昭和35年、ゴルフ場建設ブームの真っただ中。しかし、関西圏では、兵庫県と大阪府が中心で、奈良県には、飛鳥CC、奈良国際GCの2コースだけだった。しかし、気運は先を急ぐ。

ゴルフコースことはじめ
文芸評論家を経て、ゴルフジャーナリストとしても活躍した田野辺薫氏。ゴルフコースの目利きとして全国のコースを取材し、週刊ゴルフダイジェストで「ゴルフの歴史を歩こう」を連載(2005~2013年)。それを一冊にまとめた「美しい日本のゴルフコース」から多くの人に名コース誕生の歴史を知ってもらおうと再編集公開しています。

大阪から近鉄で50分、奈良はベッドタウン化が一足先に進むなか、昭和35年、大日本製糖の系列、大和開発興業(資本金5000万円)が、奈良市に隣接する天理市福住町の山林50万坪に、春日台カントリークラブの建設を計画した。

天理市は奈良県の北部。市域の中央を高低差300㍍の断層が走り、西部の盆地を表部または国中と呼び、東部の大和高原を奥部または山中と呼んでいた。

盆地には天理教関連建物が多く、日本で唯一、教派名をもつ宗教都市・天理市が生まれた(昭和29
年)。歴史は古く、盆地中心街には、石上神宮、大和神社など旧石器時代以来の古代史蹟も残っている。

設計は佐藤昌

ゴルフ場用地となった山辺郡福住村の春日台は標高が500㍍、縄文時代早期の生活が営まれた場所といわれ、福住中定城などの遺跡が残る地域。東に鈴鹿、西に生駒と金剛山系、南方遥か大峰連峰も望まれる丘陵地で、パンフレットには「立木あり、清流あり、冬温夏清」の表現が踊っていた。

松、桧、樫や雑木の混淆林を切り拓くこと一年、昭和36年11月に18ホール(東・中)6820㍎・パー72を正式開場した。

画像: 昭和51年撮影の西3番ホール。松、バンカーなどのハザードが生かされた雄大な印象。現在はベントグリーンに改修されている

昭和51年撮影の西3番ホール。松、バンカーなどのハザードが生かされた雄大な印象。現在はベントグリーンに改修されている

コースを設計した佐藤昌(東京農業大学教授)は、筑波CC、岡山CC桃郷Cなど24コースの実績がある。東コースはうねりゆるやか、中コースはフェアウェイは広く距離は抑えめ。挑戦するよりも楽しめるコースの印象だ。

画像: 東3番ホール/493㍎/パー5 ティショットは広く爽快、グリーン手前に池

東3番ホール/493㍎/パー5 ティショットは広く爽快、グリーン手前に池

画像: 東4番ホール/158㍎/パー3 砲台グリーンで距離を合わせづらい

東4番ホール/158㍎/パー3 砲台グリーンで距離を合わせづらい

画像: 東9番ホール/368㍎/パー4 左右が高く谷の中を進むようなホール

東9番ホール/368㍎/パー4 左右が高く谷の中を進むようなホール

画像: 中2番ホール/336㍎/パー4 フェアウェイが右から左へ傾斜

中2番ホール/336㍎/パー4 フェアウェイが右から左へ傾斜

画像: 中9番ホール/502㍎/パー5 ストレートに打ち下ろすホール、3打目はフェアウェイの2本の木をいかに避けてピンを狙うか

中9番ホール/502㍎/パー5 ストレートに打ち下ろすホール、3打目はフェアウェイの2本の木をいかに避けてピンを狙うか

昭和43年6月、ロート製薬副社長・山田安邦が、個人で大和開発興業㈱の全株式を取得、経営を継承した。昭和51年、西コース9ホール・3340㍎・パー36(佐藤昌設計)を開場、27ホールとなる。

西コースは、池を絡めたホールが多く心理的戦略性が高い。

画像: 西6番ホール/384㍎/パー4 左ドッグレッグ

西6番ホール/384㍎/パー4 左ドッグレッグ

画像: 西8番ホール/178㍎/パー3 池が美しいホール

西8番ホール/178㍎/パー3 池が美しいホール

春日台カントリークラブ
奈良県天理市福住町7453
☎0743・69・2133
開場日:昭和36年11月3日
コース:9H/3439Y/P36(東)
    9H/3293Y/P36(中)
    9H/3248Y/P36(西)
設計:佐藤 昌
公式ホームページ

画像: クラブハウス

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