中肉中背、筋トレ嫌いの中年男、クォン教授が軽々300ヤード飛ばすのを目の当たりにした吉田洋一郎プロ。その飛ばしの秘密は、筋力ではなく地面の力を利用することだと言うのだが……。

【通勤GD】通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。ワンテーマを3回~6回のシリーズでお届け。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家

地球からもらえる2つの力

吉田 前回のお話では、効率の良いスウィングのためには「外力」が重要ということでした。

クォン そう。筋力などは体の内側の力。それに対して外力は、“地球”からもらうことができる2つの力のことを指す。

吉田  なんか壮大な話になってきましたね。

クォン 1つは重力。人間で言うと、体重がこれにあたる。

吉田  なるほど。体重は地球からもらっている力なんですね。

クォン これは各々の持つ質量に応じて大きさ(重さ)が決まり、体の重心から真下に向かって働く力だ。

吉田  もうひとつの外力は?

クォン グランド・リアクション・フォース。日本語では「地面反力」などと言うようだね。

画像: 体の外側の力=外力には、体に働く重力(体重)と、地面からの反力の2つがある。このうち重力は、人によって常に一定の向き&大きさで働くため、自分で操ることはできない。いっぽう地面反力は、足を踏み込んだ反作用として生じるため、その力の向きや大きさを自分で変えることが可能。それをいかに上手く生み出すかが、効率的なスウィングのカギとなる

体の外側の力=外力には、体に働く重力(体重)と、地面からの反力の2つがある。このうち重力は、人によって常に一定の向き&大きさで働くため、自分で操ることはできない。いっぽう地面反力は、足を踏み込んだ反作用として生じるため、その力の向きや大きさを自分で変えることが可能。それをいかに上手く生み出すかが、効率的なスウィングのカギとなる

画像: 地球からもらえる2つの力

ゴルフでいう地面を踏み込む力

吉田  それはどういう力なのでしょう。

クォン ヒロは、ニュートンの《作用・反作用の法則》は知っているかね?

吉田  物理は苦手で……。

クォン じゃあ、このキャスターつきの椅子に座って正面の壁を強く手で押してみたまえ。

吉田  はい。むんっ! ああ、後ろに下がっていきますうぅぅ~

クォン これが作用・反作用の法則。物体に力を加えたとき、それとまったく同じ大きさで、かつ逆向きの力が同時に働くというもの。

押したぶんだけ返ってくる「作用・反作用の法則」

画像: ある物体に力を加えると、その物体から同じ大きさで、逆向きの力が一直線上で働くという法則。たとえばキャスターつきの椅子に座った状態で、目の前の壁を手で押すと、椅子は後ろに下がっていく。これは手で押した「作用」に対して壁からの「反作用」が働いている証拠

ある物体に力を加えると、その物体から同じ大きさで、逆向きの力が一直線上で働くという法則。たとえばキャスターつきの椅子に座った状態で、目の前の壁を手で押すと、椅子は後ろに下がっていく。これは手で押した「作用」に対して壁からの「反作用」が働いている証拠

吉田  これがスウィングとどういう関係が?

クォン ゴルフのレッスンでは、よく切り返しで地面を踏み込むという表現をするね。

吉田  はい。そうするとよりパワーが生まれます。

クォン なぜパワーが生まれるのですか?

吉田  それは……そのほうがボールに力が伝わるというか、体重が乗るというか……。

クォン でも、物理的に考えて、体重は人にかかる重力だから常に一定で、しかも重心から真下に働く力。クラブヘッドを加速させる力とはあまり関係がない。

吉田  言われてみると、たしかにそうです。でも、地面を踏み込んだほうが、感覚的にはより力を発揮できる気がするんですが……。

クォン 実はその正体が、地面反力なんだ。地面を踏み込むことで、同じだけの力が地面から返ってくる──。

吉田  作用・反作用の法則!

クォン そのとおり。つまりスウィングでは、踏み込んだ反力を利用しているわけだ。

吉田  でも反力ということは、上向きの力ですよね。これもヘッドの加速とは関係がない気が……。

クォン いい質問だね。次回はその仕組みを説明しよう。

ILLUST/Kazuhisa Uragami

週刊GDより

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