
【指導/マリウス・フィルマルター】
1955年生まれ。南アフリカ共和国出身。南アからジンバブエ、ドイツ経て、アメリカに移住。タイガー・ウッズ、アーニー・エルス、ブラッド・ファクソン、石川遼など、これまでPGAツアーで活躍する数多くのプレーヤーのパッティングコーチを務めてきた

【解説/吉田洋一郎】
よしだひろいちろう。1978年生まれ。北海道出身。2019年レッスン・オブ・ザ・イヤー。世界中のプロコーチの理論を直接学び、マリウス・Fとは旧知の仲。今回はレポーターとして登場
ニクラス、クレンショー、タイガー。歴代のパット名手は“イン”から打つ
吉田 マリウスはこれまで数多くの一流プレーヤーのパッティングコーチを務めましたね?
マリウス そうだね。アーニー・エルスやブラッド・ファクソン、そして、タイガー・ウッズ。あと、石川遼もだ。
吉田 もう、ストレートに聞いちゃいますけど、タイガーには何を教えていたんですか?
マリウス うーん、鋭い質問だね。まず、タイガーには教えたというよりも、むしろパッティングの本質を教えられたという感じかな。ただ、理想とするストロークができているかの確認作業はよくやったね。

赤いラインがタイガーの軌道だ
吉田 その確認作業とは?
マリウス PGAツアーの歴史上、パットの名手と言えば誰だと思う? ニクラス、クレンショー、そしてタイガーだ。彼らには共通点があって、全員がインサイドからボールを打つんだ。
タイガー・ウッズのパッティング




ジャック・ニクラスのパッティング

メジャー18勝の帝王、J・ニクラス(44歳時、1984年マスターズ)
ベン・クレンショーのパッティング

B・クレンショー、マスターズ1984、95年と2度優勝(32歳時、1984マスターズ)
吉田 ボールをつかまえて打っているんですね?
マリウス そういうこと。タイガーの場合は、インサイドアウト軌道で、アッパー気味に振っているんだ。インサイドからヘッドを入れることで、フェースを閉じてインパクトして強い球を打つことができる。タイガーは、ドローを打つ感覚でパットしているはずだよ。
【タイガーの特徴①】インサイドアッパーに振る
マリウス インサイドアウトに振ることで、ヘッド軌道に対してフェースを閉じてインパクトできる。さらにタイガーはややアッパー軌道でこれをやっている。そうすることで、目標に対してはスクェアにインパクトしながら、芝目や傾斜に負けない強い球を打つことができ、ラインにも乗せやすくなるんだ。

【タイガーの特徴②】ショットのように丸く振る
マリウス タイガーはパットをショットの延長と考えていて、パットだけ真っすぐストロークするようなことはしない。歴代のパットの名手も全員が同じで、パターを真っすぐ動かしていると、たとえ一時的に入っていても、いつか真っすぐ動かせなくなる。最悪の場合、イップスになることもあるんだ。

ヘッドを丸く動かす=ショットの延長線にある動き

ヘッドを真っすぐ動かす=ショットとは違う特別な動き
【タイガーの特徴③】フェースをローテーションさせる

アドレス

テークバック

インパクト

アッパーブロー&フェースローテーション
マリウス タイガーは、ショットと同じようにボールをつかまえる感覚でパッティングするので、フェースローテーションを積極的に使うタイプと言える。ヘッドがインサイドアウトのややアッパー軌道で動き、その動きに伴ってフェースが開閉するんだ。
自分のリズムを掛け声で作り出す。いいストロークのコツ
マリウス ストロークでいちばん大切なものは何だと思う?
吉田 何だろう……。
マリウス リズムさ。もちろん、丸く振ることが前提だけど、自分のリズムで振ることがとても大事なんだ。そのためには、掛け声が効くんだ。口に出さなくたっていい。心のなかで唱えるんだ。パットのうまいプレーヤーはみんなそうしてるはずだよ。おすすめは、「ブーン、ブーン」。自分に合う掛け声を見つけるのも、上達の方法かもしれないな。
【ポイント①】心のなかで掛け声を唱える
マリウス ストロークで大切なのはリズム。いつも同じ自分のリズムでストロークするためには、掛け声を見つけることも必要なんだ。おすすめは『ブーン、ブーン』。大多数の人にマッチすると思うよ。

「ブーン」

「ブーン」
【ポイント②】ひじを開けずにま~るくストロークする
マリウス パッティングストロークは、右手をま~るく振る感覚。だから、ひじを体から離さないように振るんだ。たとえグリーン上にいなくたって、パット練習はできるってことさ。

【ポイント③】ゆっくり振る人はソフトに握る
マリウス 同じリズムで振るには、ストローク中のグリップの強さを変えないこと。スネデカーのように速いリズムならグリップを強く、クレンショーのようにゆっくりならソフトな握りが合う。

クレンショーはソフトに握っていましたよ
後編に続く
週刊GD2019年4月9日号より
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