初代AUDI(アウディ)Q5は、全世界的に大ヒット、発売から8年間での累計販売台数は160万台を達成し、ミドルサイズSUVのセグメントリーダーとなった。フルモデルチェンジをはたした2代目Q5は、どのように進化したのだろうか。見た目はあまり変わっていないようだけど。

日本では2017年に上陸した、2代目となるアウディQ5。グレードは2.0TFSIクワトロスポーツだ。

先代比60kgの軽量化が走りに大きく影響している

諸元表を見てまず驚くのは、その軽さだろう。先代比で全長はプラス50mm大きくなっているのだが、車両重量は先代の同等グレードと比較して60kgも軽くなっている(先代1980kg/現行型1920kg)。2016年登場の現行型A4から採用された新しいモジュラープラットフォーム「MLB evo」をベースにしている。

搭載されるエンジンは、252ps/370Nmのパワー/トルクを発生する2リッター直4ターボ(TFSI)。組み合わされるトランスミッションは7速DCT(デュアルクラッチ)であるSトロニックだ。

画像: まるで工芸品のようにチリが合ったパーツ類など、手に触れるものすべてからプレミアム感を覚えるアウディらしい作り込みのインテリア

まるで工芸品のようにチリが合ったパーツ類など、手に触れるものすべてからプレミアム感を覚えるアウディらしい作り込みのインテリア

ミドル級のSUVだから、絶対的な車両重量が2トン近くあることに変わりはない。だが、その徹底した軽量化が、走りの洗練さにも大きく影響している。

とにかく、どんなシチュエーションでも、優等生的な走りを披露してくれるのだ。

高速道路走行では静かで、それでいて密度の濃い運転を味わえるし、ワインディングでは力強くスポーティな印象まで与えてくれる。アウディドライブセレクトのボタンを押せば、パワステのアシストやエンジン特性などをオート/コンフォート/ダイナミック/エフィシエンシー/インディビデュアル/オフロードの6モードに切り替えることができるが、これ、ふつうにオートモードのままでも爽快な走りを楽しめる。

画像: 背の高いSUVながら、ワインディング走行も気持ち良い。適度なロール感で、タイヤの接地感を失うことなくスムーズな走り。試乗車のボディ色「アゾレスグリーンメタリック」は9万円のオプション

背の高いSUVながら、ワインディング走行も気持ち良い。適度なロール感で、タイヤの接地感を失うことなくスムーズな走り。試乗車のボディ色「アゾレスグリーンメタリック」は9万円のオプション

画像: 高速道路のクルージングもQ5が得意とするところ。アダプティブクルーズコントロール(ACC)は全車標準となる。静粛性も高く、直進安定性もピカイチ

高速道路のクルージングもQ5が得意とするところ。アダプティブクルーズコントロール(ACC)は全車標準となる。静粛性も高く、直進安定性もピカイチ

乗り心地は、ドイツプレミアムモデルらしく締まっている。低中速域では、コツコツと細かく路面ギャップを拾うが、懐の深い足で不快さは皆無。むしろハンドルに伝わるインフォメーションの密度が濃く、日常の何気ない運転ですら、豊かな気持ちになっていく。

それはつまるところ、「すべてが正確」ということに尽きる。ハンドルを切ったら切った分曲がり、ブレーキペダルを踏んだら踏んだだけ止まる。ドライビングに関しては、過剰な演出はまったくない。

「そんなのクルマとして当たり前の性能じゃないか」と思う人がいるかもしれない。でも実際は、こういうモデルはなかなかないのも事実。とくにSUVの場合、セダンタイプに比べると車高が高くボディも重くなる。クルマの走りの部分に関して、ネガティブな要素が多くなるのだ。

ボディ剛性やサスペンションの取付剛性、エンジン特性、タイヤ、トランスミッション・・・さまざまな部品がバランス良く機能してこその、この走りなのだ。ただ、一人一人のポテンシャルは高くても、指揮者がダメだといい曲を演奏できないオーケストラもある。つまりはアウディに、優れたコンダクターがいる、という証拠でもある。

正直いって、Q5の走りに「華」は少ない。だが長く付き合えるのはこういうタイプだとも思う。華やかな走りを演出するクルマも運転していて楽しいが、疲れているとき、体調が芳しくないときは、やさしさや癒やしも欲しくなる。

Q5は、乗れば乗るほどその良さがしみじみと伝わってくる、「控えめな奥さん」のような落ち着きを感じる。

つまり亀の子チャートにたとえて言うならば、どこか飛び抜けて素晴らしい性能がある、というよりも、まんべんなくキレイなカタチの性能表になり、しかもその面積が広い・・・というイメージだろう。

アウディバーチャルコックピット

アウディはアウディ。Q5はQ5。

アウディのSUV、現行Qシリーズの写真を見てほしい。

ぱっと見の印象は、見た目どおりまさに「アウディ」だ。アウディ最小のQシリーズ、Q2はデザインの方向性が異なるが、Q3やQ7と比べても、正直その印象に違いはない。

もちろんアウディファンやオーナーならば、どのモデルがQ7で、どれが今回紹介するQ5なのかはわかるだろう。だけどパッと見、すべて「アウディのSUV」だ。よく見ればデザインも雰囲気も大きさも違うのだが、写真を並べるだけだとその違いがわかりづらい。

次は新旧Q5比較。

こう並べると見た目は似ている。だがよく見てみると、形状も変わり、そして幅広で大きくなったシングルフレームグリル、サイドボディに入ったシャープなキャラクターライン、連続して流れるターンインジケーターなど、より洗練された印象になっているが、エクステリアデザインの基本はまさにキープコンセプトだ。

平成の時代も終わろうとしている2018年。「いまはカローラに乗っているけど『いつかはクラウン』」という時代ではない。同じブランド内の商品で、そういうヒエラルキーを積極的につくっていく・・・ということを、少なくともアウディは考えていない。

アウディは、アウディ。ディーラーでの満足度、モノとしての上質感、テクノロジーの先進性や安全性、走りのクオリティ。A1からR8まで、アウディのモデルはすべてを備えながら、ユーザーのカーライフに合わせて最適な、上質なモデルを隙間なくラインアップさせる、という戦略なのだろう。

Q5は、Q3に比べると全長は280mm長く、Q7より390mm短い。Q3/Q5は5人乗車なのに対しQ7は7人定員。トランクスペースはQ5が550リッターなのに対し、Q3は460リッター、Q7は3列目シートを倒すと770リッター。駐車場の余裕、家族構成、趣味、そして年収・・・そうしたさまざまな要素を加味して、ユーザーは自分に合った「アウディ」を選んでいく。

それには、他ブランドの同クラスよりも魅力的なモデルを作り込んでいかなければならない。とくにフォルクスワーゲン、ポルシェといった同じグループのブランドがあるからこそ、アウディはアウディとして存在していく必要性があるのだ。

2008年に登場した初代Q5は世界中で大ヒット、発売から8年間での累計販売台数は160万台を超え、ミドルサイズのSUVとしてはトップセラーモデルとなった。そして2代目となるこのQ5は、ライバルモデルにはない圧倒的な品質感と正確性を身にまとって登場した。それは、触れて乗って走れば誰にでもすぐに体感できるものだからこそ、従来のアウディオーナーを満足させ、さらに新たなアウディファンを獲得していくという「良いスパイラル」を生み出している。新型Q5はやはり日本でも好調だそうだ。

Text/Makoto Negishi

アウディQ5 主要諸元

画像: アウディQ5 主要諸元

Q5 2.0TFSIクワトロ スポーツ
●全長×全幅×全高:4680×1900×1665mm ●ホイールベース:2825mm ●車両重量:1820kg ●エンジン:直4DOHCターボ・1984cc ●エンジン最高出力:252ps/5000-6000rpm ●エンジン最大トルク:370Nm/1600-4500rpm ●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)●駆動方式:4WD ●JC08モード燃費:13.9km/L●タイヤサイズ:235/65R18 ●価格:691万円

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