振らなくても飛距離で若手に負けていない。タイガーには"伸びしろ"がある
【2000年スウィング】しなやかで、代名詞の「インパクトの沈み込み」が見事
【1993年~2003年 コーチ:ブッチ・ハーモン】
当時のブッチ・ハーモンはG・ノーマンのコーチとして有名で、タイガーとはアマチュア時代に出会う。「ブッチは決まったメソッドがなく、選手に応じてアドバイスするタイプ」(タケ)
佐藤 タイガーのスウィングの変遷を見てみると、2013年はかなり改造していることがわかります。スタンスが狭くて、ダウンスウィングが窮屈に見えますね。
タケ 最後に勝った年だな。5勝しているけど、確かにインパクトで詰まっている感じはある。
佐藤 普通、ここまで劇的には変えられないですよ。
タケ タイガーはコーチのアドバイス通りに変えられるのよ。勝つことに貪欲だから変えることもいとわない。00年と比べるとコンパクトすぎて。力感が合っていない感じだね。
佐藤 タイガーの代名詞は、インパクトにかけての沈み込みでした。00年のスウィングがまさにそうで、トップが深く、ヘッドがよく動いています。この頃はかなり飛ばしていましたよね。
タケ 最初のコーチであるブッチは、人に合わせてコーチングするタイプで、タイガーもストレスは感じなかったのかもな。
佐藤 形とか一切言わないし、メンタルトレーナー的でしたね。
タケ タイガーはボールを変えたときにブッチと別れるんだけど、その頃からデータに興味を持ち始めたのよ。打ち出し角とか、スピン量とか、そういったデータ面からスウィングを見直すみたいなね。
佐藤 タイガーはデータやクラブテストが大好きですからね。テスト日を決めたらそのために3、4日練習するくらいに。トラックマンのデータだって自分で事細かに分析できますし、クラブ研究に余念がなかったですね。
【2007年スウィング】ひざの負担を考慮し、フラットなヘッド軌道へ改造
【2004年~2010年 コーチ:ハンク・ヘイニー】
タイガーの親友、M・オメーラのコーチだったのがH・ヘイニー。フラットなプレーンを重視し、ひざの負担を無くすためにスウィングをフラットな軌道に改造していった
タケ ブッチの後、ハンク(ヘイニー)がコーチになるわけだけど、だんだんとフラットなスウィングに変わっていったね。
【2013年スウィング】「左1軸」に挑戦。しかし、ダウンスウィングが窮屈に見える
【2010年~2014年 コーチ:ショーン・フォーリー】
体重移動を行わない左1軸スウィングを提唱したショーン。彼のコーチングでタイガーは2013年賞金王に輝いたが、その後、腰のケガで戦線を離脱する
佐藤 デビュー当時のダイナミックな動きのものから、少しずつ体を動かさない方向に変わっていきました。その後、ショーン・フォーリーの「左1軸スウィング」に移行してくのですが、ゴルファーはどうしても力が入ってしまう。その結果、変な力感(窮屈さ)が生まれてしまったのかもしれません。
【2018年スウィング】無敵だった00年頃に近い。フィニッシュでの起き上がりに特徴
【2014~2017年 コーチ:クリス・コモ】
週刊GD連載でおなじみのDr.クォン教授の教え子でもあったクリス・コモ。タイガーを生体力学の視点からサポート。「昔の自分を取り戻すためにクリスを選んだ」(佐藤)
佐藤 今のスウィングは00年当時に戻ってきた感じです。トップが深く、そこからバーンと深く抜く感じが似ています。フィニッシュで起き上がる形も最初は変でしたが見慣れてきました。
タケ タイガーは他の飛ばし屋とは違うのよ。ずっとハードなクラブを使ってきたから、まだまだ飛ばせる要素がたくさんある。クラブを長くしたり、軽くしたりね。さらに言うと、今はぜんぜん振っていないから。マキロイはマン振りに近いけど、タイガーはまだ伸びしろがあるよ。
佐藤 飛距離で引け目を感じるほどではないし、平均300ヤード超ならランク40位内です。まだまだ若い選手には負けない。そう思っているでしょうね。
最後に佐藤信人プロが、「たとえばグリップにしても、インターロッキング派が増えたのはタイガーがやっているから」と付け加えたように、今シーズン早々、タイガーが勝つことがあれば、ゴルフ界はまたタイガーを中心に回り始めるかもしれない。次回は、タイガーのクラブ変遷について振り返ります。
【タイガー・ウッズ研究 後編】はこちら
「400cc級の『M3 TW』か『M5 TW』が出るのでは!」 クラブ設計家・松尾好員がクラブ変遷と未来のドライバーを予測
週刊GD2018年11月6日号より