いい職場がいいコースコンディションのもと
──キーパーに就任して12年目ということですが、キーパーにいちばん必要な素養とはどのようなことだと感じていますか?
スタッフに「ここで働いてよかった」と感じてもらえるような職場をつくるマネジメント力です。
出退勤や休暇の取得は可能な限り希望に添うことはもちろんですが、管理棟内の清掃と整理整頓には特に注意しています。コース内作業で疲れて戻ってきたのに、管理棟内が散らかっていれば気が休まらないし、第一、管理棟をきれいにできなければ、それよりも広大なコースをきれいにすることはできないと思います。
──そう思ったきっかけは?
県内のキーパーや取引企業のサポートなどいろいろあるのですが、クラブハウスの仕事をするようになったことが大きいです。
──それは、どういう経緯から?
オーナー(石田正彦氏)の「いろいろな角度から自分の仕事を見つめてほしい」という考えで、繁忙日を中心に1〜2人、クロークやマスター室業務などを手伝っています。
最初は「なぜ、そんなことをしないといけないのか!」と思いましたが、仕事の環境が変われば考え方も変わるものですね。接客を通して、常に表情や身だしなみを意識するようになりました。
スタッフたちも同様のことを感じてくれているようで、管理棟内の雰囲気はかなり変わりました。
──来場者からコースへの要望も直接聞けますね。どのような要望が多いですか?
グリーンスピードへのご要望が多いです。9〜10フィートを維持しているのですが、「もっと速くしてほしい」と。
グリーンにはアンジュレーションが結構あり、カップ位置やプレー進行を考えると通常営業時は難しいですが、お客様の生の声を聞くことはモチベーションアップに不可欠と感じています。
負のスパイラルから正のスパイラルへ
──職場の雰囲気が変わったことで、コース管理作業にどのような効果が出ましたか。
「フェアウェイ刈りをしてみたい」とか、「そろそろ更新作業しなくていいんですか」など、疑問や希望をぶつけてくるようになりました。
──そうしたスタッフの自発性は、コースコンディションアップにも繋がっている?
はい。ただし、継続的に刺激を与えていかないと、スタッフたちもマンネリ化してしまいます。だから、私自身もセミナーに出かけて勉強したり、学んだことをコースで試してみたり、毎日必死です。
──試していることとは?
2年前から、グリーンの葉面施肥に取組んでいます。同じペンクロスでもニューベント並みの葉幅や芽数を維持しているコースがあって、私もそうしたグリーンを作りたいと思って勉強する中で興味を持ちました。
──実際に試してみて、どのような感触を得ていますか?
吸収効率がよいため芝の状態を見ながら施肥量をコントロールでき、芽数や根の張り具合が段違いに上がりました。おまけに作業効率も上がり、サブグリーンにもきちんと手をかけられるようになりました。
以前は年間の8割はメイングリーンを使用していましたが、現在は2週間おきに使い分けています。こうした変化をスタッフたちに感じてもらうことで、コース管理に対する興味を高めていければと思っています。
──施肥管理以外では、どのようにニューベント並みに仕上げていくのですか。
基本は水管理と刈込、薄目砂と考えており、散水はほぼ手散水のみで、トップドレッシングは月に3回実施しています。
──手散水だと、手間がかなりかかりますね。
東日本大震災の影響で散水用水が足りないこともありますが、スプリンクラーではどうしても過不足が出てきます。過湿の場所では病気の心配が出てくるし、不足すれば乾燥害が出てきます。それなら、最初から「必要な場所に必要な量を与える」ようにした方がよいと思いました。
──トップドレッシングについては?
2グリーンを使える状態になったことで、より効率的に作業ができるようになりました。
トップドレッシング/グリーン上に薄く砂を散布すること。こうすることでグリーン面が均一になり、転がりが良くなる
──具体的には?
以前は焼砂を使用していたのですが、近年は砂代も高騰しているし、刈込で砂を回収したり、モアの刃を傷つけてしまうなど、作業によって新たなコストが生まれてしまいました。
そこで、生砂も取入れることにしました。砂の入りは悪いですが、砂が地際に落ちるまで休ませられます。もちろん、できる限り降雨の前に散布しますが。
作業にあたって目土散布機を購入しましたが、砂代や整備コストなどを考えれば3年程度でペイできると考えています。
メンバーの理解に感謝!
──現在の課題は?
バンカーの排水改善とフェアウェイのコンディションアップです。
いくつかのバンカーでは排水改善とともに雨裂防止用のファイバーマットを試したり、機械の出入口が限られているところでは造形の見直しも検討しています。
──フェアウェイについては?
冬季に暗渠を取り直したり、2ホールで弾丸暗渠を施工したほか、今年から刈込方法をゼブラ(18番はクロス)カットから左右で順目と逆目になる〝行って来い〟方式に変更します。
──それはどうしてですか?
芝をアップライトにして、芽数を増やしたいからです。ゼブラは、見た目はよいですが時間もかかるし、いつも同じ方向に刈込んでいたため芝が寝てしまいやすかったのです。
その点、〝行って来い〟なら右回りで刈ったら次は左回りといった具合に、刈込方向が変更しやすい。近隣ゴルフ場ではあまりされていない刈込方法なので、特徴づけにもなると考えています。
──そのほかの課題は?
開場して25年が経過したこともありますが、今後を見据えて、設備投資に会社全体で取組んでいます。クラブハウス内も改修しており、お客様の動線上だけでなく、事務室のフリーアクセス化も行いました。
オーナーはもちろん、メンバーの理解があって進められることなので、本当に感謝しています。
仙台クラシックゴルフ倶楽部
所在地 宮城県富谷市今泉三ツ沢14-3
開場 平成4年6月8日
コース規模 18H 7108Y P72
コース設計 ㈱日開
コースレート 74.2
管理面積 約45万㎡
土壌 山砂
水源 井戸水
標高 32〜57m
主要樹木 アカマツ、クロマツ、サクラなど
使用芝草
●グリーン(ベント2)/ペンクロス
●ティグラウンド/コウライ
●フェアウェイ/コウライ
●ラフ/ノシバ
ゴルフ場セミナー2018年6月号より