最近、ツアーやレッスン用語で『パッシブトルク』という言葉をよく聞く。「よく分からない」「一部のプロの話でしょ」なんて、アベレージゴルファーの自分には遠いものとして捉えていませんか? 実際のところはどうなのだろう? そんな疑問にお答えします。
飛びと正確性を生む「クラブのチカラ」
石原 パッシブトルクとは新しく生まれた理論と言うより、以前から多くのプロも取り入れる‟クラブが生み出す力”です。
─── クラブが生み出す力とは?
石原 例えば「スウィング面から外れないように振る」という教えがありますが、終始プレーンに乗った状態で振ると、インパクト前に開いているフェースを自分で戻す(閉じる)必要が出てきます。
─── フェースターンのことですね。
石原 以前は私もそうしていましたが、日によって好不調の波が激しかった。トルクを生む動きを取り入れたら、結果も安定するようになったんです。
─── サラッと言いましたが結構大きな変化ですよね。そもそも〝パッシブトルク〞とは?
石原 簡単に言うと、手の動きとクラブ重心の動きのズレが生み出す力を指します。両者がズレるとクラブ重心は手の動きに引かれます。ここで生まれる力がパッシブトルク。
─── 受動的に動く力ということでしょうか。
石原 スウィング面から外れたクラブの軌道を自然に『戻し』、インパクト前後で自然とフェースを『返してくれる』力です。
─── ずいぶんと都合のよさそうな力ですね。
石原 セルヒオ・ガルシアのダウンスウィングに顕著な〝クラブが倒れる〞動きがあります。これによりトルクが生まれます。
─── スッとクラブが落ちるような動きですか。
石原 軌道に乗せずとも自然と乗り、フェースは返さずとも返る。能動的ではなく受動的な動きだから〝パッシブ〞というわけです。
─── なるほど。
石原 要はクラブの力を使うためにシャフトを寝かせるわけです。力の弱いジュニア選手や女子プロたちは、例外なくこの動きを取り入れていますね。
─── マッチョな人はともかく、一般的な体力の人ほど、ぜひ取り入れたいですね。
セルヒオ・ガルシアで見るパッシブトルクの効果!
切り返し~クラブが後ろへ倒れトルク発生の原動力となる
切り返し直後で腕が真下へ落ち、低いポジションに入る。この時グリップエンドはボールの向こうを指し、シャフトが「寝た」状態に。
ハーフウェイダウン~クラブ重心が手の軌道へ戻ろうとする
フラットな軌道から徐々にクラブがスウィング面に近づく。切り返し直後で生まれたトルクをインパクトにかけ増幅している段階。
インパクト直前~軌道に乗って手が自然と回転
トルクに引っ張られ手が回転し、インパクトを迎える。タメが大きいのにヘッドの入射角が浅いため、適度なスピン量で曲がりにくい。
後ろに倒れたクラブが戻ろうとして‟トルク”が発生する
切り返し直後に上を向いた左手甲がインパクトへ近づくにつれ、反時計回りの方向に回る。
この時、自分で回そうとするのではなく、クラブ重心が戻る力で自然に回っている
トルクとは・・・回転軸を中心とした「ねじれの力」。「ある固定された回転軸を中心に働く、回転軸のまわりの力のモーメント」の意。スウィングでいえば、シャフトやヘッドの回転にかかる力だ
スウィングには3つのトルクがある
スウィング研究家・クリス・コモ氏による研究では、一連の動作で生まれるトルクを「アルファ」「ベータ」「ガンマ」トルクと名付け分類した。
「クラブを寝かすことで生まれるパッシブトルクは、この3つの複合体です」(石原)
[アルファトルク]手首のヒンジで起こる
[ベータトルク]腕のローテーションで起こる
[ガンマトルク]フェースの開閉で起こる
パッシブトルクの効果、理解しましたか? 次回からはパッシブトルクを活かす方法について石原プロが説明していきます。
アベレージゴルファーの福音となるテクニック。近日、公開しますのでお楽しみに!
月刊GD2018年8月号より