【解説】佐久間馨
さくまかおる。1955年神奈川県生まれ。ゴルフスウィングのメカニズムを科学的、合理的に研究、解明している。戦略やメンタル面のレッスンにも長ける。2010年GDレッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
バンカーショットはアプローチと同じ
─── まず「バンカーが苦手」というゴルファーが多いのですが、なぜ苦手になってしまうのでしょうか?
佐久間 簡単です。何度もバンカーでミスをしているからです。
─── なぜミスをするのでしょう?
佐久間 これも答えは簡単。打ち方が間違っているのです。多くのゴルファーは、バンカーは特別な打ち方が必要だと考えていて、①スタンスはオープン、②フェースを開く、③ボールの手前に打ち込む、という3点セットをやろうとします。それで上手くいかないと、もっとフェースを開いたり、もっと強く打ち込もうとして、よけいに上手くいかなくなり、バンカーが苦手になっていくのです。
─── フェースを開いたり、上から打ち込むやり方は間違っているのですか?
佐久間 それで上手く打てている人はいいのですが、「バンカーが苦手」という人は、先ほどの3点セットを忘れましょう。
アプローチでダフらないコツがわかれば、バンカーからも脱出できる

─── 違う打ち方を試しましょうというわけですね。
佐久間 はい。バンカーだからといって特別な打ち方をする必要はまったくありません。このような(上写真)アプローチと同じ打ち方で簡単に脱出できます。やってみましょう。





ほーらね、バンカーショットに見えないでしょ?
佐久間 ただ1点、ヘッドがボールの2センチ下を通る工夫をするだけ。それを今回は、徹底的に紹介します。
アドレスはアプローチと同じでいい
佐久間 スタンスはオープンにしなくていい。フェースは開かない。上から打ち込んだり、カットに打つ必要はありませんから。

佐久間 アプローチで、ダフリやトップのミスが出やすい人は、クラブヘッドを高く上げて打ち込む傾向があります。
─── 上から打ち込んでボールの手前に刺さるとダフリ、それを恐れて、砂を薄くとろうとトップするわけですね?
佐久間 そのとおりです。ボールの手前からソールを滑らせながら、横から払い打ちをすればダフリ、トップにはならず、上手くいきます。つまり、クラブヘッドをボールの前後で「低く、長く」動かせばよいのです。
【フェースを開かない理由①】SWはもともとロフトが大きい

SWにはバウンスがある。あえてフェースを開かなくても、刃が砂に刺さることなく、バウンスから砂に潜ってくれる。またSWは56~58度とロフト角が大きいのでスクェアな構えでも十分ボールは高く上がってくれる
【フェースを開かない理由②】ロフトが増えて飛ばない

ロフト58度のSWのフェースを開くと、リアルロフトは60度以上に。そのぶん飛距離が落ちる。「飛ばそう」と思う気持ちが強まって打ち込みやすくなる
【フェースを開かない理由③】砂の抵抗でフェースが開く

フェースを真っすぐ構えていても、バンカーはインパクトで砂の抵抗を受けるので、フェースはわずかに開いて当たる。最初から開いておく必要はない
佐久間 上記3つの開かない理由も踏まえ、SWはもともとロフトが大きいので、ふつうに打てばボールは高く上がります。そのSWを使うのだから、考え方はバンカーショットも同じです。
佐久間 ヘッドは横から入れて、ボールの2センチ下を滑らすように動かす。ボールは勝手に高く上がり、自動的にバンカーから脱出できます。
─── ただ、バンカーショットの場合は砂の抵抗があると思うのですが……。
佐久間 SWのソールにある「バウンス」を利用すればいいのです。アドレスでは、そのバウンスを使いやすいようにややハンドレート気味に構えます。あとはボールの位置も重心のかけ方も、スタンスの向きも、全部アプローチと同じです。
ポイント① ボール位置は首のつけ根の下

スウィングは円運動なので支点(円弧の中心)を作ったほうがいい。この場合、首の付け根だと考える。首の付け根の真下にボールをセットし、付け根が左右にブレないようにスウィングすれば、ボールだけをとらえやすい
ポイント② ハンドファースト厳禁

ヘッドが砂に刺さりやすくなるため、ハンドファーストに構えるのは厳禁。写真はNGの見本。バウンスを生かすためにもややハンドレートがよい
ポイント③ 足場は作らない

アプローチと同じ打ち方のため、踏ん張ったり下半身をがっちりさせなくてよい。そのため足場を作って、下半身を固める必要はない
佐久間 正しいアドレスがわかったらあとは、ヘッドをボールの2センチ下に通すやり方を詳しく説明しましょう。
2センチ下にクラブを入れる
佐久間 SWのソールには「バウンス」があります。このバウンスを上手く使うことで、ヘッドが砂に潜り、ボールを飛ばしてくれるのです。
ボールの下2センチまで潜りこませるのが理想

─── では、バウンスをどのように使うのでしょうか?
佐久間 先ほども言いましたが、まずはアドレスでハンドファーストに構えないこと。ロフトが立つので、刃から砂に刺さりやすくなります。体の真ん中に手をセットし、まずはバウンスが使える構えを作ってください。バンカーではソールできないので、そのとき、両ひじがじゃっかん曲がった状態になるはずです。
─── 打ち方は?
佐久間 簡単に言うと、アドレスで曲がっている両ひじをインパクトで伸ばすだけです。
アドレスで曲げておいたひじをインパクトで伸ばす!

左)ひじを曲げたアドレス、右)ひじを伸ばしたインパクト
─── 両ひじを伸ばす?
佐久間 スウィングの円弧を大きくするのです。両ひじが曲がった状態のまま振るよりも、(ダウンスウィングから)インパクトで両ひじを伸ばすと、円弧が2センチ大きくなります。両ひじを伸ばしたぶんだけヘッドが砂に潜ってボールを飛ばしてくれます。
ひじを伸ばしたぶん円弧が大きくなり、ヘッドはボールの2センチ下を通る

両腕を伸ばしたぶんだけ、ヘッドは砂に潜る
─── なるほど。両ひじの曲げ伸ばしだけなら、深く入りすぎたり、浅く入ってホームランになったりする心配もなさそうですね。
佐久間 そうです。注意してほしいのが、ひざの高さや前傾角度を変えないこと。両ひじで高さを調整しているため、他の箇所を上下動させると、それだけヘッドが砂に潜る深さも変わってきてしまいますからね。

ひざの高さが変わると、ヘッドが潜る度合いも変わってくるので注意
腕を伸ばすポイント① 首の付け根を支点に、その場で体を回転

佐久間 首の付け根に支点を作って円運動で振るが、体重移動をすると支点がズレてしまい、狙った2センチ下にヘッドを通せなくなる。体重移動せず、その場で回わるようにしましょう。
腕を伸ばすポイント② ダウンスウィングで両腕を伸ばす

伸ばすタイミングが大事
佐久間 両ひじを伸ばすタイミングはインパクト直前がよいが、慣れないうちはダウンスウィングの途中で伸ばし、徐々にタイミングを変えていくといいですよ。
雨上がりの固い砂の対処法
─── 今の季節は雨が多く、砂が硬いときがよくあります。そんなときはどうしたらいいですか?
佐久間 砂が硬いバンカーでは、ボールの手前でヘッドが弾かれ、トップしやすくなります。インパクト直前に左手首を伸ばし、ヘッドをボールの下に強く押し込むようにします。
左手で強く押し込めば湿った硬い砂でも簡単脱出

左手の甲を目標に向けるように左手首も伸ばす

フィニッシュは小さくまとまる
砂の抵抗に負けないように、インパクトでグリップを強めに握るのもあり

雨上がりのバンカーは砂が締まって抵抗が大きい。そう感じたらインパクトでグリップを強める
佐久間 それ以外は基本的に、説明してきたバンカーショットと同じです。複雑に考えたり、あえて特殊な打ち方をする必要はありませんよ。
TEXT/Kenji Takahashi
PHOTO/Tadashi Anezaki、Tsukasa Kobayashi

週刊GD2018年10月9日号より