エジンバラから車で約1時間、スコットランド東海岸に位置するセント・アンドリュースは、「The Home of Golf」と言われ、世界中のゴルファーの憧れの地でもあります。毎年ローテーションで開催される全英オープンの舞台であり、今年8月には全英女子オープンも開催。一般ゴルファーにもプレーのチャンスがあり、2025年の予約がまもなく開始されます!

セント・アンドリュースには、ゴルファーが知るべきことがたくさんある。その謎を解き明かすべく、ロンドンから名探偵シャーロック・ホームズが登場。 深く知れば知るほどゴルフが楽しくなる「ゴルフの聖地」の謎を、紹介しよう!

画像: 18番ホールのスウィルケンブリッジに忍び寄る探偵ホームズの影

18番ホールのスウィルケンブリッジに忍び寄る探偵ホームズの影

Q.この街ではトム・モリス親子が有名だが、彼らにゴルフを教えたのは誰?

ゴルフコースに入る前に、まずはセント・アンドリュースの街を見てまわったホームズ。海に面して東西方向に街が伸び、大通りを東へ向かうと突き当たるのが歴史的な建造物。中でもひときわ目を引くのが大聖堂だ。

画像: 宗教改革によって壊されたセントアンドリュース大聖堂だ。トム・モリス親子の墓地があり、世界中から多くのゴルファーが訪れる

宗教改革によって壊されたセントアンドリュース大聖堂だ。トム・モリス親子の墓地があり、世界中から多くのゴルファーが訪れる

画像: 大聖堂の隣にそびえるセントルールタワーに登れば街を一望できる。海に突き出ているのがオールドコースのある場所だ

大聖堂の隣にそびえるセントルールタワーに登れば街を一望できる。海に突き出ているのがオールドコースのある場所だ

そもそも、この街にはゴルフとともに宗教の歴史がある。キリストの12使徒の一人、聖アンドレの遺骨を乗せた船が難破し、西暦370年にこの地にたどり着いたという伝説がある。

その後6世紀になると街の骨格ができあがり、スコットランドの宗教の中心地として発展を遂げた。

1161年に着工された大聖堂は数百年を経て完成し、この街のシンボルとなる。それは宗教改革によって破壊されるまで、多くの巡礼者を受け入れ、ここに暮らす人々を温かく見守ってきた。破壊された大聖堂の石を使って家を建てた者もいるという。いまもこの街のどこかにそんな家屋がある。

この大聖堂の墓地には街の多くの人が眠っている。"ホーム・オブ・ゴルフ"を作り上げた偉人たちの墓標もある。

ゴルフ史上ただ一人の不敗の男と言われた、「アラン・ロバートソン」もそのひとり。第1回全英オープンのちょうど1年前にこの世を去った。フェザーボール製作の際に細かな羽根を吸い込んだ原因とも言われる。

画像: アラン・ロバートソン

アラン・ロバートソン

アラン・ロバートソン
祖父、父とつづくボール職人の家に生まれ、品質のよいフェザーボールを作り出した。オールドコースの改修を手掛け、現在に至るコース設計の基礎を築いたことでも知られる。オールドコースで初めて80を切った(40・39)ゴルファーであり、試合の賞金で生活したプロゴルファーの先駆け。死後1世紀以上を経て2001年にゴルフ殿堂入り

彼に師事したトム・モリス親子。父は師匠と組んでフォアサムマッチに出場していた。息子はなんと17歳で全英オープンを制するほどの早熟の天才でだった。街の誰しもが彼らを尊敬し、敬愛する。

画像: トム・モリス親子

トム・モリス親子

トム・モリス親子
アラン・ロバートソンに師事し、ゴルフを覚えた父親オールド・トム・モリス。息子のトム・モリスJr.は最年少で全英オープンに勝った

ここは遺跡の中にもゴルフが眠る、実に興味深い街なのだ。

画像: (左)アラン・ロバートソンの墓 (右)トム・モリス親子の墓。左側のレリーフは息子のもの

(左)アラン・ロバートソンの墓 (右)トム・モリス親子の墓。左側のレリーフは息子のもの

Q. なぜ、セント・アンドリュースの17番が世界最難なのか?

世界中のゴルファーが回ってみたいと口を揃える「オールドコース」。そのレイアウトは時に理不尽と思えるものもあるが、それがゴルフを面白くするものだと先人たちは気づいていた。

自分のショットを遮るものがあるからこそ、そこをどうやって攻略するかを考えることができる。そして何より、それを考えることが楽しい。

答えは、17番パー4「ロードホール」は、すべてのショットが「大一番」だから。

簡単にショートカットできないからこそ、17番のティーショットに価値がある。

   

【17番ホール 第1打】看板の「O」の上を狙って打つティショット

右ドッグレッグの17番は、ホテルの黒い小屋を超えていくショットから始まる。壁に書かれた「OLD COURSE HOTEL」文字のうち、COURSEの「O」の上を狙ってドローボールを打つのが理想だ。

画像: オールコース17番ホールのティーイングエリア

オールコース17番ホールのティーイングエリア

画像: 壁にはボールの当たった跡が無数に付いている

壁にはボールの当たった跡が無数に付いている

画像: 小屋の左ギリギリにストレートを打つ方法もあり「タイガールート」と呼ばれる

小屋の左ギリギリにストレートを打つ方法もあり「タイガールート」と呼ばれる

    

【17番ホール 第2打】入れたら地獄の「ロードバンカー」

ティーショットが成功しても気は抜けない。グリーン手前のポッドバンカーがクセモノだ。かつて中嶋常幸がこのバンカーにつかまり「9」を叩いて以来、「トミーズバンカー」とも呼ばれる。

砂面に傾斜がつき、アゴは直角、ボールの位置次第では、グリーン方向には打てない。ヨコに出すかしか方法はないのだ。

画像: ピンに向かって打つことは至難の業

ピンに向かって打つことは至難の業

トミーズバンカー
1978年の全英オープン3日目。17番ホールまでトップタイだった中嶋常幸プロが脱出に4打を要し、その結果パー4で9打を叩き、優勝争いから脱落。以後、そのバンカーは中嶋プロの海外での登録名から"トミーズバンカー"とも呼ばれるようになった。

    

【17番ホール 第3打】奥にこぼせば、砂利の上でも"あるがまま"

バンカーを嫌ってグリーン奥にこぼすと地道からのショットを強いられる。遠く日本やロンドンのような救済ルールは皆無。どこからでもあるがままの状態で打つ。地道奥のアスファルト上からでも同様だ。

画像: グリーンからこぼれたボールを地道からアプローチ

グリーンからこぼれたボールを地道からアプローチ

画像: グリーンのすぐわきが地道、その隣はアスファルト。ボールが止まればそこから打つしかない

グリーンのすぐわきが地道、その隣はアスファルト。ボールが止まればそこから打つしかない

       

【17番ホール 第4打】テレビでは分からない、アルプス級の傾斜グリーン

グリーンオンしたからといって油断は禁物だ。1ヤード以上のマウンドがあり、さらにロードバンカーに向かって傾斜がついている、カップ位置次第ではミスパットがバンカーに転がり落ちることもあるそうだ。

画像: プレーヤーの手前の大きな傾斜はグリーンの一部。下の段につけたら途方もなく長く、難しいパットが残ることになる

プレーヤーの手前の大きな傾斜はグリーンの一部。下の段につけたら途方もなく長く、難しいパットが残ることになる

Q. オールドコースには、ブラインドホールがいくつある?

正解は7ホール。

先が見えなければ、見えないなりに打つしかない。コース内に112個あるバンカーは見えないところにいくつもある。ナイスショットを放っても、入ってみれば人が1人やっと入れるような大きさのバンカーにつかまっていることもある。

そんな場合でも、さっさと脱出の方法を考えるのが賢明なゴルファーというもの。ゴルフが実にシンプルなゲームであるということをオールドコースは教えてくれるのだ。

「見えない」「分からない」を愉しめるようになって、ゴルファーとして一人前なのではないだろうか。だからこそ、オールドコースにはコースを熟知したキャディが付くのだ。クラブとボールを拭くためだけにいるわけではない。

そして、耳を澄まして、ブッシュやマウンドの向こうを想像してみるのだ。「あれこれ考えずに打ってみればいいさ」と、昔の名手たちの声が聞こえてくるようだ。

画像: ゴルフコースの脇を小径が通る。ボールを探すゴルファーと散歩中の翁が交錯するのも、セント・アンドリュースならではの光景だ

ゴルフコースの脇を小径が通る。ボールを探すゴルファーと散歩中の翁が交錯するのも、セント・アンドリュースならではの光景だ

【まもなく2025年分の予約開始!】セント・アンドリュース オールドコースでラウンドできます!

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