青木功のゴルフは「居直りのゴルフ」である。「シャンメェ、ない頭絞ってやってんだぜ。やるだけやってダメなら、サッサと帰るさ」という居直りスタイルである。とはいうものの、青木功も今年で32歳。「もう俺もそう若くはない」という。というのは、昨年、茨城でやった関東オープンで、2位の河野高明に12打差をつけるブッちぎり優勝。続く関東プロも杉本英世に6打差をつけて勝った。関東モノを連勝して、もしやグランドスラムか?とまで思わせた。だが、今年の青木はちょっと違う。4月の中日クラウンズで72ホール目に超ロングパットを決めて杉原輝雄に逆転勝ちして以来、青木の勝ち方に変化が生じてきた。居直りゴルフが姿を消してしまったのである。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

俺も32歳、もう若くないな。年相応に頭もよくならなきゃ

画像: 最終日、最終組は新井規矩雄(中)、林富士夫(左)と青木功

最終日、最終組は新井規矩雄(中)、林富士夫(左)と青木功

青木は連戦につぐ連戦で疲れている。自分では若いつもりでやっていても体がいうことをきかない。だから、初日72、2日目も72とアンダーパーが出ないスコアが並んだ。5位である。が、3日目の16番(530ヤード・パー5)、初日の1番から勘定すると52ホール目に、それまで首位にいた森憲二が崩れたせいもあって、待望の首位に立った。

追うのは、久方ぶりに優勝戦線に顔をだした新井規矩雄と、ホームコースの小林富士夫である。差は1打。

スタート前、「1打差なんてないのと同じだよ」といっていた青木の言葉が、早くも1番ホールで実証された。

画像: スタート前にストレッチする青木

スタート前にストレッチする青木

画像: 青木のティショット

青木のティショット

最終日は梅雨どきの天気そのもの。どんより曇った空から、時おり大粒の雨が落ちる。青木の2打は大きくフックしてグリーン左の窪地に落ちた。1メートルに寄せたものの、新井規矩雄が12メートルもの長いやつを一発で沈めたのを見てしまっては入らない。

バーディ、ボギーで首位の座が入れ替わった。強めにパットする新井の迫力を見て、「青木の対抗馬はこれかな?」と誰もが思った。

しかし、伏兵は意外にも同じ組の第三の男、小林富士夫だった。

青木が6番(196ヤード・パー3)で10メートルもの大フックラインを放り込み、これでエンジンがかかったのか、そこから数えて4連続バーディを獲って快進撃をすると、小林もピタリとくっついてきた。7番でバーディを獲ったあとの、左へ直角に曲がる8番ロングホールで2オン1パットのイーグル。一気に5アンダーとして、青木との1打差を守った。

画像: ギャラリーが取り囲む中、アプローチを放つ青木

ギャラリーが取り囲む中、アプローチを放つ青木

アウトを終って青木が7アンダー、小林が5アンダー、新井が4アンダー。

10番、青木に5連続バーディのチャンスがきた。ちょいスライスの3メートル、青木が打つ前に小林がおどけてパットラインにバッテンを書く真似をした。

青木はこれを外した。小林を見て、「お前がアンナことするからだぞ」というものの、青木のパットはミスパットだった。

「去年のオレなら入れたよ。ダントツ、ブッちぎりムードに乗ることだけどよ。入れたい気が先に立って打つのを忘れた」と試合後に白状した。

小林が14番でバーディを獲り、差はまた1打。しかし、青木の強さは16番で発揮された。試合前から「すべては16番に行ってからさ」と言っていたとおり、下りラインの7メートルを、ピッタリ打ててバーディ。

画像1: 俺も32歳、もう若くないな。年相応に頭もよくならなきゃ

「あのパットは本日最高。距離も方向も完璧だったもんな。あれで勝てると思ったよ。あとは体がいうことをきかないんだ。18番なんか足引きずっていたよ」

18番で、左の深いラフへ叩きこんだのも足が動かず、引っかけた。

だが、慌てず、騒がず、9番アイアンでグリーン左のエッジまで運んだあたりは、さすが青木である。

2打差の小林がピン奥10メートルのフックラインを沈め、飛びあがって喜ぶシーンがそのあとあったのだから、青木にしてみれば最後まで息の抜けない試合となった。

画像: 10メートルのパットを沈め喜ぶ小林

10メートルのパットを沈め喜ぶ小林

「こういう1打差の試合は本当に苦しいよ。小林が金魚のフンみたいにくっついてくるから、攻めたいけど攻めていけない。耐えて、耐えての連続だもんな。もう去年みたいにブッちぎって勝つなんてできないよ。コースも難しいし、皆の腕が上がっているからな。もうオレも若くないんだから、我慢して勝ったっていうわけだ。オレも人の子、年相応に頭もよくならなきゃな」と、最後にいつもの口ぐせが出た。

画像: 青木が、我慢を重ねる大人のゴルフで勝利を挙げた

青木が、我慢を重ねる大人のゴルフで勝利を挙げた

週刊ゴルフダイジェスト1975年7月30日

1975年関東オープン最終結果
姉ケ崎CC/6846ヤード/パー72
1位  -8  青木功(日本電建)
2位  -7  小林富士夫(姉ケ崎)
3位  -5  杉本英世(富士ロイヤル)
4位  -4  新井規矩雄(大都)
5位  -2  草柳良夫(フリー)
6位  -1  森憲二(川崎国際)
7位  +1  謝敏男(紫塚)
8位  +2  陳健忠(トヨストーブ)
       草壁政治(紫)
10位  +3  河野高明(星ヶ浦興産)
       安田春雄(フリー)

画像2: 俺も32歳、もう若くないな。年相応に頭もよくならなきゃ

姉ケ崎カントリー倶楽部
千葉県市原市立野165
TEL 0436‐66‐1116
コースタイプ/林間コース
グリーン/ベントの2グリーン
36ホール/
(東)6831ヤード/パー72
コースレート72.4/スロープレート126
(西)6828ヤード/パー72
コースレート72.5/スロープレート132
会員権/預託金制で譲渡可
設計/谷口忠、管浦一、金子安三(監修)林由郎
開場/1960年
最寄りIC/館山道・姉ケ崎袖ヶ浦ICから6キロ
最寄り駅/JR総武線、内房線・姉ケ崎駅
公式ホームページはこちら

現在の姉ヶ崎カントリー倶楽部

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