上級者であるほど、アイアンのライ角に注意を払って調整している人が多いが、ほしや先生は「それ以上にパターのライ角は大事」と説く。調整幅はわずかに“3度”というが、それが入れ頃、外し頃のパットの結果を大きく左右するという。

【通勤GD】
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画像: 【星谷孝幸先生】 自作ロボットや解析装置を使い、日夜パット研究にイソシム科学者。転がりの仕組みを解明し、自らパット数を激減させた ほしや先生オフィシャルサイト

【星谷孝幸先生】
自作ロボットや解析装置を使い、日夜パット研究にイソシム科学者。転がりの仕組みを解明し、自らパット数を激減させた
ほしや先生オフィシャルサイト

アップライトにすると姿勢も変わってしまう

クラブをソールしたときに立ち上がるシャフトの角度のことをライ角と言いますが、この数値が小さければ「フラット」、大きければ「アップライト」と言います。

ことアイアンに関しては地面にあるボールを打つので、ライ角調整には上級者ほど余念がありません。ソールがピタッと設置した状態で当たればそれだけ曲がる確率が減るからです。

もちろんパターにもライ角はあり、多くのパターのそれは70~72度です。しかしある時、本当にそれが正しいのかどうか疑問を持ちました。私の考えではヘッドがいかにストレートに動くか、ということが特に短いパット(3メートル以内)では重要だからです。

理論上、ライ角がアップライトであれば、それだけタテの円弧を使って打てるので、ボールに対して真っすぐの軌道を描きやすいはず。そう考え、さっそく手元にあったライ角72度のパターのライ角を75度に調整してみました。

するといくつかの変化を感じることができました。まず、ボールに近く立てること。計測してみるとおよそ3センチボールに近づくのですが、それだけ縦の円弧で振れてフェースの開閉を抑えられる効果があります。

ライ角を3度立てたら、3センチボールに近づいた

画像: 左)ボールに近づくから縦の振り子に、右)ボールから離れるぶんフェースが開閉

左)ボールに近づくから縦の振り子に、右)ボールから離れるぶんフェースが開閉

近く立つぶん、理想とされる目線の真下にボールがきやすくなるのです。さらに、“姿勢”にも変化が現れました。ショートパットは、より真っすぐヘッドを動かしたいので、クラブをやや吊るように構え、後頭部は地面と平行になるように構えるのが私のスタイル。

ライ角をアップライトにすることで、この姿勢が取りやすくなり、パットの精度がより上がったのです。

顔が地面と正対して、目はボールのほぼ真上。これがパットのいい構え

画像: 顔が地面と正対して、目はボールのほぼ真上。これがパットのいい構え

パターをアップライトにして目線の真下にボールが来るぐらいに近く立てれば、それだけヘッドはストレートに動きやすい。おのずと背中が丸まり、後頭部が水平になる姿勢に(左)。フラットだとボールから遠くなり、フェースの開閉が起きやすい(右)。

長い距離と短い距離で打ち方を変えてみよう

この“プラス3度”のライ角調整は、今回の実験ではフェースの開閉にして0.4度の変化を生じました。これは計算上3メートル先では2.1度のズレを生じます。この誤差をどう見るかは意見が分かれると思いますが、必ずしもパットした球はカップのど真ん中から入るわけではありません。

左右の淵からコロンと入ることも考えれば、一方は入って、一方は蹴られる可能性もある。決して小さな数字ではないと思うのです。

また、ライ角自体がアドレスに影響を与えるので、姿勢が変わればストロークも変化するのが自然。具体的には、ボールに近づくアップライトの方が、小さい構えでひじを曲げた形になりやすいので、真っすぐヘッドを動かしやすくなります。

一方、ライ角がフラットだと、ボールからやや遠くなるので、上体が起こされ、ひじが伸びやすくなります。ストロークとしてもイントウインの軌道が強まるので、狙ったラインに正確に打ち出す確率が落ちる。

ライ角によるフェースの開閉差プラス、ストロークの変化により、実験の数値よりも大きな差をもたらすことが想像できます。このように、ライ角ひとつでより縦の振り子で打てるようになるのですが、この真っすぐヘッドを動かすという感覚も、3メートル程度までのショートパットで重要視すればいいと思います。

画像: ショートパットのお手本にしたいのがニクラス。腰から背中を丸め、後頭部を水平に構え、目の真下にボール。狙ったラインに正確に打ち出せるパッティングスタイル

ショートパットのお手本にしたいのがニクラス。腰から背中を丸め、後頭部を水平に構え、目の真下にボール。狙ったラインに正確に打ち出せるパッティングスタイル

長い距離になれば、振り幅が大きくなり、それによってフェースの開閉は生じます。ですから、10メートルを超えるようなロングパットになれば、真っすぐ動かし続けることは不可能。

ロングパットでは、ランニングアプローチをイメージして、短いパットに比べてやや起きた姿勢で打つ方が距離感が合いやすくなるはずです。最近では幅が40メートルもあるような巨大なグリーンが増えてきています。

そうなれば、1メートルの打ち方と、30メートルの打ち方で変わるほうが自然でしょう。むしろ積極的に打ち方を変えたほうがいいと思います。ショートパットではパターを吊るように“真っすぐ”を意識、ロングパットでは、“アプローチ”をイメージする。

ロングパットだとしても、パターをアップライトに調整したことで打ちにくくなることはありませんので、ご安心を。

【通勤GD/今日のひとこと】アップライトなパターはフェースの開閉が小さくなる

【科学の広場】フェースの向きが1度変わると5メートル先では9センチずれる

下の表はフェースの向きの変化によって、ボールの方向性の乱れをまとめたものです。仮に1度フェースが開けば、5メートル先では約9センチずれる計算。カップの直径が約10センチであることを考えると、フェース面の乱れは少しでも抑えたいものです。

画像: 多くのゴルファーは左右2度前後のフェース面の変化を生じてパットしている。それを考えるとライ角調整によって、そのズレを緩和するのも方法のひとつ

多くのゴルファーは左右2度前後のフェース面の変化を生じてパットしている。それを考えるとライ角調整によって、そのズレを緩和するのも方法のひとつ

【即効ドリル】カップを3分割して狙ってみよう

カップを狙うとき、漠然とカップ全体を狙っていませんか。特にショートパットであれば、カップ全体ではなく、カップをさらに3分割して狙ってみてください。集中力がまし、制度が高まってくるのを実感できるはず。練習グリーンから意識して取り組んでおくといいでしょう。

カップの奥にティを立てるなどしてどこを狙うかを明確にして練習しよう。タッチとラインの読み方がレベルアップし、短いパットを外すケースが減るはずだ。

画像: 狭いところを狙うと精度が高まる

狭いところを狙うと精度が高まる

Illust/Shigehisa Kitatani

月刊GDより

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