ゴルフは回転運動であり、その中心は首の付け根の喉元、具体的には「胸骨柄(きょうこつへい)」という胸骨の一部になるというのが前回のお話し。ではその回転を、さらに滑らかにするためにどう指導しているのか、篠塚武久先生に聞いた。今週の通勤GDは「みんなの桜美式」Vol.13。

前回のお話し

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

画像: ゴルフ向学者 たけひさ先生 篠塚武久・73歳。福岡市で「桜美ゴルフハウス」主宰。福岡大学の大石迪夫教授と作り上げた「OSゴルフ理論」で多くのジュニアが結果を出す。「テンフィンガー研究ははや20年。今後『分担型グリップ』時代がくることを確信」

ゴルフ向学者
たけひさ先生
篠塚武久・73歳。福岡市で「桜美ゴルフハウス」主宰。福岡大学の大石迪夫教授と作り上げた「OSゴルフ理論」で多くのジュニアが結果を出す。「テンフィンガー研究ははや20年。今後『分担型グリップ』時代がくることを確信」

湾曲シャフトのクラブは回りやすい

篠塚 まず、生徒たちに向けて書いた下図をご覧ください(図①)。クラブを4本つないで風車を作ってみると、左と右とでは、どちらがスムーズに回転すると思います?

画像: 「クラブで作った風車。右のほうが抵抗を減らしスムーズな回転ができる。クラブも同じで、刀状のシャフトをイメージすると力みが生じにくい。これをイメージするだけでもスウィングは変わります」(図①)

「クラブで作った風車。右のほうが抵抗を減らしスムーズな回転ができる。クラブも同じで、刀状のシャフトをイメージすると力みが生じにくい。これをイメージするだけでもスウィングは変わります」(図①)

GD スムーズに回転しやすそうなのは、クラブとしてはシャフトが曲がってしまって妙ですが、右の風車でしょうか。

篠塚 生徒たちもそう答えました。実際に風車のみならず、扇風機も、船のスクリューも、飛行機のプロペラも、回転運動するもののほとんどは棒状ではなく曲線で歯が構成されています。それは物理的に効率がいいからです。

篠塚 そして、人間は、それらの曲線の歯で構成されている回転運動をたくさん目にしているので、スムーズに回転できるのはどちらか、視覚情報だけですぐに判断できる。 実際に、こんなものを作ってみました。シャフトが湾曲しているゴルフクラブです(写真①)。

画像: 新道具! シャフトを刀みたいに曲げてみました(写真①)

新道具! シャフトを刀みたいに曲げてみました(写真①)

GD さすが工学博士の先生です。回転運動がしやすいようにシャフトを湾曲させてしまうなんて!

篠塚 実際に球も打てますから、生徒たちに打たせると、とんでもないことが起きたんです。最初は慣れないので空振りするジュニアもいましたが、しばらくすると驚くべきスムーズさでフィニッシュまで一気に振り抜き、スウィングスピードも上がって飛距離が伸びたのです。やってみてください。

GD おっ、構えただけでずいぶんと印象が違いますね。なんというか、球に向かってシャフトを加速させられそうな感じ。当たるかどうか不安はありましたが、打ってみると、打感が軽やかなのに驚きました。いつの間にかインパクトが過ぎていて、フィニッシュまで自然と振りきってしまっている。

篠塚 この湾曲シャフトは、日本刀の反りをイメージしてるんです。ジュニアたちがアドレスしている姿を見ると、まるで下段の構えで球を切ろうとしている若きサムライたちに見えてきますよ。

GD 「桜美式」の手刀テンフィンガーグリップと「刀打法」に、この湾曲シャフトはピッタリきますね。

自然とスウィングアークが大きくなる「y」アドレス

篠塚 ここからが今週のレッスンです。旧来の両手合体型であるオーバーラッピングやインターロッキンググリップで握って、真っすぐのクラブを構えると、アルファベットの大文字「Y」になります。

篠塚 ところが手刀テンフィンガーグリップで湾曲したクラブを構えると、今度はどうでしょう。小文字の「y」のように見えませんか。

GD アルファベットの大文字の「Y」と、小文字の「y」。確かにそう見えます。

篠塚 つまり、大文字「Y」は、先ほどの風車ならば棒状の歯が付いた非効率風車。スクェアを意識するあまり、体全体も硬直してしまいがちで、回転運動がしにくい。手元に力が入りすぎて分断された動きにもなる。回転がスムーズにできないと、スピードやパワーが発揮されないばかりか、再現性も悪いのでミスも頻発します。

篠塚 対して小文字「y」は、曲線の歯で構成された効率的な風車。スクェアなどまったく意識しなくてよく、体全体が柔軟に回転に備えられます。スピード、パワー、再現性に優れ、さらに重要なのは、スウィングアークまでが大きくなることです。

画像: 「小文字の『y』でアドレスすれば、肩から大きくスムーズに回転できる」

「小文字の『y』でアドレスすれば、肩から大きくスムーズに回転できる」

GD スウィングアークまで大きくなる?

篠塚 「Y」と「y」のクラブを始動させる出発点を考えてください。「Y」の棒は両手が合体したグリップから始まっていますが、「y」のほうの湾曲は、グリップではなく左の肩から始まっています。

GD なるほど、「Y」と「y」の文字を、体に当てはめて比べてみるとわかりやすい。確かに「y」だと回す部分が左肩ですね。

画像: 「大文字の『Y』で構えると、スクェアを意識するあまり、体全体が硬直して回転運動しにくい。対して小文字の『y』は、体全体が柔軟に回転に備えられ、スピード、パワー、再現性に優れ、スウィングアークまでが大きくなる」

「大文字の『Y』で構えると、スクェアを意識するあまり、体全体が硬直して回転運動しにくい。対して小文字の『y』は、体全体が柔軟に回転に備えられ、スピード、パワー、再現性に優れ、スウィングアークまでが大きくなる」

篠塚 「左肩を入れなさい」なんて、無理矢理スウィングアークを大きくしようとしなくても、アドレスは大文字の「Y」ではなく、小文字の「y」です、というだけで、ジュニアたちのスウィングがダイナミックになる。

篠塚 みなさんも曲線の風車を、そして湾曲したシャフトをイメージし、小文字の「y」でアドレスしてみましょう。ただテンフィンガーで握るだけではなく、このイメージを大事にしてください。私もアレコレご提案しますので、自分に合うものを見つけてくださいね。

画像: 自然とスウィングアークが大きくなる「y」アドレス

週刊GDより

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