ゴルフ場メシ向上委員会は「高くて」「マズい」と何かと不評の多いゴルフ場の「味改革」に役立つヒントを探しながら、誰もが食べて旨いと感じる味覚の標準値を探ります。「旨いの基準」は本家本元、本流の味を提供し続ける伝統店、人気店のメニューを考察し、多くの人に支持される味の秘密に迫るものです
コーヒーブームの「第1の波」は、なんと100年以上前
![画像: 2015年「第3の波」では豆の産地を重視し、ハンドドリップで淹れるスタイルが主流となった](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/69723d24c2c055833b57478d770875e6175b3ac5_xlarge.jpg)
2015年「第3の波」では豆の産地を重視し、ハンドドリップで淹れるスタイルが主流となった
端的に説明すると、「第1の波」とは、戦後の高度成長期に訪れた最初のコーヒーブーム。1900年代初頭のアメリカは大量生産・大量消費時代の真っ只中。街には喫茶店が急増し、家庭でインスタントコーヒーが飲まれるようになった時代である。この波が日本に訪れたのは高度成長期、日本で缶コーヒーが発明された時代だ。当時、あまり豆の品質が問われることはなかったが、70年代に“シアトル系”と呼ばれるコーヒーチェーンが台頭したことで「深煎り・高品質豆」のコーヒーが全米に広がることになる。“量より質”を求める「第2の波」が日本を席巻したのは、おおよそ2000年頃である。
この頃からコーヒー豆の品質に対する意識が高まりを見せ、「豆からカップまで」という理念のもと、豆の違いや淹れ方などにこだわった“スペシャルティコーヒー”という概念が産声をあげ、世界のコーヒー好きたちは、次なる波に飲み込まれることになる。
2015年、日本に“ブルーボトルコーヒー”が上陸し、話題を集めたことを記憶している人も多いだろう。アメリカでも「第3の波」の時代では、豆の産地を重視し、その豆に合わせた焙煎を経て、ペーパードリップする淹れ方を取り入れるようになった。
そんな中、今回紹介するのは、ハンドドリップ研究家である栗原吉夫さんが淹れる“クールコーヒー”。その味を知るべく、店を訪れた。
スッと喉を通った後に、豆の旨みと香りが広がる
![画像: ドリッパーから直接、氷の上へ落としていく](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/4eabb1f0bbcd362415fb69d77719ee8f814db5b7_xlarge.jpg)
ドリッパーから直接、氷の上へ落としていく
「クールコーヒーは、コーヒー豆の風味特性、ようするにキャラクターを最も味わいやすい提供の方法です。違いは主に口に含んだ時に、口内から花へ抜ける香りと酸味に現れますが、その両者が最も際立つのがこの淹れ方なんです」
ドリッパーから直接、氷の上へ落としながら、栗原さんは言う。ちなみに豆の特性を最大限に引き出すためにベストな時間は2分40秒ほど。
![画像1: スッと喉を通った後に、豆の旨みと香りが広がる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/41e2a117938b89762fe1eada2a867b3460d7deea_xlarge.jpg)
「ハンドドリップなら、苦みや渋みといった“コーヒーらしさ”を抑え、風味特性を際立たせることができるのです。飲んでいただくと分かると思いますが、クリーンで雑味のない味で、ブラックが苦手な方にも喜んでいただいています」
豆の個性を引き出す3工程
![画像: グラスにたっぷりの氷と水を少量](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/ee2e082eaab2291a76c0c5dd543b49bfdae16624_xlarge.jpg)
グラスにたっぷりの氷と水を少量
![画像: ムラなくそっと少しずつ抽出](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/11b644dcd1bd56692394dfecedd7becc5a514865_xlarge.jpg)
ムラなくそっと少しずつ抽出
![画像: 冷水で好みの濃さに調整](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/4c810a5ae4f8296e0182cff392ef60334c5b4d2c_xlarge.jpg)
冷水で好みの濃さに調整
ガムシロップを入れ、ミルクをたっぷり入れるのが、一般的なアイスコーヒーのイメージだろう。だが、これではコーヒー豆の本当の特性をスポイルしてしまう。20年近く研究を続ける中で、栗原さんは“日本料理の真髄”に思いが至ったと言う。
「注湯をコントロールして抽出するハンドドリップは、日本特有の淹れ方で、世界的に類を見ません。雑味を除き、旨みだけを抽出する。これって日本料理の出汁の取り方に通じるものなんですよ」
骨や肉を煮出し、すべてのエキスを水分へ移す西洋のスープに対し、日本の出汁は旨みだけを取り出す。澄んだ出汁の旨みに親しんでいる日本人の舌だからこそ、雑味のないクールコーヒーの味わいを理解できる、ということだ。
3分ほど経過し、「カラン」という氷の音とともに喉を通すと、澄み切った“コーヒー豆の一番出汁”を感じる。世界が待ちわびる“新たな潮流”が間近に迫ってきていることをはっきりと感じた。
![画像2: スッと喉を通った後に、豆の旨みと香りが広がる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/8601f44ba1d1637977f9cddb4c3f016ecddf7624_xlarge.jpg)
クールコーヒーにピッタリ
合わせて頼みたい名店のガトーショコラ
![画像: クールコーヒーにピッタリ 合わせて頼みたい名店のガトーショコラ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/07/20/71b5c1f9ddff699dc50156781300baa80145a0a4_xlarge.jpg)
コーヒー以外の唯一のメニューは、店主が知り合いということで、特別に卸してもらっている行列店のガトーショコラ。ビターな甘みと雑味のないコーヒーの組み合わせは病みつきになる
「隠房」
豊島園駅から徒歩約5分
ペーパードリップ教室も好評
神田小川町から現店舗へ移転した2001年以来、店舗営業のかたわら行うスクールには日夜、熱心な生徒が集まる。
●東京都練馬区練馬4-20-3
●03-6914-7248
●営12:00〜19:00
●火曜定休
月刊GD2019年9月号より