自分に合ったグリップを探し求めて、辿り着いたベーシックが「密着感と一体感」と湯原。ここから、自分の特性や打ちたい球筋などを考え、ベストな握り方を見つけていくのだ。次は、実際に球を打つことについて考えてみよう。例えばボールを叩<という表現。これは具体的にどういうものことなのか。

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

湯原 陳清波さんは記憶にないようですが、石井茂プロは、陳さんにスクェアグリップのヒントを与えたとおっしやっていました。台湾から東京倶楽部に来た陳さんは、一時期、陳清水さん(日本プロ3回、日本オープン1回優勝)を頼って川奈で修業していました。そのとき石井さんは陳さんからグリップについて質問されて、スクェアグリップに至った理由を説明したそうです。

GD 陳清波さんといえば元祖スクェアグリップというイメージがありますけど、実は石井プロが元祖だとは、意外ですね。

湯原 当時、アジアではフィリピンのラリー・モンテス(32、33年日本プロ優勝)という強いプロがいたのですが、モンテスがフックグリップだったこともあって、日本を含むアジアのゴルファーたちの間ではフックグリップが主流だったそうです。フックに握ってリストワークを多用して球をさばいていたんです。

GD 強い選手のスウィングが主流になるのは、今も昔も変わりませんね。

湯原 ところが、石井さんは、当時の日本人としては体も大きくて、カもあるから、そうやって打つと左へ曲がつてしまう。そこでいろいろと工夫をして、スクェアグリップに辿り着いたときに、左手親指を伸ばす形になったと言っています。それからはフックの心配がなくなり、思い切って振れるので、飛んで曲がらなくなったそうです。 ただし、私は、ロングサムと曲がらなくなったこととの因果関係はないと考えています。石井さんにとって、そのほうがしっくりする、というだけの理由でしょうね。

GD 石井プロはポールを叩きたかったけれど、フックグリップでリストを使って叩くと曲がってしまうため、グリップを変えることで解決した、と言えますね。でもアベレージクラスのアマチュアは、そもそも“叩く”という感覚がなかなか体感できません。どうすれば叩けるようになるんでしょうか?

上けて、下ろす軌道が同じだとボールは強く叩けない

湯原 叩くとは「強く振る」とか、「速く振る」ということです。そのためには、シャフトをしならせて使うことを覚えなければなりません。ところが、他人からゴルフを教わったり、レッスン書を読んだりする過程で、誤った情報を与えられてしまうのが、叩く感覚を体感できない大きな要因になっているように思えるのです。

GD シャフトをしならせる動きを妨げる情報がインプットされてしまっているということですか?

湯原 ええ。例えば、私がヘッドの通り道について、「ダウンスウィングでは、ヘッドはテークバックのときよりも体の近くを通る」と説明すると、「ヘッドはテークバックと同じ軌道で下りてくるんじゃないんですか?」と質問する人が結構いるんです。

画像: 上けて、下ろす軌道が同じだとボールは強く叩けない

GD 「手首を使わず、体の回転で打つ」という教えを忠実に守れば、確かにヘッドはテークバックで上がっていった軌道をなぞるように下りてくることになりますね。

湯原 でも、それではシャフトをしならせることはできないのでボールを叩けません。ダウンスウィングが始まった途端に手首のコックが解けて、タメがまったく作れなくなってしまうからです。最近のクラブは、そういうスウィングでもボールを飛ばせるように進化しています。 でも、それではクラブパフォーマンスを十分に発揮しているとは言えません。

グリップエンドから下に落とせ

GD 切り返しからダウンスウィングがどんな動きになれば叩けるようになるのですか?

湯原 私はよく、「グリップエンドのほうから下へ落としましょう」とい、表現をします。感覚的に言い換えれば、グリップエンドを下に向かって押すという感じです。引くではダメなんです。それができると、腕とクラブに角度ができて、タメが作れます。真下へ1回落として、ビューンと回転するんです。

画像: ボールを叩くためには「グリップエンドを下に向かって押せ」と湯原。ただし「押す」という言葉のイメージに引っ張られるとグリップに力が入りすぎる恐れがあるので、「クラブにかかる重力に任せて地面に落とす」ような感覚で下ろすとといい。クラブが暴れない程度に支えることも大切だ

ボールを叩くためには「グリップエンドを下に向かって押せ」と湯原。ただし「押す」という言葉のイメージに引っ張られるとグリップに力が入りすぎる恐れがあるので、「クラブにかかる重力に任せて地面に落とす」ような感覚で下ろすとといい。クラブが暴れない程度に支えることも大切だ

GD いわゆるシャフトが立つという状態を作るということですね。

湯原 そう。真正面から見たとき、シャフトが地面に対して鋭角気味の角度で下りる形です。

GD しかし、グリップエンドを下に落とすところからダウンスウィングを始めるというのは、何だかスウィングプレーンから外れそうで、ちよっと怖い気もします。

湯原 飛球線後方から見たら、シャフトはスウィングプレーンに沿って斜めに下りて来ているので、安心してください。ゴルフクラブの動きの特殊なところで、そこをちゃんと理解しないと、シャフトをしならせるスウィングは体感できないでしょう。

GD ダウンスウィングで腕とクラブに角度を作る。つまりタメを作るというのは、相当リストを柔らかく使わないとできないような気もしますが……。

湯原 グリップを強く握っていると、筋肉が縮まってしまうから、そういう動きができなくなってしまうんです。

GD だからよ小鳥を逃がさないぐらいの力で握れと言うんですね。

湯原 グリッププレッシャーについては諸説あるし、レッスンではいろいろな表現をしていますが、小鳥云々という表現も、そうすることが目的になってしまっている気がします。なぜ、そう握るのか。筋肉をリラックスさせておくために、ということを理解しておかなければなりません。

GD 確かにグリッププレッシャーには諸説ありますね。「左手の小指、薬指、中指はしっかり握れ」とか、「クラブを落とさない限度でゆる<握れ」とか。

湯原 「しっかり」とか「ゆる<」とか表現していますけど、その受け取り方は、人によって違うし、私からすれば、その「しつかり」や「ゆる<」が、どうもグリップを作るときの目的になってしまつているような感じもあるんです。前も言いましたけど、要は、手とグリップを密着させることが絶対に大切なことなんです。グリップと指が密着してさえいれば、余計な力を入れなくてもクラブはしつかり持てます。この「しつかり」というのは、クラブが暴れない状態で支えられるということです。

GD あくまでも、タメを作るということを前提に、握る強さを考えなければならないということですね。

湯原 与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、何のためにそうするのか考えなければなりません。例えば、左サイドリード、腰を切る、頭を動かすな…とかを、そのままやろうとすると、正しい動きができなくなってしまうことが多いのです。

GD いわゆる定説に落とし穴が潜んでいるんですか! 次回は、その辺を聞かせてください。

週刊GD2013年より

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