタンスとボール位置が変わるだけ

GD 具体的にどんな練習をしてきたのですか。

青木 まずはアドレスです。どんなショットやアプローチでも、僕は手元の位置を左足内もも前に必ずセットするように伝えています。それを踏まえ、フェースを開いたとき、どこにボールを置けば、狙ったところへ飛ばせるかを説明しました。ボール位置が真ん中だと、右に飛び出してしまう。だからボール位置は左足寄りに置きます。練習しながら自分に合うボール位置を探してください。

●ロブショット
ボール位置は左足側でハンドレートになる

画像2: 【アドレス】 スタンスとボール位置が変わるだけ

●ピッチ&ラン
シャフトを地面と垂直に構える

画像3: 【アドレス】 スタンスとボール位置が変わるだけ

●チップショット
右足つま先前に置きハンドファースト

画像4: 【アドレス】 スタンスとボール位置が変わるだけ

しぶログアドレスの2つのポイント

【ポイント①】
手元は必ず左内もも前

手元を左足内もも前に固定して、ボール位置が右足寄りならハンドファーストに、左足寄りならハンドレートになるのが自然な構え。ロブを打つ場合は、フェースを開くため左足寄りにボールがセットされるので、自然とハンドレートの構えになる。

画像: “アプローチはすべてハンドファースト”と考えている人は、いくらフェースを開いても、ロブは打てない。逆にザックリなどのミスを誘発する

“アプローチはすべてハンドファースト”と考えている人は、いくらフェースを開いても、ロブは打てない。逆にザックリなどのミスを誘発する

画像: 手首の角度が変わるだけ

手首の角度が変わるだけ

【ポイント②】
ハンドダウンにしてバックフェースを地面へ接地

手元の高さを変えずにフェースを開くと、ヒール部分が浮いてきます。そのまま打つとトップしたり右へ飛び出してしまうので、バックフェース全体がピタッと接地するイメージでハンドダウンに構える。

手元の位置が低いと⇒ソール全体が地面に付きヘッドが抜ける

画像: フェースが開くとハンドダウンに

フェースが開くとハンドダウンに

手元の位置が高いと⇒ヒールが浮いてダブリやトップになる

画像: 手元が高いとトップするよ

手元が高いとトップするよ

【振り方】
手首はできる限り使わない

GD では続けて振り方について教えてもらえますか。

青木 アドレスでボールを上げる体勢を整えたら、あとは手首の角度を変えないよう意識して、体を回転させて打ちましょう。要するに、振り方はピッチ&ランと同じですが、アドレスが違うからボールが上がるという原理です。手を返してヘッドを走らせるのはNGです。

GD 手首は、固定させるんですか。

青木 余程のことがない限り、手首は固定したままです。インパクトでアドレス時の形に戻せば必ず上がります。だから、手首はコネず体の回転でクラブを振りたいんです。

アドレスの手首の角度を変えずに振り抜く

昨シーズンからラフの対応としてフェースを開いて打つ練習を少しずつしていた渋野日向子。基本は、フェースを開きボール位置を変えるだけで、振り方そのものはピッチ&ランと同じだ。

画像: 【振り方】 手首はできる限り使わない
画像: 手首はひねらない

手首はひねらない

左足下がりでロブショットを打ってみる

ボールが上がりにくい左足下がりのライから、あえて上げる練習を渋野に取り組ませたという。

「極端なハンドレートに構え、インパクトで絶対にロフトが立たないように振る。極端な練習もボールが上がる原理を覚えるには最適です」(青木)

画像: 下からすくい上げようとすると必ずダフる

下からすくい上げようとすると必ずダフる

【距離感】
振り幅とフェースの
開き具合で距離感を作る

GD ロブショットの距離感を身に付けるのは、かなり難しそうなのですが。

青木 たしかに簡単ではありません。でも、基準を設定して練習すればロブでも距離感がつかめてきます。

GD どんな練習ですか。

画像: しぶこの約束。 打ち方は変えず同じキャリーを弾道で打ち分ける

しぶこの約束。 打ち方は変えず同じキャリーを弾道で打ち分ける

ロブショット
フェースを開いてボール位置は左足寄りに置いたときの弾道。フェースが開いているので、推進力が小さくなるため、当然、振り幅はこのなかでもっとも大きくなる。
ピッチ&ラン
ピッチ&ランのフェースの開き具合と振り幅の関係で作られる距離感のモノサシを作ることから始めると、ロブやチップショットの距離感が作りやすくなるという。
チップショット
低く打ち出すために、ロフトを立てて打つのでボール位置は右足寄り。ロフトが立って当たる分、出球が速く打ち出されるので振り幅が小さくてもキャリーが出せる。

青木 ロブもピッチ&ランもチップショットもすべてキャリー10㍎出すには、どれだけの振り幅があれば出せるか。これを徹底的に練習します。要は、フェースの開き具合と振り幅の関係を10㍎のキャリーを基準にして作っていくのです。このとき当然、振り方はすべて同じ。腹筋を使って体を回転させて打ちます。左ひじを抜いたり、コックを使ったり特別な振り方をすると感覚頼りになり、距離感のモノサシが作れません。振り方は同じにして、フェースの開きとボール位置、振り幅でキャリーを調整してください。

10㍎ロブショット

画像: 【距離感】 振り幅とフェースの 開き具合で距離感を作る

キャリー10㍎チップショット

画像: たとえばキャリー10ヤード飛ばすと決めて、打ち方はすべて同じにしたまま、フェースの開きと振り幅を変えながら練習。すると、フェースの開き具合と振り幅によって、弾道の高さが変わり、距離感が身に付く

たとえばキャリー10ヤード飛ばすと決めて、打ち方はすべて同じにしたまま、フェースの開きと振り幅を変えながら練習。すると、フェースの開き具合と振り幅によって、弾道の高さが変わり、距離感が身に付く

画像: 手先の感覚に頼ると距離感は作れない

手先の感覚に頼ると距離感は作れない

これができるからしぶこはロブでも寄せられる

ロブショットも腹筋を使って打つという青木コーチ。

「しぶこの片手打ち練習は、手が勝手に悪さしないための練習です。とくにロブは手先で操作したくなりますが、彼女が意外と早くロブを習得できたのは、この練習のおかげだと思います」(青木)

画像: 腹筋で打つにはやっぱり片手打ち練習

腹筋で打つにはやっぱり片手打ち練習

【ドリル】
フェースを開いて
打つ感覚をつかむ

GD 最後に練習法を教えてもらえますか。

青木 バンカーを使ってロブショットの感覚をつかんでみましょう。この練習はあくまでも、フェースを開いた状態でスウィングする感覚を養うもので、特別な打ち方の練習ではありません。全ショット、振り方は同じ。それがロブなら、アドレスでボールが上がる体勢を整えるだけ。あとは、腹筋を使ってフェース面を極力変えずに振る。これができれば、再現性が高いロブが必ず打てるようになります。

【しぶこロブドリル①】
フェースを開いてヘッドを砂に埋めて打つ

バンカーでフェースを目いっぱい開いて、フェース面が砂と平行になるまでヘッドを砂に潜らせて構える。あとは、ヘッドが埋まった跡に、ヒールからヘッドを入れてボールの下を打ち抜く。この感覚がロブショットだという青木コーチ。

画像: ヒールを砂に当ててください

ヒールを砂に当ててください

インパクトはヘッドを先行させて砂を叩くイメージ

画像1: 【ドリル】 フェースを開いて 打つ感覚をつかむ
画像2: 【ドリル】 フェースを開いて 打つ感覚をつかむ

【しぶこロブドリル②】
砂を落とさず振ってみる

フェース面に砂を乗せたまま、腹筋を使ってヘッドを左右に動かす。この時、砂が落ちるようであれば、手先を使ってヘッドを動かしている判断基準になる。

画像: フェース面が上を向いたまま動くから砂が落ちない

フェース面が上を向いたまま動くから砂が落ちない

画像: 腹筋を使って振っています!

腹筋を使って振っています!

PHOTO/ARAKISHIN、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa

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