「とにかく真っすぐ飛ばしたい」と願うアマチュアは多い。しかし「真っすぐな球を打つ必要はない」とユハラは言い切る。球は自然に曲がるもの。曲がる原理を理解することが上達のためには必要なのだ。「迷ったとき、ユハラに帰れ」の第22話は、ボールのスピンと回転軸について……。

前回、第21話の話

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

ボールのどこに当たるかで回転軸の傾きが決まる

GD アマチュアは何とか真っすぐ打とうと考えるものですが、それでも曲がってしまいます。真っすぐに打つには、どうしたらいいのでしょうか?

湯原 確かにアマチュアの多くがそう思っていますよね。でも、私たちプロのショットでボールが真っすぐ飛んでいくのを見たことがありますか?

GD えっ? そう言われると……、確かにたいていフェードかドローですね。真っすぐ飛ぶショットはないと言ってもいいかもしれません。

湯原 そのとおり。私たちプロの多くは、真っすぐなボールを打っていないし、打とうとも思ってないんですよ。

GD それでは、アマチュアもどちらかに曲がる球を練習したほうがいいということですか?

湯原 そうです。でもその前に、どうしてボールが曲がるのか、その原理を理解しておいたほうがいいでしょう。ボールの回転軸に関する話です。

GD 自分がボールを手のひらに乗せて真上から見たとき、時計回りに回転しているのがスライス回転で、反時計回りに回転しているのがフック回転と考えていいんですよね。いわゆるサイドスピン(横回転)でボールが曲がると。

湯原 一定の回転をしている舞台いは、必ずその回転の中心となる軸があります。でも時計回りにしても、反時計回りにしても、空中を飛ぶボールの回転軸が常に横回転の軸ということはあり得ません。赤道より上を打ったらオーバースピン(順回転)が掛かりますが、普通はバックスピン(逆回転)がかかります。回転する球体にバックスピンとサイドスピンの2本の回転軸が存在することはありません。

画像: ボールのどこに当たるかで回転軸の傾きが決まる

湯原 ボールの回転軸は団子に真横から串を刺したように飛球線に対して直角です。その串が地面に対して右上がりか、右下がりか、どのような傾きになっているかで、右に曲がるスライスになったり、左に曲がるフックになったりするのです。

GD スライス回転とかフック回転と言うから、時計回りや反時計回りの軸をイメージしてしまいがちです。でも「回転軸は1本で、その軸がどう傾いているか」を考えればいいということですね。

湯原 その通りです。

GD ボールに刺した串がどんな傾きになると、どのように飛んでいくのでしょう。

湯原 飛球線後方からボールを見て、ボールに真横から刺さった軸の右側が上がっているとボールは左へ曲がってフックになります。反対に右が下がっていると右に曲がるスライスです。

GD どうヒットするとそういう傾きになるのでしょう。

湯原 同じように飛球線後方から見てボールの右側にフェースが当たれば回転軸は右側が高い傾きになって左へ曲がります。逆にボールの左側にフェースが当たれば回転軸は右側が低くなって右に曲がります。

画像: クラブフェースが先にB点に当たればフック、C点に当たればスライスがでる

クラブフェースが先にB点に当たればフック、C点に当たればスライスがでる

GD ボールを上から見たアングルで確認するとボールのどこにフェースが当たるかが分かりやすいですね。ゴルファーのほとんどがA点を打とうとしているのに、どうしてこうなるのでしょう?

湯原 ゴルフクラブはテニスや卓球のラケットと違って、シャフトの先にヘッドが突き出た形になっているので、常にA点をヒットするというのが難しいからです。

A点に当たってもドローするのが自然

GD スライスにはいろいろな原因が考えられますが、インパクトエリアのところだけで考えればC点にフェースが当たっているということですね。逆にフックはB点に当たっていると。

湯原 それに加えて、スウィングのプレーンは斜めに傾いているから、もし正確にA点を打ったとしても、プレーンの傾きの分、回転軸は右側が高くなってフックすることになります。

GD なるほど。団子の串はスウィングプレーンに応じて自然とフックのでる傾きになると。いわゆるナチュラルドローという球筋ですか?

湯原 ええ。よくフェードよりドローのほうが飛ぶと言われますが、物理的に考えれば同じエネルギーが与えられてボールは飛んでいるわけですから、回転軸の傾き方が違うだけで飛距離が変わるはずないのです。それでもドローとスライスで飛距離に差が生まれるのは、ドローのほうがナチュラルにスウィングしている分、力のロスが少ないからです。

GD スライスするのは「アウトサイドからクラブが下りてきているからだ」とよく言いますが……

湯原 それはアウトからヘッドが入ってきても、クラブフェースが開いて先にC点に当たっているからなんです。

湯原 一般的にスウィング軌道がアウトサイドインだとスライスが出て、インサイドアウトだとフックが出ると言われています。しかし、物理的に考えればアウトサイドから下りてくればB点に当たりやすいわけですから、回転軸はフックの傾きになります。

GD なるほど。意に反してスライスが出るときは、まずクラブフェースがボールのどこに最初に接触しているかを考えなくてはならないということですね。

湯原 スライスを矯正するために「インサイドアウトに振れ」という指導をしているのを見聞きしますが、単純にインサイドアウトに振っているだけではスライスは直せません。スライスする人は右が怖いから左を向きやすい。それでインサイドから振り抜いてもボールの左側を打ってしまえばボールはスライスしてしまうのです。

画像: 「ボールのどこを打ち、どの方向へ打ち出すか、イメージしていますか?」

「ボールのどこを打ち、どの方向へ打ち出すか、イメージしていますか?」

GD それではエネルギー効率も悪そうですね。

湯原 そうです。フェードやスライスの場合、ナチュラルではない要素が入っているため、エネルギーのロスがあって飛ばないと考えたほうがいいでしょう。ただ、ゴルフは飛距離を競うだけのゲームではありません。もちろん、スライスやフェードも状況によっては必要になってきます。

GD フックにせよ、スライスにせよ、狙った球を打ちたければ曲がる原理を覚えておいたほうがいいということですね。

湯原 目標方向に対して右に飛び出して真ん中に戻ってくるのがドローです。フックボールはさらに右から左への曲がりが大きくなるので真ん中に戻すためにはもっと右に打ち出さなければなりません。そのとき、ボールのどこを打ち、どの方向に打ち出すか、原理を知った上でプレーしてほしいですね。

週刊GD2013年より

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画像: golfdigest-play.jp
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