前話に引き続き、篠塚武久先生がパッティングのお話し。今週の通勤GDは「みんなの桜美式」第5話。
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
前回のお話し
1メートルの練習は必要ない!
篠塚 ラウンド前、短い距離を何度も練習している人がいる。プロでも1mの距離を時間かけてじっくりやっているのを見かける。あれを「桜美式」のジュニアが見ると、「なんでやろ?」と思うんです。
GD 当然だと思っていました。短い距離こそ勝負をかけた1打となり得て、とくにプロにとっては重要だからでは?
篠塚 パッティングを「打つ」人にとっては、とても不安で外れるかもしれない怖い距離だからこそ、何度も何度も、時間をかけて練習する。しかし「桜美式」のジュニアは、パッティングは「転がす」ものと思っているから、短い距離は入って当然。当然のことに、なぜ時間をかけているのだろうと。
GD パッティングを「打つ」と「転がす」。すでに浸透してきている「ライジングパット」ですね!
ライジングパットの説明はこちら↓
篠塚 そう。球の芯とフェース面の芯とを合わせて「打つ」のが従来のパッティングの常識だった。その芯が少しでもズレてしまうとたとえ1m先のショートパットでも方向性が狂い、カップに蹴られてしまう。だから不安で時間をかけて練習しなければならない。
篠塚 でも「桜美式」のジュニアたちは、球の芯とフェース面の芯を合わせて「打つ」などという、不自然で難しいことをしない。どうしたら自然で簡単に球をカップに入れられるのかを追求している。それには、球をフェース面でこすり上げるようにして「転がす」、「ライジングパット」がいいと確信しています。
GD ヘッドの動きを後方から見ると、ヘッドを地面近くに這わせるではなく、下から上へと上げていく。まるで「日が昇る」ようだから「ライジングパット」と名付けられたんでしたね。
篠塚 以前、うちの道場に、ヘッドが球と同じ形状をした練習器具、いわゆる「鉄球パター」が置いてあったんです。あれを制作した人は、きっと従来の常識である、球の芯とフェース面の芯とを合わせて「打つ」、これを正確に行えるようにという意図を持って作ったと思います。
篠塚 ところが、それで遊んでいた昨年の九州アマ王者の出利葉太一郎くんは、まったく別の方法で使用し始めたんです。
GD まったく別の方法?
篠塚 あの「鉄球パター」、やってみればわかりますが、とんでもなく難しい。プロでさえ、球の芯を鉄球の芯(すなわちフェースの芯)で打つことは至難の業で、球があちこち暴れてしまう。ということは、いつも平らなフェースで打っているから気づかないだけで、やはり球の芯をヘッドの芯で「打つ」のは理に適っていないことを、「鉄球パター」が教えてくれている。
篠塚 そんな難しい「鉄球パター」で、出利葉くんは1mの距離をいとも簡単に百発百中させた。その方法は、球の芯を鉄球の芯で打たずに、球のラインを鉄球の芯で擦り上げて「転がす」ことだったんです。
GD 球のラインを鉄球の芯で擦り上げて「転がす」?
打たない、擦り上げる
篠塚 みなさんも、球にラインをマジックで書いたことありませんか? それは球をグリーン上にセットするとき、カップまでの仮想のラインに、球を真っすぐに置きたいがためのラインでしたよね。
GD 書いてみたことあります! 球に真っすぐの縦のラインを。
篠塚 うちのジュニアは球にまず「3つの点」を書くんですね。この点は、そこに当てるためのものではないんです。この点が横に並ぶように置くと、球の芯を「打つ」ようになり、打点が少しでも狂うと方向性がバラついてしまう。
篠塚 球に横や斜めの回転がかかり、いわゆる「引っかけ」「押し出し」というヘッドの動きになりがちです。ところが、点が縦に並ぶように置くと、球の縦のラインに沿って「転がす」イメージでヘッドを動かせる(だから、3つの点を結んだ線も描く)。きれいな縦回転( 順回転)がかかるのが、「ライジングパット」です。
篠塚 これだと、たとえヘッドが鉄球であっても、方向性はほとんど狂わない。
GD 実際にやってみると、ヘッドの点と点とを合わせて「打つ」イメージだと、必ずしも真っすぐいかないし難しいですね……。でもこの点を縦に置いて、3つの点を下から擦り上げると、簡単に真っすぐ転がせます。
篠塚 従来の点と点とを合わせて「打つ」イメージだと、実は方向性だけでなく距離感も狂いやすい。なぜなら、球が逆回転したり、ときには無回転となって芝を滑るように動いてしまったりと、どれだけ転がってくれるのか予想がつかないところがある。
篠塚 でも、「転がす」イメージなら、いつでも球は順回転してくれるから、不測の事態が生じづらく、カップをめがけて最後までしっかり転がってくれる。プロでさえ不安で怖くなるほど難しいことを、これまでの常識はアマチュアに強いていた。
篠塚 出利葉くんの「鉄球パター」での遊びや、ボールに3つの点を描くことは、常識にとらわれないから生まれる発想なんです。
週刊GDより
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