今週の通勤GDは「迷ったとき、ユハラに帰れ!」。今回は、距離を正確に打ち分けるための話を聞いた。距離感とは、文字どおり感覚的なものだが、「距離感を向上させるには打ち方よりも情報力なんですよ」とミスターベーシック・湯原信光は力説する。アマチュアが知っておくべき情報とは一体どんなものなのだろう?

前回、第17話のお話

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

飛距離は天候によって左右される

GD 距離感を身につける方法はラウンドや練習を重ねることによる慣れ以外にないんでしょうか。

湯原 基本的にはそれしかないでしょう。ただ、知っておけば計算できることもあります。たとえばフルショットの場合、季節とか、湿度とか、体調とか、あるいはどれぐらい厚着しているのかで、飛距離は変化するということを覚えておいてください。

GD 寒いと飛距離が落ちるとプロはよく言いますけど、アイアンで5ヤードぐらいの差が出るんですか?

湯原 いやいや、そんなものじゃないですよ。私の場合、暖かい時期なら9Iのフルショットで140ヤードぐらい飛ぶけれど、冬の寒いときは120ヤードぐらいしか飛びません。というか飛ばさないようにしているんです。

GD 20ヤードも差があるんですか!

湯原 雨が降っていたり、空気が湿っていても飛距離差は出ます。ただ、若い頃のほうが飛距離の差は小さかったですね。

GD 飛距離差というのは年齢的な部分もあるんですね。我々アマチュアは何ヤードなら何番と決めてかかる人が多いので、もしそれで20ヤードもショートしたらミスショットだと思ってしまいますよ。

湯原 8Iで150ヤードも打つし、130ヤード、120ヤードということもあります。自分のなかでスイッチをカチカチと変える感じです。車のギアを路面の状況やカーブに応じてロー、セカンド、トップと変えるのと同じ感覚と言えます。

画像: 距離感とは常に一定のものではなく、さまざまな条件によって変化するものだが、そのことをゴルファーは忘れがち。「これを忘れずにいるだけでも距離感はかなりよくなるはず」と湯原

距離感とは常に一定のものではなく、さまざまな条件によって変化するものだが、そのことをゴルファーは忘れがち。「これを忘れずにいるだけでも距離感はかなりよくなるはず」と湯原

GD 今日の天候で、今日の体調ならセカンドでいこうとか。

湯原 ええ。雪道でセカンド発進する感じのときもあります。

GD ある程度、意識的に飛距離をコントロールしているわけですね。

湯原 スウィングとしては振る方向が同じでも、ヘッドスピードが速くなれば、スピン量が増えます。それに、ミスしたときの度合いも大きくなるんです。

湯原 逆に、同じクラブでヘッドスピードをセーブすれば、スピン量が減るから曲がりが少ない。そういうことを考えてクラブを選択したり、ヘッドスピードを調整したりするのもゴルフというスポーツの特徴です。

GD 向かい風か追い風か、ぐらいは気にしますけど……。

湯原 もっと注意することはた<さんありますよ。細かなことを言えば、順光と逆光でも飛び方が違うんです。順光だと目標が近くに見えるし、気持ちがいいので球も飛ぶ。逆光は遠くに見えるので、つい力が入ってかえって飛ばないことが多いんです。やっぱり人間は感情を持つ動物だから、見え方ひとつで反応が変わってしまうことがあるんです。

距離感を運動量に置き換える

GD 50ヤードや30ヤードといったコントロールショットの距離も、やっぱり慣れるしかないのでしょうか?

湯原 基本的にはそうです。ただ、その距離感をどうやって運動量に置き換えるのか。その知識を持っておくといいと思います。

GD 距離感を運動量に置き換えるとは?

湯原 SWやAWを使う場合、口フトを開いたり閉じたり、あるいは入射角(インパクトに向かうときのクラブヘッドの角度)を変えたりして、ボールを上げたり転がしたりという操作をしますよね。そのときどんな角度でボールが飛び出すかを想像するんです。同じ30ヤードでも、転がした場合と上げた場合では、運動量に違いがあるんです。

画像: 「短い距離感を出すには、球の高さが変われば必要なクラブの運動量も変わることを知っておくといい」と湯原。同じ30ヤードも、運動量がた<さん必要な高い球は当然、スウィングが大きくなる。こうした情報のひとつひとつが、正確な距離感をつくるのだ

「短い距離感を出すには、球の高さが変われば必要なクラブの運動量も変わることを知っておくといい」と湯原。同じ30ヤードも、運動量がた<さん必要な高い球は当然、スウィングが大きくなる。こうした情報のひとつひとつが、正確な距離感をつくるのだ

GD なるほど。滞空時間が違いますからね。

湯原 チップショットならほぼ直線で30ヤードの距離を打てばいいのですが、ロブショットだと放物線の距離を飛ぶだけの運動量を考慮しなければならないので、1.5倍ぐらいの強さが必要になってきます。当然、それなりにスウィングを大きくする必要があります。

GD 仮に、ロブショットの放物線が完全な半円だとしたら、半径15ヤードの半円を飛ばさなければならないから、計算するとロブショットでは45ヤードを転がすのに匹敵する力が必要だということですね。

湯原 まあ、そう単純に計算どおりにいくわけではありませんけどね。転がすのと比べると、ボールを高く上げるときほど大きな力が必要になるのは確かです。

GD ボールの高さと滞空時間の関係は、アプローチばかりではなくすべてのショットで考えた方がいいのでしょうか?

湯原 ドライバーでもSWでも、最高到達点は34ヤードぐらい(湯原をはじめ男子プロの通常ショットの場合)といわれています。もちろん、これには個人差がありますけど、自分のボールがどのぐらいの高さまで達するのか、滞空時間がどれぐらいなのかを知っておくことは大切です。情報量が増えれば、距離感の精度は高まりますからね。

GD ショートカットを狙うのか、それとも安全に刻むのか。プレーしていると、たびたびそういう場面に遭遇します。林越えだったり、池越えだったり。

湯原 そういう場面での対処方法は人それぞれなのに、「ここで刻んでは男じゃない」とか、状況とはまったく別の事情を考えてしまいがち。ゴルフでもよく冒険と言うけれど、登山家の三浦雄一郎さんによれば、冒険とはきちんと準備して挑むものだそうです。そのためには、あらゆる情報を集める必要があります。それができる人は必ず上達すると思います。

集めた情報から想像力を高める

GD コントロールショットの話に戻ります。たとえば高い球と低い球で寄せるときの距離感は、飛んでいるボールの時間やスピードをイメージする以外に、どんなことをチェックしていますか?

湯原 入射角だったり、ヘッドスピードだったり、ボールの位置だったり、ライだったり、様々な要素をチェックしています。クラブにしても、バウンスの大きいウェッジはボールが上がりやすいし、バウンスの小さいものは低く出やすいという違いもあります。だから距離感には、想像力と情報力が大切なんです。ラウンドで経験したものを蓄積しておけば、状況に応じて瞬時に判断できるようになる。過去に経験しているのに、それを記憶していなければ、何にもなりません。

画像: バウンスが大きいウェッジならボールが上がりやすく、バウンスが小さいウェッジは低く出やすい

バウンスが大きいウェッジならボールが上がりやすく、バウンスが小さいウェッジは低く出やすい

GD 目の前の状況と蓄積したデータを、いかに素早く結び付けられるかが大切なんですね。

湯原 先ほども言ったように、様々な要素が複合しているのですから、この距離ならこう打つとか、機械的に対応するのは難しいことです。いかに想像力を発揮するかが勝負。ボールを目標の場所に運ぶプランを明確にイメージし、口フトの開き具合、ヘッドスピード、入射角を決めていくのです。

GD たとえば58度のSWを使っているとしたら、それを場合によっては開いて60度にしたり、閉じて54度にしたりということが考えられますけど……。

湯原 頭の位置が1~2センチずれただけで、ロフトは違って見えるものです。そのときに自分がどう感じたかだけが頼りです。

GD 小さな変化でもクラブやボールの見え方は変わるものなんですね。だからバンカーのような大きな変化に対応できないアマチュアが多いのかもしれませんね。

湯原 バンカーはこう打たなければならない、という先入観ばかりで、これから打つショットのイメージができていないからではないでしょうか。

週刊GD2013年より

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画像: golfdigest-play.jp
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