前回第13話のお話
重心アングル知ってますか?
GD クラブの重心位置、つまり芯を意識することで、効率よくボールが打てるということでしたが、ドライバーとかフェアウェイウッド系のクラブもやはり同じですか?
湯原 もちろん同じです。しかし、近年のドライバーは大型化したぶん、重心深度が深くなると同時に重心アングルも変わってくるため、アイアンとはちょっと違った認識が必要になってきます。
GD 大型化したことで、重心位置などヘッド内部の構造をいろいろと変化させることができ、それをクラブ設計家は設計自由度が高くなったといっていますね。
湯原 そうです。ヘッドが大きくなると、どうしてもインパクトでフェースが開いてしまう。だから初期の大型ヘッドはフェースのアングルを左に向けて設計(いわゆるフックフェース)されていました。
湯原 アベレージクラスの人にはそれなりに効果があったのですが、プロや上級者にとっては、上手く打つことができたとしても、左向きのフェースに違和感があってなかなか馴染めませんでした。やはりクラブに対するスクェア感は大切ですからね。
GD フェースが左に向いているのにボールが真っすぐ飛び出す。アイアンと同じように目標方向にフェースをスクェアに合わせると、右に飛んでしまう。それが許せなかったと。
湯原 それで、メーカーはそういう違和感を消すために、できるだけスクェアに見える仕上げをするようになったのです。しかし、そのままでは右に飛び出す難点は解消されないので、フェースアングルではなく、重心アングルを変化させ、多様なゴルファーに対応できるようにしたのです。
GD 重心アングルとは、クラブのシャフトを指先に乗せてバランスを取ったときに、フェース面が垂直方向に対して、どれぐらい傾くかですよね。
湯原 そうです。重心位置がフェース面から遠いもの、つまり重心深度が深いものほど重心アングルが大きくなる。バランスを取ったとき、フェース面は斜め上を向きます。逆に重心深度が浅いとフェース面は垂直に近くなります。
GD それである程度、ヘッドの芯がどこにあるかがわかると。我々アベレージクラスは、どうもフェース面の真ん中をスウィートスポットだと考えがちですが、やはり、どこに芯があるか意識したほうがいいのでしょうか。
湯原 シャフトを含めた重心の位置を感じようとしながらスウィングしたほうが振りやすいし、クラブの機能を正しく使えるはずです。
クラブが軽く感じるところ。それが効率のいいスウィング軌道
湯原 クラブをいかに軽く使うかを考えれば、結果的に効率のいいスウィングになるはずですから。
GD 当然、フェアウエイウッドもユーティリティも同じですよね。
湯原 本来クラブというものは、パターも含めて、そういう使い方をするべきだと私は考えています。私の場合、ドライバーもできるだけアイアンと同じ感覚で使えるように、重心アングルが小さい、つまり重心深度の浅い構造のクラブをメーカーに作ってもらっています。
GD そんなスペックでは我々アベレージクラスでは、ボールをつかまえるのは難しそうですね。
湯原 そうかもしれません。ある程度フェースをターンさせて使う必要がありますからね。
GD そういう意味でも、自分が使っているクラブの重心位置を感じることは大切なんですね。
湯原 パーシモンヘッドの時代では考えられないことですが、ドラィバーのヘッドが大きくなると、シャフトを長くしても視覚的な安心感があるとか、有用性はあるわけです。そういうなかで、フェースアングルをどうするか、重心アングルをどうするか、いろいろ妥協点を探らなければなりません。
湯原 フェースが左を向いていても気にならない人もいるでしょうし、私のように、見た目と出球が一致しないと嫌だという人もいる。いずれにしても、使っているクラブがどんな機能を持っているか、知っておく必要はありますね。
14本のフィーリングは同一線上にあるべき
GD アベレージゴルファーが湯原プロが使っているような重心アングルの小さなドライバーで真っすぐ飛ばそうと努力して、何とか打ちこなすことができたとしても、今度はアイアンが引っかかって困るということも考えられますね。
湯原 ドライバーとアイアン、あるいはフェアウェイウッドとユーティリティとで、それぞれ別のスウィングをしなければならないとすると、とりわけ練習量が少ないアマチュアはゴルフが難しくなってしまいますから、できる限り同じ感覚で振れるクラブセットにしたほうがいいですね。
GD どんなクラブでも、とりあえず打ちこなすことができるプロでも、いやプロだからこそと言うべきかもしれませんけど、クラブセットを揃えるのにものすごく神経を使っていますよね。
湯原 どんなクラブであれ、1本1本の特性を生かした打ち方はもちろんできます。しかし、もしそういうバラバラのセッティングのクラブを使ってプレーしたら、クラブが主体のゴルフになってしまうんです。
GD あくまでも、自分が主体のゴルフでなければ。
湯原 もちろん。だから、私はアイアンを基準として可能な限り、その延長線上のフィーリングで使えるドライバーやフェアウエイウッドを選んでいるわけです。
GD フェースアングルとか重心アングルが大きいドライバーで、真っすぐなボールを打てたとしても、そのスウィングで普通に作られたアイアンを打つと右にしか行かないということも考えられますね。
湯原 アウト・サイド・インに振っても真っすぐ飛ぶドライバーですから、同じスウィングでノーマル仕様のアイアンを打てば、右に行くのは当然です。アイアンもそのスウィングで真っすぐ打ちたいのなら、ドライバーと同じ機能を備えたアイアンを探さなければならないでしょうね。
GD そうすると、湯原プロのように、アイアンを基準にクラブセットを考えていった方が合理的な気がしますね。
湯原 アイアンは使用頻度が高いクラブですから、そう考えた方が合理的だと思います。パーシモンのドライバーはアマチュアには難しいクラブでしたが、今の大型ヘッドのドライバーなら、よりやさしくなっていますから、アイアンがちゃんと打てるなら、使いこなすのは、そう難しいことではなりません。
湯原 バラバラ仕様のクラブを同じように打とうとする方が、余分なことをしなければならないわけで、ずっと難しいと思います。
GD シニアの賞金王になった後に亡くなった天野勝プロ(92年シニア賞金王、06年に63歳で没)は、ゴルフを始めた時に2番アイアン1本で練習していたといっていました。そのおかげでアイアンはすべて打てるようになったと。やはり難しいクラブを打ちこなせれば、他の番手も打てるようになるんですか?
湯原 中部(銀次郎)さん流ですね。中部さんも「これが打てれば全部打てる」と2番アイアン1本を持って練習場に来ていましたよ。確かにロフトが立って、長さもあるクラブですから難しいんですけど、私はせっかく14本あるんだから、すべてをまんべんなく練習したほうがいいと思います。
GD そうすれば、セットの中で違和感のあるクラブも見つけられる利点もありそうですね。
湯原 そうですね。
週刊GD2013年より
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