【指導】藤田寛之
1969年生まれ、福岡県出身。40歳をすぎて賞金王になる。最近はケガに悩まされることも多いが2014年以来の優勝を目指して戦いを続ける
「カップを消す」とは見える範囲に集中すること
── 藤田さんがテーマに掲げた「カップを消す」とは、どういうことでしょう?
藤田 カップがあるから緊張して体が動かなくなる。だったら、カップをなくせばいいんです。
── あり得ない、ですよね。
藤田 でも、実際のパッティングではボールを見ているのだから、カップは視界にないわけです。ではどこにカップがあるかというと“意識”のなかです。
── 意識のなかのカップを消すことなんてできるんですか? たとえば、タッチやラインはどうイメージしていますか?
藤田 ラインはボールからカップまでの軌跡を全体的にイメージし、そこに乗せるようにタッチを意識します。
藤田 それだと、意識のなかからカップは消せないですよね。
藤田 最初に、カップインするボールをイメージして、そのスピードを出すにはどれくらいの強さで打ち出せばいいかを考えます。
【どの速さなら入るか?】球のスピードをイメージ
藤田 次に転がす方向を決め、スパットを見つけます。そうすることで、カップへの意識がどんどん消えていきます。
藤田 傾斜を読んで打ち出し方向を決めて、スパットを10センチから50センチの間に設定します。
【打ち出す方向を決める】10~50センチにスパット(目標)を設定
スパットを決めたら、見るのはボールからスパットの範囲だけ!
藤田 パッティングは、この打ち出しが成否を決めると思っているので、ボールとスパットに集中することで、頭のなかからカップは消えています。
自分が見えている範囲に集中する
藤田 ボールとカップを意識してラインを考えると、入れたい意識が強くなりカップばかり見てしまう。打つ前にラインとタッチを決めてスパットを設定し、そこ集中すればスムーズに打てます。
── 確かに、集中するところを変えるだけで、カップのイメージは薄くなりますね。
藤田 打つ前に方向と距離感を充分にイメージしてスパットが決まったら、あとは結果を気にせず、ボールとスパットだけ見て打っていきましょう。入るか入らないかは神のみぞ知るという感覚でいいんですよ。
イメージ作りはルーティンが大切。1~4の藤田流ルーティンを試してみよう
ボールとカップとを結ぶライン上に立ち、傾斜を確認しラインと距離感を決めて素振りをする。アドレスに入ってから再度、素振りをしてタッチを再確認。意識のなかでカップを消し、打つことに専念。
①後ろからラインを確認する
②素振りを2回してイメージを膨らませ、この時にスパットを設定する
③いいイメージをもったままボールにセット
➃打つところから素振りを2回して完了
やるべきことができると“入れたい”思いが不思議と消える
── 意識のなかでカップを消せると、どうなるのですか。
藤田 カップにボールを入れたいという意識が緊張感を誘い、体の動きが硬くなる。これがパッティングのミスの原因ですよね。カップを消すことで、この『入れたい』という意識を遮断できるわけです。
── うまく遮断できますか?
藤田 打つ前に、ルーティンでやるべきことをしっかりやったのだから、あとは打つだけという割り切りが必要です。
── 具体的にどういうメリットがあるのでしょうか。
藤田 一番は『目線』です。ストローク中にボールの行方を追うと目線が動きヘッド軌道もズレます。でもカップを消して目線を固定できれば、10~50センチ先のスパットに球を通すことはわりと簡単です。
メリット1 目線がズレにくくなる
藤田 カップの意識が強いとストローク中にボールの行方を追いやすく目線が動いてヘッドの軌道が狂います(右)。カップを消して目線を打ち出すラインに対して平行にキープできれば、ヘッド軌道は狂いません(左)。
メリット2 フォローが真っすぐ出しやすい
藤田 さらにカップに対してヘッドを真っすぐに出そうとすると、フェースは開いてこすり上げるストロークになります(右)。近くのスパットに対してヘッドを出すと、フェースは真っすぐのままスクェアにヒットできます(左)
メリット3 短い距離を打つ感覚になる
藤田 カップを意識すると、流し入れる意識が働いて無意識にインパクトでゆるむことがあります。カップを消してすぐ先のスパットに対して打つと、“お先に”感覚で打てるため、インパクトでゆるまず、ミスヒットが激減しますよ。
体に近い部分でフェース面を感じる
── スパットに集中してカップを消そうとしても、どうしてもカップが気になる場合はどうしたらいいのでしょう。
藤田 そういう人は、左手の甲に目があると思って打ってみてください。その左手の甲にある目が、ストローク中はずっとスパットを見ているというイメージを持つといいでしょう。
── スパットの設定と左手の甲の意識で、いよいよカップを消せそうです。
藤田 多くの人はストローク中にフェースに意識が行きますが、フェースは体から遠いぶん、意識のコントロールが難しい。でも左手の甲なら体から近いので、コントロールできますよね。
左手の甲とフェースはリンクする
藤田 それに僕自身、普段から『左手の甲はフェース面と同じである』という感覚でストロークをしています。
左手甲がフェース面と思えれば頭が動かなくなる!
藤田 ですので、この面をラインに対してスクェアに動かすという意識をするだけでストロークがすごく安定するので、おすすめです。
ポイント 左手の角度をキープしたまま打つ
藤田 左手の甲とフェース面がリンクした構え方ができていれば、ストローク中に意識することは左手の甲の角度がアドレスのときと変わらないようにするだけ。カップの意識が残っていると甲側に折れやすいので注意しましょう。
さらにワンポイント「テークバックは小さいほうがいい」
藤田 テークバックが大きいとインパクトでゆるみやすく、ミスヒットになることが多くなります。左手の甲の目がターゲットから外れないようにする意識を持つことで、コンパクトなテークバックになります。
ロングパットは、カップを「消さず」に直径2メートルの「大きな」カップを作る
── ショートパットはカップを消す。では、10メートルくらいのパットはどうしていますか?
藤田 もともとカップは視界から外れているし、意識から外したらターゲット感覚が薄くなります。ロングパットは直径2メートルの円を狙います。
── 消さずに、大きくする?
藤田 10メートルくらいになると2パット狙いですから、ファーストパットはターゲットを大きくします。直径2メートルの円は半径1メートルですから、このなかに寄せることができれば、セカンドパットは1メートル。この痺れるパットの時に『カップを消せ』ば、パーセーブできるということです。
ポイント① ゴミ箱にごみを投げるイメージ
藤田 ゴミ箱が遠くにある場合は、フォロースルーを大きくとって紙屑を投げ入れます。これと同じイメージで、フォローを大きくとって距離感を出しましょう。
ポイント② 吊るように構えて打つ
藤田 ロングパットはパターを吊るように構えることで腕の自由度が高くなり体を動かしやすくなります。ヘッドが大きく動き、距離感が出しやすくなりますよ。
TEXT/Masaaki Furuya
PHOTO/Yasuo Masuda、Tadashi Anezaki
THANKS/葛城ゴルフ倶楽部
週刊GD2018年10月2日号より