前回第12話のお話
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
アイアンとドライバーの打ち方の違い
GD プロの場合、ドライバーでもアイアンでもスウィングは同じだという人が大半ですけど、湯原プロは、どうなんですか?
湯原 アイアンは、基本的に地面を叩くクラブですから、入射角が鋭角になります。それに対して、ドライバーをはじめティアップして打つウッド系のクラブは、シャフトが長かったり、スタンスが広くなったりしますから、アイアンより入射角が浅くなります。
GD そうすると、やはり打ち方も違うということですか?
湯原 いや、同じスウィングをしているけれど、そのクラブの機能に合った動きが加味されていると言ったほうがいいでしょう。
GD 同じスウィングだけれど、ドライバーのほうが何かプラスアルファがあると。
ドライバーショット
湯原 ゴルフは基本的に距離を正確に打ち分けるゲームだと思っています。だからスウィングは、弾道の高さとか、前後の距離感などで評価されるべきものです。しかし私たちプロでも、ドライバーに関しては、何ヤード先のあそこへ打とうというよりも、1ヤードでも2ヤードでもより遠くへ飛ばしたい傾向があるんです。
GD アイアンの飛びすぎはダメだけれど、ドライバーの飛びすぎはOKだと。そういう部分ではプロもアマチュアも意識の差はあまりないんですね(笑)。
アイアンショット
湯原 本来はドライバーも狙った距離を打つべきだと思いますけどね。でも実際は、少しでも飛ばそうとしてしまっているわけで。そういう意味で、スウィングの基本となるクラブはアイアンだと私は考えています。そして、アイアンを正しく操るためには、アイアンの機能がどうなっているかを知る必要があると考えています。
GD アイアンの機能というと?
ヘッドの違いで重心位置が変わる
湯原 もっとも大きな特徴は、番手ごとに異なるロフトがついていることです。
GD 短いクラブほどロフトは寝ていて、長いものほどロフトは立っていますね。
湯原 違いはそれだけではありません。ロフトの違いで、ヘッドの重心位置が違ってくることも理解しなければなりません。
GD 番手ごとに重心位置が変わる、と……。具体的には、たとえば重心距離のことでしょうか?!
湯原 ゴルフクラブは野球のバットやテニスのラケットとは違って、握っている部分の延長線上に打点がありませんよね。シャフトの中心の延長線上からトゥ方向への重心位置までの長さが重心距離です。私はその距離を、すべてのクラブで32ミリ前後に揃えていますが…。ただし、これから私が話そうとしているのは、重心の距離ではなくて位置です。
湯原 ロングアイアンとSWを比べてみるとよくわかります。ロフトが立っているクラブほど、フェース面に近い位置に重心がありますけど、ロフトが寝ているSWは、フェースが後ろにあるぶんだけ重心位置も後ろ、つまりターゲットと反対方向にフローしていくのです。
クラブが軽く感じる=いいバランス
GD あっ、なるほど。
湯原 グリップエンドを指先でつまんで、ダラ~ンとクラブを垂らしてみるとよくわかりますよ。フェースの向きをアドレスと同じょうにターゲットに向けて垂らしてみると、ロングアイアンのシャフトはほぼ垂直に近い状態になりますが、SWのシャフトはヘッド側が少しターゲット方向へ傾いているでしょ。
湯原 ほんのわずかな違いですが、その違いが、100ヤード、150ヤードと距離が長くなればなるほど、大きな差になってくるのです。
湯原 ところが、多くの人がその違いに気がつかずに、長いクラブも短いクラブも、全部シャフトの突き出ているところ、私のクラブで言えば、シャフトより32ミリ先のところで打とうとしているのです。それだけでは、クラブの芯でインパクトはできません。
GD では、番手ごとに打ち方を変えなくてはならないのですか?
湯原 打ち方ではなくて、構え方を重心によって微妙に変化させる必要があるのです゜もしスタンスが同じなら、短いクラブほど右(ターゲットと反対方向)に重心があるから、ボールが右足寄りにならないと、インパクトの位置がズレてしまうんです。
GD 長いクラブも短いクラブも、同じスタンス幅ということはないですから、それは難しいですね。
湯原 だからこそ、重心位置を感じ取る感覚を磨く必要があるんです。
GD その差は、本当にわずかですよね。
湯原 しかし、重心で打とうと構えれば、自然と短いクラブほどボールが右になるか、あるいはハンドファーストの形になるはずですよ。ただし、あまり大げさに考える必要はありません。その差は、シャフトを垂らしてみたときの差ぐらいでしかないのですから。
GD ヘッドの重心位置がヘッドの芯、つまりスウィートスポットと考えていいのでしょうか?
湯原 そのとおりです。アイアンは地面の上のボールを叩くクラブと言いましたが、重心位置を感じ取ることで、クラブをより上から入れやすくなります。
軽く感じるところを探せ
GD どうすれば、クラブの重心を感じ取れるようになるんですか?
湯原 まずはクラブのバランスを感じるところから始めるといいでしょう。モノのバランスって、いちばんバランスが取れているときが、もっとも軽く感じられますよね。片手でクラブを持って、テークバックの途中で止めてみてください。シャフトがちょっと前に倒れても、ちょっと後ろに倒れても重く感じるはずです。
湯原 そういうふうに、クラブが重くなってしまうと、何か余分なことをしないと修正できなくなってしまいます。手のひらの上に垂直にクラブが立っようにバランスを取っても、どこにヘッドの重心があるかわかります。
GD バックスウィングでシャフトが寝た状態になるのもバランスが悪いと言えますね。
クラブが軽く感じる向き、傾き。これがバランスのいいスウィング
湯原 クラブがもっとも軽く感じるところが、もっともバランスが取れているところです。これは、軽いクラブがいいという意味ではありませんよ。私は重いクラブを好んで使っていますが、その重さのなかで、もっとも軽く感じて効率のよいバランスをスウィングに求めています。
GD 重心位置を感じられれば、バランスよく、効率的に力が使えるということですね。
湯原 そこにアイアンでもシャフトのしなりという要素が入ってきます。シャフトは飛球線方向だけでなく、トウ側にもしなります。トゥダウンという現象ですね。だから、アドレスのときにトウダウンするぶんを考慮して、ややトウが浮くように構えるのです。
湯原 これは、ヘッドの重心がシャフトの延長線上より遠くにあるから起きる現象です。いずれにしても、そうやってクラブの重心位置が感じられるようになれば、スウィー卜スポットでヒットすることがよりやさしく感じられるし、フェースがどこを向いているのかもわかるようになるのです。
GD 芯でボールを打つには、重心を感じながら振ることが大切なんですね。
湯原 重心を感じることは、クラブを効率よくコントロールする方法と言ってもいいでしょうね。
週刊GD2013年より
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