ちょうどひと月前、史上初の秋開催となったマスターズ。優勝したダスティン・ジョンソンが、フェアウェイから使っていたのは、なんと7番ウッドだった。「最新のショートウッドは、シニアや女性のクラブと思ったら大間違い!実は、攻撃的なゴルフにピッタリなんです」と言うのは、PGAツアー通の堀口宜篤プロ。さっそく性能と打ち方のチェック開始だ
ダスティン・ジョンソンは
7番ウッドを大活用
今年のマスターズ、ダスティン・ジョンソンは、バーディを計算しやすい8番パー5の2オン用クラブとして7Wを投入した。ここ7年間の成績を見ると、8番をアンダーで回った年はすべてベスト10でフィニッシュしている。オーガスタ攻略の陰に7Wがあったようだ.
ダスティン・ジョンソン8番パー5の成績
難攻不落のグリーンを
攻め落とすクラブ
GD マスターズで優勝したダスティン・ジョンソンが、7Wを入れていたそうですね。テレビ中継を解説していた中嶋常幸プロも驚いていました。
堀口 あの飛ばし屋のダスティンが! と言われていますが、実はアダム・スコットやトミー・フリートウッドも7Wを使い始めているんですよ。
GD 7Wをはじめ、ショートウッドと聞くと、90年代を思い出す人もいますよね。女性やグランドシニアが使いそうなイメージもありそうですが……。
堀口 あの頃のショートウッドは確かに風に弱かったんですが、いまのショートウッドはものすごく進化していますよ。風に負けない強くて高い弾道で、ピンの根元に上からズドン! と落とせるんです。非力なゴルファーの“守り”のクラブではなく、難攻不落のグリーンを攻め落とすための“攻め”のクラブに進化しているんですよ。
【実験1】打ち出し角とスピン量
高く、遠くへ、真っすぐ飛ばせる
弾道を計測すると、打ち出し角は14.8度と旧型7Wよりも高く、バックスピン量はなんと4UTよりも少ない3640回転を記録。ボール初速もいちばん速く、打ち出しから高く上がる超高弾道で飛んでいく。高く、遠くに、真っすぐ飛ばせるクラブだということがわかった。
高弾道だがスピン量が多い
打ち出し角は13度と最新7Wより少し低いが、バックスピン量は5189回転とかなり多い。途中からややホップするような弾道で、風の影響を受けやすいため、ユーティリティの進化とともにしばらく影を潜めていた。
低スピンで直進性が高い
打ち出し角は11.3度で、バックスピン量は3945回転。いわゆる“棒球”と呼ばれるユーティリティ特有の直進性の高い中弾道。7Wよりシャフトが短いにもかかわらず、ボール初速がそれほど変わらず飛距離性能は高い。
【実験2】飛距離と弾道
最新7Wは約8㍎飛距離アップ
新旧の7Wのキャリーを比較すると、約8㍎飛距離アップしていた。最高到達点も最新モデルのほうが高い。ボール速度が上がり、バックスピン量が約3割も減少していることから、旧型のホップするような弾道から、風の影響を受けにくい強い弾道に進化していることが容易に想像できる。
【実験3】グリーンの止まり具合
グリーンが軟らかければ球の高さで止まる
新旧7Wと4UTで、実際にグリーンに向かって打ち、着弾してから止まるまでの距離を計測した。3球ずつ計測した平均距離は記載のとおりで、通常のグリーンのコンパクションなら、ほぼ2ピン以内に止まることがわかった。
【打ち方のコツ】
肩をちょい閉じの一工夫
GD 7Wが劇的に進化しているのはわかりましたが、そもそもフェアウェイウッドが苦手な人って、けっこういますよね。
堀口 ゴルファーは、アイアン好きとウッド好きに分かれますからね。上からヘッドを入れるスライス系の人はウッドに苦手意識を持ってしまいがちです。
GD そういう人が7Wを使いこなす方法はありますか?
堀口 ヘッドを上から入れる傾向がある人は、アドレスのとき、肩のラインだけ少し右に向けておくといいですよ。打ち方のコツショートウッドの打ち方& 使い方インサイドから緩やかに下ろせます
GD 肩だけ右向き?
堀口 そうです。そのアドレスから、胸が向いている方向に振れば、自然とヘッドがインサイドから緩やかな軌道で下りてきやすくなります。これで、7Wを使えるようになります。フェアウェイウッドが好きになる魔法の構え方ですよ。
ポイント①
肩のラインだけクローズにする
「アドレスのとき、スタンス、ひざ、腰の向きはスクエアにしたまま、肩のラインだけクローズにして構えます。胸を少しだけ右に向ける感覚です。これで、フェアウェイウッドが苦手なスライス軌道の人もやさしく7Wが打てるようになります」(堀口)
ポイント②
ヘッド軌道が自然と緩やかになる
「スタンスの向きではなく、閉じた胸の向きのとおりにスウィングすると、いつもよりバックスウィングが深くなり、自然とインサイドから緩やかな軌道でクラブを下ろしやすくなります」
ポイント③
体の捻転差をキープして振る
「アドレスで胸を閉じておくと、上半身と下半身の捻転差が生まれます。その捻転差を保ったままスウィングするイメージです。クラブがインサイドから緩やかに下ろせるだけでなく、下半身のリードで振る感覚もつかめるはずです」
ポイント④
フォローでヘッドを立てる
「もうひとつ大切なのは、フォローサイドのヘッドの通り道に向かってしっかり振り抜くことです。右腕が地面と平行のとき、フェースがターンしてヘッドが立てばOKです」
堀口プロの7W連続写真
【つま先上がり&下がり】
前傾をキープし、上体をクルッ!
GD フェアウェイは平らとは限りませんよね。冬はノリ面に飛んだボールが落ちてくる傾向がありますが、それでもつま先上がりやつま先下がりはよくあります。そういう傾斜したライから打つときの注意点は?
堀口 まず、傾斜から打つときは、プチトラブルと考えて、少し短く握ってください。これだけでボールの近くに立てるし、ミート率も確実に上がります。
GD なるほど。
堀口 つま先上がりもつま先下がりも、重心を下げて、下半身の動きを抑えて、上体のターンでスウィングします。
GD コンパクトに振れそう。
堀口 つま先上がりは、ダフりやすく、フックしやすいので、目標を少し右に設定して、目とボールの距離を変えないように振ります。つま先下がりは、トップしやすく、スライスしやすいので、目標を少し左にとって、伸び上がりに注意します。
【つま先上がり】は短く握って少し右を目標に
ポイント①
目とボールの距離を保つ
「体の前傾をキープするために、目とボールの距離を保ったまま振ります。傾斜が急になるほど、重力に負けてボールの下を振ってダフりやすくなるので、そのことも忘れずに」堀口)
ポイント②
上体のターンを主体にして振る
「体の前傾をキープする意識を持ったら、下半身はあまり使わず、上体をその場でターンさせるイメージが大切です。フックしやすいので、グリーンの右端を狙います」
【つま先下がり】も短く握って重心下げて目標は少し左
ポイント①
腰とひざを落とし重心を下げる
「アドレスするとき、まず普通に腰高に構えて、そこから腰とひざをグッと落とし、ボールにクラブが届くように重心を下げます。スウィング中はその下げた重心をキープします」
ポイント②
両ひざの高さをキープする
「ボールは足元よりも下にあるので、インパクトで少しでも体が伸び上がるとトップしてしまいます。そのため、アドレスのときの両ひざの高さをインパクトまでキープします」
【セッティング】
おすすめは5W・7W・4UT
堀口 GDサンタからコース攻略法のプレゼントがあります。
GD 何でしょうか?
堀口 遠くのグリーンを攻略するセッティングの提案です。最近の3Wは、とても飛ぶようになった反面、グリーン上で止まりません。グリーンを攻めるには、3Wの代わりに7Wを入れたほうが、210㍎以下ならすべての距離のグリーンを狙っていける攻撃的な布陣になるんですよ。これで、フェアウェイウッドとユーティリティの間にできていた飛距離差も埋めることができますしね。
GD まさに一石二鳥ですね。
7Wを入れると“攻め”の階段が完成
「一般的な3W、5W、4UTの組み合わせだと、5Wと4UTの間にどうしても飛距離差が生まれていました。これを5W、7W、4UTにすることで、フェアウェイウッドとユーティリティの飛距離差を埋められます」
週刊GD12月29日号より
PHOTO/Yasuo Masuda
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