足首は体とスウィングの“土台”
ここ数年、ゴルフの飛距離アップに影響を及ぼすのは“肩甲骨”という説が定着している。ところが、当のゴルフ界から異論を唱える人が出てきた。千葉県内でアマチュアにレッスンをしているパーシモン加藤プロである。
パーシモン加藤 スタート前に足首ストレッチを10分ほどやるのですが、大半の人が、普段より20ヤード前後、飛距離が伸び、ときには飛びすぎて困るという苦情も出るほどです。
その足首ストレッチを加藤プロの生徒さんに指導しているのが「KAORI式フィットネス」の考案者・KAORIさんだ。彼女の本来の仕事は、骨盤底筋を整えて体幹を鍛え、股関節痛、腰痛、肩こりの改善などを目的にレッスンしているのだが、たまたまゴルフの飛距離アップに効果があることがわかり、加藤プロの生徒さんにも指導しているのだという。
KAORI 足は、家でいうと“土台”です。そして足首から先には28個の骨があり、それに付随する筋肉と複雑に絡み合っています。だから、足首から下の関節を柔らかくして筋肉の働きを整えてやると土台が安定し、クラブを振る速さもスウィング軌道も向上するようです。その結果、上体の力みが抜け、スウィング姿勢もよくなってさらにヘッドスピードが上がり、飛距離アップに効果があると考えられます。
足首ストレッチでスウィングがよくなる理由
【メリット1】飛距離アップ
足首ストレッチによって、切り返しでの右足の蹴りが強まる。インパクトでは上体を受け止める左足の力が強くなる。結果、左の壁ができてヘッドスピードがアップ、飛距離が伸びる
【メリット2】傾斜地に強くなる
足首と足裏のストレッチにより、足裏の接地性がよくなる。苦手な人が多い傾斜地からのショットでも、下半身が安定することで軌道のブレを防ぎ、ミート率を高められる
【メリット3】疲れにくくなる
ゴルフは「歩くスポーツ」。足首ストレッチにより、普段使っていない足の筋肉が目覚めて機能的に動くようになるため、足が疲れにくくなり、上がり3ホールにも強くなる
足首から下は「骨」の密集地帯
KAORI 足の骨はくるぶしから下に28個あります。両足だと56個。全身の骨の数206個の約4分の1が集まる足は骨の密集地帯で、ふだんは狭い靴の中に閉じ込められ、固まっています。だからストレッチで自在に動けるように調整する必要があるのです。
足首ストレッチ STEP1~3
今回、KAORIさんの指導を受けて足首ストレッチに挑戦してもらったのは、ゴルフダイジェストのユニットGOLULUの中里さや香。
KAORI STEP1~3のストレッチは短時間でできるので、毎日、継続して行いましょう。STEP1であれば、ラウンド前に、必ず各エクササイズを1項目につき、1セット×5~10回を行うのが効果的です。
【STEP1】 飛距離アップの足首エクササイズ
①足の指で手の指をつかむ
足指の間に手の指を入れ、足の指に力を入れて手の指を強くつかむ。
②前後に伸ばす
足指の間に入れた手の指を使って、足の指先を前後に伸ばす。
③内・外に足首を回す
反対の手で足首を固定し、足首を内・外にぐるぐる回す。
④これだけ変わる
くっついていた両足の指の間が、10分のストレッチで完璧に開き、自在に開閉するまでに。
【STEP2】 “和式トイレ”エクササイズ
①タオルを挟んで尻を落として座る
両足を拳1個分開き、タオルを両ひざに挟んでしゃがみこむ。かかとは上げない。
②落とさずに立つ
その状態からお尻を上げ前屈の姿勢へ。中里は脚が硬く、ひざが伸びきらない。
③繰り返せば柔軟性UP
KAORI先生の前屈。足首ストレッチを毎日10分繰り返すとこのようになる。
【STEP3】 効果をチェックする指別ストレッチ
①親指立ち
足裏全体を付けた状態で親指だけ立てる。最初は立たなかった中里もこの通り。
②親指以外
今度は親指以外の4本の指を立てる。地面を蹴るのは親指の力。それが強くなる。
③1本ずつ
小指から1本ずつ順に動かす。神経伝達能力が飛躍的に向上する。
中里 ステップ1~3を行うと立ちやすくなり、立ったときにすごく安定感を感じるようになりました。足裏全体でピタッと立っているイメージです。
ゴルル・中里のビフォー&アフター
中里 もともとインパクトからフォローにかけて左足が支えきれず、つま先が開いてしまう癖があったのですが、ストレッチ後は左足つま先に力が入り、しっかりクラブを振り抜けて、ヘッドスピードも上がったような気がします。
KAORI 足首から下を柔らかくすると、もっともっとヘッドスピードが出るようになりますよ。
実際、肩甲骨の可動域を広げるのは容易ではないが、足首なら1日10分、テレビを見ながらでもで
きる。それで飛距離が10ヤード以上もアップするなら、やらない選択肢はないはずだ。
TEXT/Kenji Takahashi PHOTO/Yasuo Masuda
週刊GD7月16日号より