前回、第15話のお話
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
飛びすぎを抑えるための二―アクション
GD 帝王と呼ばれたジャック・ニクラスが両ひざを飛球線方向にスライドさせるニーアクション。これはコントロールのためで、決して飛距離アップのためではなかった、というのが前回の話でした。もう少し具体的にニーアクションについて教えてください。
湯原 ニクラスはラフからフライヤーをさせたくなかったり、PWで150ヤードも飛んでしまうような飛びすぎを警戒してニーアクションを使っていたんです。
湯原 まだ“オハイオの怪童”と呼ばれていた13歳ごろのニクラスの写真を見たことがあって、ヒールアップはその後と変わりませんが、ダウンからインパクトでガーンと跳び上がってひざをピーンと伸ばして打っていました。
GD やっぱりニクラスでも小さいころは自然とジャンプアップしていたんですね。
湯原 徐々に飛びをコントロールする必要に迫られてニーアクションを使うようになったのだと思います。
J・ニクラス(当時26歳)のひざの動きが抑えられている連続写真
GD 飛ばしたいときは、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を使って跳び上がるぐらいの勢いでジャンプする。逆に飛ばしたくないアプローチやパットなどのときは、足を使わないということですか?
湯原 いや、アプローチでも足は使いますよ。使い方が違うんです。よく転がすアプローチを“足を使う”と言いますが、本当に文字どおり足を使うんです。ダウンスウィングでひざを右から左ヘスーッとスライドしてやれば、ヘッドの入射角が浅くなって、スピン量も安定するから、転がりのいいアプローチになります。
湯原 ニクラスの二ーアクションと同じ原理です。私も飛ばしたくないときは、そうやってわざとパワーをロスするような打ち方をします。
GD なるほど、確かにひざを送れば入射角はゆるやかになりますね。
湯原 それもボールをコントロールするひとつの方法です。ニーアクションは車のショックアブソーバーのようなものだと話しましたよね。ショックアブソーバーは、軟らかいほど地面の凹凸の影響を受けずに乗り心地をよくします。
湯原 乗用車ではそれでいいのですけれど、そういう軟らかいショックアブソーバーを使ったサスペンションだと、スピードを上げたままでは急なカーブを曲がり切れないので、ブレーキを踏んでスピードを落とさなければなりません。一方、スポーツカーのサスペンションは、硬いセッティングになっているので、路面の小さな凹凸まで拾いやすくなってしまいますが、急カーブをスピードダウンしないで曲がることができます。
関節には伸びしろを作っておく
GD 人間の場合、そのショックアブソーバーがひざなんですね。
湯原 ひざだけじゃなくて、ひじとか手首などの関節も同じです。そして人間の場合、瞬時に目的に応じて変化させることができるのです。曲げたまま柔らかく使えばよりコントロールできるし、逆に思い切ってバーンとすべての関節を伸ばせばヘッドスピードを上げることができるのです。
GD インパクトでじゅうぶん伸ばせるように、アドレスでもトップでも、ひざやひじに『伸びシロ』になるゆとりを持たせておくべきと言ってましたね。
湯原 そのゆとりをインパクトでどう使うかが大切なんです。力を集めるのか、それとも力をわざと逃すのか、場面に応じて対応する必要があります。二ーアクションは、入射角をゆるやかにすると言いましたが、逆にヘッドを鋭角に入れたいときは、ひざの位置を変えずに振り下ろせば、自然と上から打てます。
湯原 跳び上がるということは、地面からパワーをもらうことです。そのパワーが振り下ろす手とその先に持っているクラブを加速させるのです。逆にパワーをあまり出したくないときには、地面の力を利用しなくていいから、跳び上がりません。むしろ、ブレーキを掛けるようにひざを送るんです。
GD それは、どうすれば体感できますか。
湯原 ボールの代わりにインパクトバッグや目土袋などを置いて、ゆるやかに曲げていたひざをインパクトで思い切り伸ばして叩いてみてください。つぎに、ひざを曲げたまま左にスライドさせて叩きます。これでどちらが力強くインパクトできるか体感できますよ。
週刊GD2013年より
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