スキージャンプ界のレジェンドが、ドラコン界のレジェンドに飛距離アップ術を教わる。力まかせのスウィングを卒業して、技と工夫でヘッドスピードを上げる体にやさしいスウィングをマスターしよう。筋力に頼らずに「1㍎でも遠くへ」と願う、大人ゴルファーの飛ばし術を大公開!

【指導】南出仁寛プロ
1978年生まれ。大阪府出身。432㍎の日本記録を持つプロゴルファー。この秋、日本人最多となる11度目のドラコン世界大会に出場。世界10位の記録も持つ

【教わる人】葛西紀明選手
1972年生まれ。北海道出身。土屋ホーム所属。スキージャンプのレジェンド。冬季五輪8回出場。ゴルフの腕前はシングル級で飛距離270㍎だが「もっと安定して飛ばしたい」と南出プロに2度目のレッスンを受講

大きな体重移動は腰痛の原因です!

南出 前回のレッスンから、4年が経ちましたけど、飛距離は落ちていませんか?

葛西 芯に当たれば、270㍎くらいですけど、球のつかまりが悪くなってきて、プッシュスライスが出るんですよ。それとラウンドの翌日に、腰に疲れが出るときがあって……。

南出 ダウンで右から左への体重移動が大きいスウィングになっていますよ。それが振り遅れの原因。それに体重移動を大きく使うスウィングは、年齢を重ねてくると体への負担が大きく、腰を痛めやすいんです。

画像: 葛西さんは体重移動を大きく使うクセがあるという南出プロ

葛西さんは体重移動を大きく使うクセがあるという南出プロ

葛西 年齢に合わせて、飛ばしのスウィングも変えていかなきゃいけないんですね。

南出 個人差はありますが、40歳を過ぎたら、体重移動や体をねじるパワーではなく、体の回転でスピードを出すのが、“大人の飛ばし術”でしょうか。

葛西 なるほど。

南出 バックスウィングでは右ひざ、インパクト以降は左ひざを伸ばして、その場で回転するようにスウィング。これなら体に負担をかけずに振って飛ばせますよ。

葛西さんの【BEFORE】 体重移動が大きく、体を反ってリストターンで飛ばす

南出 右から左への体重移動が大きいので、ダウンスウィングでクラブが寝て、フェースも開いてしまいます。

南出 そのまま当たればプッシュスライス、急激にフェースを返せば引っかけのミスが出ます。タイミングが合えば飛びますが、確率は低くなります。

まずは軸をブラさず“足伸ばし”で振る

画像: 右足を伸ばしてテークバックし、左足を伸ばしてフォロー

右足を伸ばしてテークバックし、左足を伸ばしてフォロー

── テークバックで体を捻じり上げて、ダウンで左に大きく体重移動していくスウィングは、葛西さんのようなトップアスリートでも腰に疲労が出るほど体に負担が掛かるんですね。

画像: 捻転差を作ろうとすればするほど腰を痛めます

捻転差を作ろうとすればするほど腰を痛めます

南出 そうですね。右足で地面を踏みながら、右ひざを伸ばしで体を回転させれば、体に負担をかけずにスピードを出せて、軸も安定します。

南出 ダウンスウィングも同様です。左足に体重移動するのではなく、左足で地面を踏んだ反動を活かして、左ひざを伸ばしていけば、その場でスウィングできます。

腰をま~るくして構える

南出 ラウンドの翌日に、腰に疲労が残ってしまうのは、アドレスにも原因があるんです。

葛西 あっ、そういえば、4年前のレッスンでも、アドレスを教わりましたよね。

南出 思い出してくれました? 葛西さんはアドレスで背筋がピンと伸びて、腰がやや反り気味になる癖があるんです。4年前のレッスンで、そのアドレスを修正したんですけどねぇ……。

葛西 元に戻っちゃったんだ。

南出 ですね。腰を反ると、筋肉が緊張してスムーズに体を回転できないし、負担も大きくかかってしまいます。なので、もう一度、おさらいしましょう。

葛西 よろしくお願いします!

画像: クラブを腰に当てて、腰を丸くして構える

クラブを腰に当てて、腰を丸くして構える

南出 上体を前傾させるときに、股関節から折ると骨盤も前に傾きますよね。この状態で背筋をピンと伸ばそうとすると、腰が反ってしまうんです。

葛西 そうか、骨盤を地面と垂直に立てた状態から、腰だけを丸めるんでしたね。

南出 そうです。おへその高さにシャフトを当てて、そこから折るように腰を丸めて上体を前傾させるんです。この状態で腰を触ると、筋肉が緊張せず、ゆるんでいるのがわかるはずです。

画像: 腰だけをまあるくしてアドレスする。「ちょうど腰が痛くなる箇所ですね」(葛西)

腰だけをまあるくしてアドレスする。「ちょうど腰が痛くなる箇所ですね」(葛西)

葛西 本当だ。前のアドレスだと腰の筋肉がガチガチです。

アドレスで腰は剃らさずに、丸めて構えましょう

画像: アドレスで腰は剃らさずに、丸めて構えましょう

南出 股関節から前傾しないで、骨盤は立てたまま、お腹をへこませる感じで腰を丸めて構えます。ベルトラインよりも上の、おへその高さにシャフトを当てるとやりやすい。これなら腰に負担がかかりません。 

腰を丸く構えると、そっくり返らず振りやすい

画像: 腰を丸く構えると、そっくり返らず振りやすい

腰に痛みが出るのが気になって、最近は思い切りよく振れなくなっていたという葛西さん。

葛西 4年前にも教わったのに、すっかり元に戻ってしまっていました。この構えなら、腰のことを気にせずに、振り抜けますね。

丸く構えられたら、あとはスピード。高いトップを作り、上から下に振り抜こう

南出 葛西さんは球をつかまえようとして、インサイドアウト軌道で、フェースターンを使うスウィングになっています。そのため、軌道がフラット気味でヨコ振りになっているんです。

葛西 ヨコ振りはダメですか?

南出 インパクトゾーンでヘッドが真っすぐ動く時間が短いので、インパクトが点になるうえ、フェースの開閉も大きいので、ボールにパワーを伝えるのが難しくなってしまうんです。

葛西 パワーをむだ使いしているんですね。

南出 クラブはヨコではなく、タテに振るんです。そのほうが腕とクラブの重さも利用できる。インパクトゾーンではヘッドが真っすぐ動くので、パワーをボールに伝えることができるし、ミート率もアップします。

葛西 タテに振るポイントは?

南出 まずは高いトップを作ること。手元を頭より高く上げるぐらいのイメージです。

トップを高くする

画像: 手元を頭よりも高く!

手元を頭よりも高く!

葛西 こんなに高く上げるんだ。

南出 高いトップから、腕とクラブを真下に落とすように上から下に振るんです。ダウンで右ひじを内側に絞ると、クラブが寝てフェースが開くので、ヨコ振りになってしまいます。

南出 手元を体から遠ざけるイメージで、胸を右に向けたまま、真下に振り下ろす。ゆるやかな軌道でボールをとらえられるので、むだなスピンも抑えられます。

腕とクラブを真下に落とすように、上から下にクラブを振る

画像: 腕とクラブを真下に落とすように、上から下にクラブを振る

南出 葛西さんは手元が低いトップから、フラットな軌道のヨコ振りになっていました。クラブは上から下へ、タテに振ったほうが、腕とクラブの重さはもちろん、重力も利用できるので、少ない力で大きなパワーを生み出すことができるようになります。

ダウンの円弧もゆるやかに大きくする

画像: ダウンの円弧もゆるやかに大きくする

南出 ダウンでタメを作ろうとして、右ひじを引きつけるように絞るのは、ボールに対してヘッドが鋭角に入るのでNG。

南出 手元を体から遠ざけるように、真下へ下ろすことで助走距離が長くなり、ゆるやかな軌道でボールをとらえることができます。

超軽クラブでスピード体感! 
目標は1日3セットで+3m/s

南出 最後に、ボクも実際に行っているヘッドスピードアップのドリルを教えちゃいます。

葛西 どんなドリルですか?

南出 とっても簡単。ドライバーより重い素振り用のバットとヘッドが付いていないシャフトだけの軽いクラブを交互に振るんです。これだけでヘッドスピードが2~5m/sは上がります。

【ドリル】 重シャフト素振りでパワーを、軽シャフト素振りでスピードをつける

画像: 「ゴルフの素振り用の重いバットを5回連続で振ります。手先だけで振らずに、しっかり体を使って振ります」

「ゴルフの素振り用の重いバットを5回連続で振ります。手先だけで振らずに、しっかり体を使って振ります」

画像: 「次に超軽量のクラブを同じく連続で5回。フォローでピュッと短くて高い音が鳴るように最速で振ります」

「次に超軽量のクラブを同じく連続で5回。フォローでピュッと短くて高い音が鳴るように最速で振ります」

画像1: 【ドリル】 重シャフト素振りでパワーを、軽シャフト素振りでスピードをつける

南出 どちらもダウンはゆっくり下ろし、フォローで音が鳴るように振ってください。

葛西 ホントだ。HSが50m/sを超えちゃいましたよ。

南出 重いバットを振ると、クラブを振る筋肉が自然と鍛えられます。軽いクラブは通常のクラブでは出せないスピードが出せるので、脳が『その速度で振れる』と騙されるんです。

画像2: 【ドリル】 重シャフト素振りでパワーを、軽シャフト素振りでスピードをつける

南出 交互に振ることでヘッドスピードが上がります。北海道に帰ってから試してみてくださいね。

葛西 大人の飛ばしを身につけます。ありがとうございました。

TEXT/Toshiyuki Funayama
PHOTO/Yasuo Masuda

週刊GD2018年9月11日号より

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