「お前には負けるから何卒いってくれと思ったら気が楽です」今週の通勤GDは、高松志門プロと奥田靖己プロによる名師弟「一行レッスン」です。その第六十五話。

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

ゴルフ芸人 高松志門
1951年生まれ。橘田規に師事し水平打法から独自の理論を展開。多彩な技から‟ゴルフ芸人”の異名をとる。
志門流一番弟子 奥田靖己
1960年生まれ。絶妙な寄せ技を武器に93年日本オープンで尾崎将司を退け優勝するなどツアー6勝、シニア2勝。

前回のお話し

高松 昨日、スウィングの主役はクラブであって、人間はただの脇役やいう話をしたけど、ゴルフ全体でいうたらやっぱり最上位に旗があり、次に球、クラブ、人間というのが偉い順になるわね。

奥田 そら間違いないです。人間は一番の端役で、球を打つのは主役であるクラブの仕事。全部主役に任せて、自分はでしゃばったらあきません。それに旗が偉いからこそ、打つ球の絵だけを思ってゴルフせえという、うちの教えも生まれるわけやし。

高松 ただ球が二番目に偉いという順位については、最後に奥ちゃんがいうてたように、勘違いして捉えると一般のアマチアが悪い方向に行きやすい。だから「スウィングする上ではそない偉いと思うとあきませんよ」という話をしてくれたんよね。そこを読んでくれた人には分かっといてほしい。

奥田 球が二番目やいうのは、ゴルフというスポーツのスケールの大きさを作ってくれてるのが、あくまで球を空中で飛び回らせることですからね。

高松 そういうこっちゃ。だからたとえば高い山があって、それを神の山とせんかい。オレたちゴルファーはその麓に住んどる村人で、山への強い憧れを持ってる。ところがその山には“球”という烏しか行かれへんのよね。人間は空飛べんから。だからこそクラブという道具によって鳥の気分になり、そして神の山(=旗)を目指す。こういう図式で考えてくれたら分かりやすいかな。

画像: 奥田プロが低い球なら志門プロは高い球で。奥田プロが右からドローなら、志門プロは左からフェードで。二人のラウンドはまるで球で会話しているように見える

奥田プロが低い球なら志門プロは高い球で。奥田プロが右からドローなら、志門プロは左からフェードで。二人のラウンドはまるで球で会話しているように見える

奥田 まあ分かりやすいかは別にして、要は球が鳥のように飛んで、鳥にしか行けないような場所への我々の憧れを叶えてくれるのが、ゴルフの凄さいうことですわね。バーディとかアルバトロスとか鳥の名前が出てくるのも、そういう意味合いがあるからやろうし。

高松 そうそう。ゴルフの始まりや成り立ちにも関係してくる話やねんな。だからこそコースに来て、鳥の気分を味わう気持ちがないのはどうやねんといいたい。

奥田 たしかに今はゴルフ=スコアが当たり前で、本来のゴルフの醍醐味とか爽快感は二の次になりがち。鳥どころか、みな帳面とにらめっこばっかりしてます。

高松 スコアなんてほんまはどうでもいいんやけどな。それよりどんな鳥になり、どう飛んで目指す山に登るかやのに。

奥田 鷲みたいに大きく飛ぶのか、ハヤブサみたいにシュッと飛ぶのか。

高松 トンビがゆったり悠々と飛ぶようにとか、ツバメが低空飛行するとかもある。奥ちゃんとゴルフすると、「なるほど、そうやって飛ぶんか。それならオレはこっちの鳥で飛ぶで」という球でのやり取りができるから楽しいんよ。

奥田 先生は僕と違う“飛び方”しかしませんからね。でも、必ず同じなのは目指す山に飛ぶという喜びを最大限味わおうとすること。そういう球しか打たないいうことです。

高松 分かりづらいと思うからレベルを下げて例えると、池越えのグリーンでピンが手前のときに、池を避けた方向取りをしたり奥Hに打って、そこからなんとかパーを拾おう、間違っても池に入れんとこう、みたいなことはせんいうこと。

奥田 それは爽快感とか喜びにはつながらんのです。本来はそういうものを味わうために池とかバンカーはあるのに。手ごわい獲物ほど思い通りに飛べて手に入れたときの快感は大きいもんです。

高松 池から逃げたりすることを、うちでは「コースに謝る」いうけど、高い金出してコースに来て一日謝り続けて何が楽しいんやいうこと。コースに来るのは、鳥になって飛ぶためなんやから、思い切って羽ばたいてみいいうこっちゃ。

2015年月刊GDより

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