中嶋常幸VS湯原信光。勝負は下駄を履くまで分からないという。しかし、この試合に限っては勝負は最終日のスタート前から決まっていたように思えてならない。中嶋が日本プロ優勝、全米プロ10位、前週のKBCオーガスタでも2位と絶好調。かたや湯原は8月のアコムダブルスを除けば、個人戦では昨年5月のフジサンケイ以来の優勝争い。だから、というわけではない・・・。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

「自分に一番いいことが起こりそうな予感が…」(中嶋)

画像: 宍戸国際(宍戸ヒルズ)、スタート前のドライビングレンジ。手前が中嶋。奥が湯原

宍戸国際(宍戸ヒルズ)、スタート前のドライビングレンジ。手前が中嶋。奥が湯原

勝負の明暗を分けたもの。それは勝負に対する執念の違いとでもいえようか。3日目を終えてトップの中嶋とは2打差の2位。久々の優勝争いとはいえ、湯原の発言はあまりも慎重なものであった。

「僕の1日の目標スコアは1アンダー、できれば4日間で5アンダーくらいで回れればいいと思っています。これだけ難しいコースセッティングで65とか66とかのスコアを出すのはよほど技術がすぐれ、狙ったところは必ずとるという力がなければ無理、ツキが味方すれば、だせるかもしれないけど…」

3日目の上がり3ホールを連続バーディでしとめたにしては迫力が感じられない。優勝を争う立場にありながら、当面の敵、中嶋に対する敵愾心もうかがえない。

画像: スタート前に会話を交わす中嶋と湯原

スタート前に会話を交わす中嶋と湯原

画像: 最終日、中嶋のティショット

最終日、中嶋のティショット

画像: 湯原のティショット

湯原のティショット

「このコースでは相手を意識するより、マイペースでいくしかないでしょう。自分が目標どおりのスコアであがって、他の人がそれ以上のスコアなら、相手が優秀だったということ。仕方ないと諦めるしかない。とにかく1ショット1ショット、1ホール1ホールを大事に積み重ねていくだけ」(湯原)

画像: バンカーショットを放つ湯原

バンカーショットを放つ湯原

人を相手にするんじゃない。コースを、ホールのパーを相手にするんだ、という球聖 ボビー・ジョーンズの「オールドマン・パー」の発想である。これは人との勝負だけを戒めているのだが、湯原にはコース相手以前に、気迫というか、ファイティングスピリットが不足しているように思えるのだ。

舞台となった宍戸国際CC(現・宍戸ヒルズCC)の紹介記事はコチラ↓

画像: ラフからアプローチする中嶋

ラフからアプローチする中嶋

中嶋は違う。コースではない、人を相手にしたという。優勝への目標スコアもたてたくないとう。

「最終日は金井清一さんと湯原くんが優勝争いにからんでくるのは間違いない。目標スコアなんてたてたって仕方ない。彼らをいかにかわして優勝をもぎとるかですよ」

画像: 最終日最終組の3人。左から中嶋、金井清一、湯原

最終日最終組の3人。左から中嶋、金井清一、湯原

目下、精神的にも安定し、スウィングも絶好調に近いという中嶋、「計算をたてれば5~6アンダーでるコース。でもその計算どおりにいかないところがゴルフの面白さでしょう」とスコアそのものより、勝負のかけひきが楽しくてたまらないといった様子。

オールドマン・パーは承知している。さらに上をいく相手の動向をみて勝負を楽しんでいるわけだ。
最終日、前半はマイペースの湯原につられたようにジリジリした展開。耐えかねたように中嶋は仕掛けにでた。

画像: 仕掛けに出た中嶋

仕掛けに出た中嶋

「6番まではあまりスコアも動かず自分自身の調子と全体のムードをみているという感じだった。でも7番ロングのティショットを打ち終わって、3人ともいいポジション、何かが起こりそうな雰囲気だったんだよね。それも自分が一番いいことを起こせそうな予感があった。残り200メートル(当時はメートル表示。218ヤード)、スプーンで2オン狙いにいったんです」

ピン右3.5メートルに2オン。イーグル。湯原はパーに終わり一気に5ストロークの開きとなった。

画像: 我が道を行く湯原

我が道を行く湯原

長いスランプからようやく脱出のきざしをみせてきた湯原と、パーフェクトに近い状態の中嶋。勢いの差がそのままスコアの差になって表れたかたちだが、その違いは技術以前の何かが大きく影響していたのではないだろうか。

画像1: 「自分に一番いいことが起こりそうな予感が…」(中嶋)

【初日】
今季不振を極めていた湯原信光が川田時志春、中川泰一とともに2アンダートップ。湯原はアコムダブルスでは初日にトーナメントリーダーになっているが、個人戦では昨年5月以来のこと。

【2日目】
川田がこの日もスコアを伸ばし、66のベストスコアで急浮上した河野高明とともにトップに並ぶ。湯原は1打差の3位。関東オープン初制覇を狙う中嶋常幸が5位。

【3日目】
中嶋がノーボギー6バーディのベストゴルフで一気にトップ。湯原は中盤崩れかけたが、最終3ホール連続バーディを奪い中嶋とは2打差の2位。ベテラン金井清一がしぶとく4打差の3位につける。

【最終日】
1番で中嶋パー、湯原、金井がバーディを奪い、「もしかしたら…」と思わせたたが、以降湯原はズルズル後退。金井のしぶとさも届かず中嶋が独走優勝。中嶋は当大会初優勝。ベストアマは阪田哲男が5年ぶり5回目。

画像2: 「自分に一番いいことが起こりそうな予感が…」(中嶋)

1984年関東オープン最終結果
宍戸国際CC/6110メートル/パー71
1位 -8 中嶋常幸(美津濃)
2位 -4 金井清一(ダイワ精工)
3位 -1 川田時志春(フリー)
4位  0  海老原清治(翠華楼)
5位 +1 @阪田哲男(袖ヶ浦)
6位 +2 謝敏男(鳳凰)
7位 +3 鷹巣南雄(鹿野山)
     湯原信光(エスビー食品) 
     河野高明(矢板)
10位+4  新井規矩雄(アデランス)

宍戸ヒルズカントリークラブ
茨城県笠間市南小泉1340
TEL0296-77-2141
コースタイプ/林間コース
グリーン/西コース・ベントの1グリーン  
     東コース・ベントの2グリーン
会員権/プレー権で譲渡可
西コース/7425ヤード/パー72
コースレート76.0/スロープレート139
東コース/6842ヤード/パー72
コースレート73.2/スロープレート135
設計/発知朗
開場/1974年
公式ホームページはこちら

宍戸国際CCは2000年3月会社更生法手続き申し立て。2003年1月終結決定。経営権は森ビルグループに移る。名称は「宍戸ヒルズ」となり、2003年から日本ゴルフツアー選手権の会場となっている。

現在の宍戸ヒルズカントリークラブ
男子国内メジャー「日本ゴルフツアー選手権」の開催コース。先日米ツアー初優勝を挙げた畑岡奈紗もこのコースで技術を身につけていった。挑戦意欲を掻き立てる戦略的なホールが連発。シニアツアーにも力を入れている。

画像: 手前が西コース5番のパー3、奥が西コース3番のパー4

手前が西コース5番のパー3、奥が西コース3番のパー4

画像: JGTOツアー選手権の風景

JGTOツアー選手権の風景

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画像: golfdigest-play.jp
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