3メートルのパットに「バーディパット」ラベルを貼って、ハードルを上げたのはあなた自身
── アベレージゴルファーが、「決められそう」なバーディパットを打てる確率は高くありませんよね。だからこそ「絶対決めたい!」という気持ちが沸き起こり、平常心とは無縁状態になります。どうすればいいのでしょう?
二見 そもそも「バーディパット」というパットは存在せず、ただ「3メートルのパット」があるだけなんです。「バーディパット」というラベルを貼って、心理的ハードルを高くしているのは他ならぬ自分です。
── たしかに……。ではその心理的ハードルを下げるにはどうしたら?
二見 「これを入れればバーディ」という心理は期待値が高い状態です。「これを外してもパー」と思えれば期待値が適正に調整されて、そこまでのプレッシャーを感じずに済むはずです。
二見 米PGAツアーの統計では、およそ8フィート(2.4メートル)のパットを沈められる確率が、50%程度だと言います。世界のトッププロでさえ2メートルを超えるパットは2回に1回外すということ。普通のアマチュアが「絶対入れる!」と思うこと自体が期待値が高すぎるのではないでしょうか。
二見 たとえばラウンドの度に『〇メートルの距離から〇回でカップイン』ということを記録しておけば、3メートルのパットに対して自分が「どれくらいの期待値を持って臨めばいいのか」分かるはずです。確率を知ることで期待値を調整することはとても重要ですが、これができているアマチュアはごく少数です。
── 期待値を調整できたとしても、やはりプレッシャーは残ります。なにか対策は?
二見 プロが行う、「100球連続でカップインさせる」という練習は、実際のプレッシャーの疑似体験でもあります。最後の100球目を相当なプレッシャー下で打つための練習です。
── あらゆる準備をしてラウンドに臨むプロならではの練習方法ですね。プロのような準備はできないとしても、アマチュアがカップインする確率を上げる方法はありますか?
二見 パットの際に一番よくないのは、ラインやタッチなど、まだ迷っている状態でストロークをスタートさせること。どのくらいの強さで、どこに打ち出すといったことをしっかり決めてアドレスに入れば、事前に決めたストロークを行うことに集中しやすくなります。
バーディパットに集中する、3つの準備対策
原因「舞い上がってターゲット意識を忘れる」
対策「グリップ圧を一定に保つ」
よくある「パンチが入ってしまう」現象は"当てにいく"意識が強くなり、"カップに入れる"意識が薄くなった状態。当てにいくと瞬間的にグリップ圧が強くなるので、強いなら強いままの一定の圧力でストローク
原因「滅多にない機会だからプレッシャーに負ける」
対策「実戦想定練習で準備しておく」
当然の練習法ですが、事前にプレッシャーのかかった状態でストロークする経験をしておく。たとえば「10球連続でカップインするまで終わらない」という練習は、プレッシャーの疑似体験にはもってこい
原因「そもそも3メートルが入る確率はそんなに高くない」
対策「現実データを取り"期待値"を調整」
自分自身に対する期待値が高いと、プレッシャーも、外した時の裏切られ感も強くなり、その後のプレーにも影響する。自分の成功確率がどれくらいか把握していれば、過剰に期待値を高めることは起きない
── 滅多にないバーディチャンスだからこそ「入れたい」という気持ちと、攻めすぎて「3パットにしたくない」という思いが交錯して「入れにいく」のか「寄せにいく」のか、はっきり決めずに打ってしまうことがありますね。
二見 どちらかに決めるなら、アマチュアの方こそ「入れにいく」と強く決断するべきだと思います。
── それはなぜ?
二見 3メートルのバーディチャンスはアベレージゴルファーのパーオン率を考えると、そう簡単に巡ってくるものではありません。パーオンがハーフで1回、パーオンのうち3メートルに寄る確率が10分の1だと考えると、3メートルのバーディパットは5ラウンドに1度です。安全策を取るよりもバーディを狙うことに価値があるのではないでしょうか。
── 虎穴に入らずんば虎子を得ず。バーディは強い意志から生まれるんですね。
二見 バーディとボギーのスコア差は「2」です。でも、バーディにチャレンジして成功したという体験はスコア「2」以上の価値があると思います。「期待値を高めろ」ということではなく、「どこを狙って、どの強さでストロークするのか」を決めたうえで強気に狙ってほしいですね。
週刊GD2018年11月13日号より