CX-3の大幅改良を簡単に言うと、乗り心地を良く、プレミアム感を高めた
マツダCX-3といえば、全長約4300mmというコンパクトさと1.5Lディーゼルエンジン搭載によるランニングコストの低さに加え、SUVながら全高を1550mmに抑えてスポーティなエクステリアデザインなどからユーザーから好評を受けているモデルだ。さらに、SUVでは珍しい、6速MTを設定しているのも魅力のひとつ。
2015年2月に登場して3年以上を経過した2018年5月17日、マツダはCX-3の大幅改良を発表した。しかし、その内容は“大幅”と言うには収まらないほどの改良が施される。
商品概要の書類からパッと目に飛び込んできたのは、従来の1.5Lディーゼルから1.8Lディーゼルエンジンへのシフトだ(後述)。しかし、それよりも注目したのは、サスペンションやタイヤ、シート素材など、乗り心地/走行性能にまつわる部品の改良である。まずはこちらから紹介していこう。
なぜここに注目したのか。人馬一体の理念から開発されたCX-3は、より人の感覚に沿った走り味やダイナミック性能を高く評価された一方、少数ながら“乗り心地がかたい”と評するユーザーもいたからだ。マツダにもこの声は届いていたのだろう。今回の大幅改良で、足まわりを大幅に変更して乗り心地をよくしているという。部品で見ると……
・ダンパーの大径化(外径:フロント45mm→51mm/リア38mm→45mm)
・前後サスペンションスプリングのバネレート低減
・リアサスペンションのトップマウントを変更して減衰性能向上
・バンプストッパーを変更して減衰感を改善
・タイヤを新設計。サイドウオールで衝撃を吸収しやすく
・タイヤトレッド面の剛性高めて、操縦安定性向上
・フロントスタビライザーの小径化
・電動パワステの制御変更
なかでも上5点は、タイヤとサスペンションの役割を最適化して乗り心地を滑らかにする意味を持つ。具体的には、路面の凹凸をタイヤのサイドウオールがたわんで吸収し、そのあとでサスペンションがストロークしはじめるという、時間的な役割分担をより明確にしてボディへの衝撃を柔らげているという。
エンジンラインアップを刷新。1.5Lディーゼルは1.8Lディーゼルにシフト
さて気になっているユーザーも多いだろう、前述したエンジンの話に移ろう。現在、マツダのディーゼルエンジンラインアップはデミオとCX-3の「1.5L」、アクセラやCX-5などの「2.2L」と4気筒を2種類持っている。これを今後、1.8Lと2.2Lにシフトするというのだ。
なぜか。簡単に言うと、実用燃費(環境性能)とコントロール性の向上だ。
排気量アップと燃費改善は相反することのように感じるが、エンジンの軽量化やインジェクターの変更、ターボの大径化&高効率化などで、従来モデルよりも実用燃費を向上させているという。ただ、残念なことに、JC08モード値だった従来モデルと、WLTCモード値のみ公開の新型で燃費数値を単純比較することはできない。それでも開発者は、“排気量アップに伴う自動車税の増税分(5000円)を、ほとんどのユーザーが燃費改善でカバーできるでしょう”と話した。
排気量を大きくしたことによるエンジンパワーは微増だ。従来の105ps/270Nmから11ps高められ、116ps/4000rpm・270Nm/1600-2600rpmに向上している。さらに、トルクの発生をより高回転型として最大トルク発生域より先の5000rpmまでを太くしているという。
もうひとつ、2017年6月に追加された2Lのガソリン仕様もフリクション低減やインジェクターの変更などによりパワーアップ(+1ps/+3Nm)と実用燃費向上(カタログ値は同数)を果たしている。ガソリン仕様のトピックといえば6速MTの追加もそのひとつ。CX-3の楽しさが追加された印象だ。
エクステリアは大きく変えず、インテリアの使い勝手と質感向上
スポーティでシックなエクステリアデザインが好評のCX-3。ここは大きく変更していない。もちろん細かく見ればフロントグリルの意匠やテールライト、ホイールなど変更点は多く、よりプレミアム感を増したと感じられる。ちなみにボディカラーは従来と変更なし。
どちらかといえば、インテリアの質感向上の方が印象深い。とくに電気式サイドブレーキへの変更に伴うセンターコンソール周辺のデザイン変更と、要望の多かったというアームレストの標準装備化(従来はディーラーオプション)は大きい。デザインだけでなく、ボタンやスイッチなどを前方へシフトすることで操作性向上も図られている。
車両価格はガソリン仕様で212万7600円〜282万4480円、ディーゼル仕様で243万6480円〜309万4480円となる。全グレードで約2〜3万円ほど高くなっているものの、これだけの仕様向上を考えるとかなりお得と感じられる大幅改良と言えるのではないだろうか。
TEXT/Yohei Kageyama PHOTO/Mitsuru Tamai