中部銀次郎は、生涯アマチュアゴルファーを生き抜いた。日本アマチュア選手権に6度優勝するなど数々の記録を達成し、日本のアマ界の至宝と呼ばれるようになった。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

画像: 中部銀次郎(1942~2001)

中部銀次郎(1942~2001)

なぜ、プロにならなかったのか

幾度となく、中部さんに「何故、プロにならなかったのか?」と訊いたことがあった。その理由のひとつがある。それはプロゴルファーである島村祐正の練習風景を見たときに感じたことが、深く脳裏に焼き付いて離れなかったことが素因だと言った。

ちょうど中学1年生の夏だった。そのころ夏休みに4日間ほど家族旅行に出かけるようになった。親父をはじめとする3人の男兄弟、そして母親である。家族旅行といっても、ゴルフ旅行だった。

場所は毎年決まっていた。「唐津ゴルフ倶楽部」である。その頃、そこに所属していた島村祐正プロ(後に古賀ゴルフ・クラブへ移籍。2008年没)が、私の家族と親交があったからである。

夏休みの思い出「唐津ゴルフ倶楽部」

「その旅行が楽しみでしたよ。親父と3人の兄弟でのプレーは、実に和やかで、しかも厳しく、楽しかったですね。そして、その夏の4日間の経験は後に私に大変大きな印象として残り、役立たせたものがあった。いや、正確には経験というよりも、ひとつの目標といったほうがいいかも知れない。でも、逆に僕はプロゴルファーという職業には就けないなあ、と思ったのも事実でしたね」

真夏日の、しかも昼過ぎの最も暑い時間帯。黙っていてもジリジリと肌が焼けてくるような日射の中であった。島村プロは、バッグを肩にかけてコースの中へ消えて行った。いったい何処で練習するのだろう。食事を終えた私は、島村プロが消えて行ったコースの中へと入っていった。

辿り着くと、そこはコースの中でも最も暑く、しかも風もまったく吹かないような窪地のような場所であった。最初、私は何故こんな場所をわざわざ選んで、練習するのかわからなった。すでに、汗はシャツに水をかぶったようにぐしょ濡れになって、それももう渇きに入っているようにさえあった。

フェアウェイの照りかえしを入れたらいったい何度ぐらいの温度になるのだろうか。私にとって、これを目撃したことが、時間が経つにつれてノック・アウト・パンチを受けたほどに胸に迫ってくる何かを感じたのは、その練習に対する島村プロの執念であった。そして、「ひとつの教訓にも似た練習方法を、まざまざと見せつけられた」のであった。

人は、ともすると、つい楽な方向に目をやって、楽して……と思う。それが本能であろう。暑いから、多少でも涼しい所で練習した方がいいと思うに違いない。では、どっちが本当に身をもっての練習になるのだろうか。中部は、島村プロの練習方法をとった。

ゴルフより、ゴルフィングだよね

中部銀次郎は、天才だったとよく人は言う。でも、僕は違うと思う。むしろ中部さんは、努力家だった。探求心が強く、スティーブ・ジョブスの言う「どん欲に、愚直に」ゴルフを追い求めた結果が、中部銀次郎のゴルフとして具現化されただけだと思う。「ゴルフより、ゴルフィングだよね」と言ったことがある。それは中部さんの造語だけれども、おそらく常に留まることのないゴルフの奥深さや幅広さを物語った意味合いなのだろう。

中部銀次郎のゴルフが、いまでも、神格化されるほど注目されているのは、天才でもなければ、格別に奇をてらった言葉や理論があるわけでもなく、ゴルフというゲームにおけるプリンシプルを、ただ愚直に、どん欲に求め続けたプロセスが、僕たちにとって普遍のゴルフ哲学だからだと思うのだ。

文/三田村昌鳳

唐津ゴルフ倶楽部
佐賀県唐津市管牟田64-1
TEL0955-73-2933
18ホール/6710ヤード/パー72
コースレート72.4/スロープレート132
コースタイプ/丘陵コース
グリーン/ベントの1グリーン
設計/(株)オオバ
監修/鷹巣南雄、金井清一、宮崎征二
開場/1937年
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画像: 中部家所蔵写真より

中部家所蔵写真より

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