ゴルフの大敵は「ケガ」。とくに、熱心に練習しているゴルファーほどケガのリスクは高まる。長く続けてもケガに悩まされることのない“体にやさしい”スウィングとはどんなものなのか。

【通勤GD】通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。ワンテーマを3回~6回のシリーズでお届け。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家女性こそ地面反力

故障しにくいスウィングとは

吉田 タイガー・ウッズが体にやさしいスウィングに変えたことで、見事に復活しました。バイオメカニクスの目的のひとつも、まさにケガをしにくい動きを追求することにあると思いますが、ケガをしやすいスウィングとしにくいスウィングの違いはどこにあるのでしょうか?

クォン これはとても重要な質問だね。ゴルフという本当に楽しいスポーツも、ケガをしてしまったら楽しめなくなってしまう。だから長くゴルフを続けるためには、体にやさしいスウィングを習得することが急務。では体にやさしいスウィングとは何かというと、それは体の弱い部分に過剰な負荷がかかることのないスウィングといえる。

吉田 体の弱い部分とは?

クォン おもに股関節や肩、ひじ、ひざといった「関節」だね。関節まわりの運動に関与する筋肉や腱、軟骨などは、負荷に対する一定の許容範囲を持っている。負荷がその許容範囲を超えてしまったときに、ケガが生じるんだ。

吉田 たとえば大きなトップを作ろうとして、自分の限界を超えてまで肩を回そうとすると、関節まわりのいろんな組織にダメージを与えてしまうというわけですね。

クォン そこで、ケガを防ぐには2つの方法が考えられる。何かわかるかね。

吉田 ストレッチなどで関節の可動域を広げる、とか…。

クォン そう、それがひとつ。目的に合ったトレーニングをすることで、許容範囲を広げることができる。でももっと重要なのは、関節にかかる負荷を減らすための理想的な運動パターンを身につけること。

吉田 具体的には?

クォン 要はひとつの動きに対し、より「たくさんの関節を動員」してあげればいい。

吉田 そうか! 1つの関節で10という大きさの動きを実現しようとすると負担が大きいけど、仮に10の関節を動員すればそれぞれの関節の運動範囲は1で済むということですね。

画像: たくさんの人でかつぐお神輿。一人の負担は少なくなる。少人数でかつぐとケガする場合もある

たくさんの人でかつぐお神輿。一人の負担は少なくなる。少人数でかつぐとケガする場合もある

クォン 今のゴルファーは、下半身を使わずに上半身優位のスウィングをしている人が多いが、それでは必然的に上半身への負担が大きくなってしまう。とくに背骨や腰を痛めやすい人は、下半身を上手く動員することを考えるといいだろう。

10の関節を動員すれば負担を10分の1に分散できる

重い神輿も大人数で担げば1人1人にかかる負担は軽減される。それと同じでものを曲げるときも、関節が1個しかない場合と、関節が10 個ある場合とでは、同じ量だけ曲げるのでも、それぞれの関節にかかる負担は関節が多いほど小さくて済む。

画像: 故障しにくいスウィングとは
画像: 深いトップを作るとき、肩だけを回そうとすると、肩関節にかかる負担は大きくなる。足首やひざ、股関節、手首など、あらゆる関節を動員することで、ケガのリスクを減らすことができる

深いトップを作るとき、肩だけを回そうとすると、肩関節にかかる負担は大きくなる。足首やひざ、股関節、手首など、あらゆる関節を動員することで、ケガのリスクを減らすことができる

ILLUST/Kazuhisa Uragami

週刊GDより

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