【解説】今野一哉コーチ
こんのかずや/36歳・千葉出身。ツアー経験後、アマチュアを教えることに喜びと自分の成長を感じレッスンに専念。生徒多数。ギアにも精通
「断捨離」とは、ただモノを捨てることではなく、本当に必要なモノを見つめ直すこと。
今野 取捨選択の大切さと言い換えてもいい。するとゴルフがシンプルになっていく。ゴルフでは、情報はあればあってもよいのですが、それを積み重ねたものを“上手く”使うため、常に断捨離が必要。
今野 また、大事だから少し時間をかける時と、サッと終わらせていいという時、その取捨選択も大事。これは、自分のリズムをよくし、ゲーム運びを有利にすることでもあるんです。
実は、旬の渋野日向子プロのプレーにも、“シンプルゴルフ”の強さがあると言う。
シブコの強さをつくる“シンプルゴルフ”
●プレー・決断が早い
考えこむ時間が短い。すると、余計な情報が入らず迷いもなくなる。前のプレーも引きずらなくて済むので「バウンスバック」も起こりやすい
●笑顔でブレない心を作る
笑顔で、いつもポジティブな思考に。マイナス思考を捨てられれば、余計に考えなくなり、プレー中の集中力にもつながる
●安定したインパクト
ブレない体幹や下半身の強さから生まれる。ソフトボール経験も生きている。ブレない技術があれば、スウィングにも試合運びにも迷いが生じにくい
●自分のプレースタイルを曲げない
自分が勝負をかけられるモノがあれば強くいられるし、マネジメントもシンプルに。今は弱点を捨てて試合に臨んでいる。オフなどには弱点克服にも取り組むはず
今野 彼女は決断やプレーが早いですし、自分の強みを生かしたゲームをする。余計な情報を入れず、取捨選択ができているから、リズムがよく、技術やマネジメントに迷いがないんです。
青木翔コーチが全英女子オープンの勝因をこう分析していた。
「海外だから、メジャーだからと何かを変えることは一切しなかった。ありのまま、シンプルに考えてゴルフをした。彼女の持ち味であるドライバーショットでフェアウェイに置き、ピンを狙う。これ
が彼女のゴルフです」(青木)
情報の取捨選択は簡単ではないと今野プロ。
今野 プロにも情報が入りすぎて上手くいかないことがある。渋野選手だってNECの最後のパッティングで手が震えたと言っていました。では、具体的な断捨離の方法を考えてみましょう。
女子プロが実践する“断捨離ゴルフ”
福田真未
今季は調子が今ひとつで、トップの位置はここ、ダウンはこうしたいなどスウィングを考えすぎて。どこか1つがズレると全部が気になりわからなくなる。だから考えることを止めました。最初はボールがどこに飛ぶかわからず怖かったけど、結果がよくなって調子も上向きに。
臼井麗華
反省は大事だけれど、自分でどうにもならないことまで反省していた。たとえばフックラインで自分の思い通りに打てたのに入らなかった場合、どうして入らなかったのかと……。この考えを止めたら、気持ちがスゴくラクになりました。
三ヶ島かな
気持ちをシンプルにするために、服を捨てたり、片づけをしたり、身の回りの整理をした。調子が悪いときは、そういうことに気が回らなくなり、部屋も汚くなっていく。整理することで気持ちがすっきりして充実。ゴルフにもつながると思う。
増えすぎた情報を一度捨てましょう
今野 練習での「断捨離」、ラウンドでの「断捨離」を考えてみましょう。まず、普段の練習から、スウィングの形を切り離し、感覚的にこなしていく練習をしてみる。たとえば、バドミントンで狙いを定めて反射的に打ってみる。
【練習での断捨離】 感覚的にこなせる練習をする
ゴルフで一番大事なのは、ターゲットを「狙う」こと。スウィングの形を気にするのではなく、ターゲットに対して集中し、「狙う」ことを感覚的にこなしていく練習をする。
❶バドミントンで左右を狙って打つ。そのときの体の動きを覚えておく
今野 そのときの体の動きをそのままゴルフにも使います。また、パッとターゲットを決めて、100Yをこんな弾道で、とイメージ優先で打つような練習もよいと思います。
❷クラブを持ち、❶と同じ感覚で左右を狙ってステップ打ちをする
今野 どうしてもスウィング中に何かを意識したいのなら、1つに絞り、ブレない体幹を作るため「支点」としてのお腹の奥のほうを意識してみましょう。
今野 振り子の動きができれば再現性は上がります。だから、支点になる部分を作る。ここが揺れると軌道もブレるしスピードも上がりません。支点は①お腹の奥のほう(丹田)②頸椎③左肩、のどこかでもいいですが、①がわかりやすいと思います。
【ラウンドでの断捨離】 4つの無駄を考える
今野 ラウンド中は、余計な情報を捨てる訓練を。怖くてもミスしてもトライしてみましょう。そうしているうちに、自分に本当に必要な間合いやクラブ、マネジメントや練習方法まで見えてきますよ。
①風や距離や番手の判断を素早く、ボールの位置に行ったら素振りもせず構えてサッと打つ。できる限り間合いをなくすと、自分の雑な部分が明らかになる。また、自分に適切なリズムや間合いがつかめる
②パターともう1本で回ってみる。1本で200Yも10Yも打つ必要が出てくると、直感が磨かれ一度理屈は壊れる。次に3本増やしてみると、高さがほしいのか距離がほしいのかなど、自分の
求めるゴルフが見えてくる
③「こういう状況だから、この番手でこういうボールを打つ」とイメージを口に出してみる。スウィングの形への意識が消える。日々の練習でも取り入れるとよい
④「●●したらどうしよう」「ミスしたらダメだ…… 」などの否定的思考はすべて余計な情報。これを捨てるクセをつけたい。できない人は、マイナスに考えたことを「課題ができたから、よし」と考えてもよい
今野 アマチュアは、根拠のない形や練習にとらわれていることが多いんです。アドレスはこう、トップはこの形などとひとつずつ頑なに守っていたり。理由を聞くと「カッコいいから」なんて。中身がないデザインになっているんです。
今野 スウィング中にチェック項目が10個もあると、そこで脳がパンクして逆に体の動きが悪くなります。たとえ、いい弾道が出ても自分が求める形ができていないと悩んだり、形ができても求める弾道になっていなかったり…。そのうち何が正しいのかわからなくなり、体が動かなくなってしまう。
今野 ここまで説明したように、一度全部捨ててみると、答えがみえてくるものですよ。
PHOTO/Yasuo Masuda、Shinji Osawa
週刊GD2019年9月10日号より
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