「ゴルフでは、同じ状況から打つことは二度ない」とは湯原信光。理由のひとつがアンジュレーション(傾斜)。「一見、平らに見えてもティーングエリアを含めコースに平らな場所なんてほとんどない。足元とボールの傾斜だって同じとは限らない」と続ける。傾斜に対する考え方とは?「迷ったとき、ユハラに帰れ!」Vol.32

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。GD 

前回のお話し

傾斜地では「自分のボディバランス」を自答する

GD 基本的に、つま先下がり、つま先上がり、左足下がり、左足上がりの4パターンがあって、さらにそれらが複合したライがあります。それぞれ、対処の仕方はどう考えればいいのでしょうか?

湯原 一般的に、アンジュレーションに対して、傾斜に沿って肩のラインを一致させるといった、方程式みたいな対処法を考えがちですけど、傾斜地でいちばん大切なことは、“自分のボディバランスを考えること”なのです。そこを考えていくと、どういうふうに立つべきかは自ずと決まってくるはず。アマチュアの多くは、それを考えないで、方程式に当てはめようとするから上手く打てないのです。

画像: 傾斜に沿って立とうとすれば、姿勢を保つだけで大変。「ボディバランスがよくなければスウィングできません。傾斜地では、地球に対して垂直に立つことが基本です」(ユハラ)

傾斜に沿って立とうとすれば、姿勢を保つだけで大変。「ボディバランスがよくなければスウィングできません。傾斜地では、地球に対して垂直に立つことが基本です」(ユハラ)

GD ボディバランスとは?

湯原 簡単にいってしまえば、“地球の中心に対して垂直に立つこと”です。まず、両足を揃えてアドレスしてみます。そうすれば、自分が垂直に立っているかどうかのバランスを認識できますよね。ただ、そのままではうまく打てないから、体を支えられる範囲で足を広げていくのです。

GD 広げるのは、右足からでも左足からでもいいんですか?

湯原 それは状況によるでしょう。両足を揃えて構えたとき、ボールは左足かかとの線上にありますよね。そこが体の正面で、ボール位置は基本的にそこです。あとはライに応じて、若干右だったり、左だったりと、対応すればいいのです。

GD どんなライでも、それがベーシックなんですね。

地球の中心に対して垂直に立つ
傾斜地の大前提

湯原 そうです。ただし、状況に応じてアレンジする必要はありますよ。傾斜地というと、難しい格好でアドレスする人が多いのですが、スウィングするのだから、いちばん打ちやすい格好をしなければダメでしょう。それが地球に対して垂直に立つ理由で、これがまず大前提。

GD よく「傾斜なりに立て」といわれますけど、確かに傾斜に沿って立つよりも、地球に対して垂直に立つほうがシンプルだし、動きやすい感じがします。

湯原 何よりも自分の動きを自分でコントロールできます。たとえば、左足が上がっているライなら、自分は垂直に立って、上がっているぶんだけ左ひざを曲げるなど、何か工夫をすれば、体の動きは、斜面なりに立つよりずっとコントロールしやすく、クラブを振りやすくなるはずです。

GD 垂直に立つというのは、以前「自然体で立つ」ということですね。

湯原 そうです。引力に逆らわずに立つこと。そのためのエ夫として、たとえば、スタンスを閉じたり開いたり、どちらかの足を曲げたり曲げなかったり、ということをやるのです。

GD もっとも体が回転しやすいボディバランスを探って立つということですね。

湯原 そうです。そのときに忘れてはいけないことは、体のバランスだけではなく、ククラブを保持した状態のバランスを感じることです。

つま先下がりの傾斜地でも
グリップは短く持つ

湯原 起伏のあるところでアドレスする際に、もうひとつ大事なのは”クラブを短く持つ”ということです。

GD つま先下がりのときもクラブは短く持つんですか!

湯原 クラブを長く持てば、ボールから遠くなるわけです。反対に、短く持てば、短いぶんだけボールに近くなる。それをわかっていないアマチュアが意外と多いようですね。

画像: つま先下がりの傾斜地でも グリップは短く持つ

GD つまりそれは、ボールに近く立つ、ということですね。

湯原 つま先上がりでも、つま先下がりでも、クラブを短く持てば、自分とボールとの間合いを狭めることができます。たったそれだけで、傾斜による段差が小さくなります。そして、クラブを目いっぱい長く持つよりも、短く持ったほうがずっとクラブは扱いやすくなるのです。

画像: 短く持っても、体とボールの距離を変えなければ意味がない。「自分とボールの距離が近くなるからミスしにくくなる、ということを忘れずに」(ユハラ)

短く持っても、体とボールの距離を変えなければ意味がない。「自分とボールの距離が近くなるからミスしにくくなる、ということを忘れずに」(ユハラ)

GD ロングアイアンよりショートアイアンのほうがミート率を高くできるのと同じ原理ですね。

湯原 よく「クラブを短く持ちましょう」というレッスンがあるけれど、体とボールの距離が変わらない人がいます。それでは短く持った意味がなくなってしまう。短く持つというのは“自分とボールの間の距離を狭める”ということを、忘れないようにしましょう。

GD つま先下がりでは、なるべくクラブを長く持たないとボールに届かないと思っていました。

湯原 それよりも、ボールに近づくことで段差を少さくすると考えたほうがミスは減りますね。ただし、バランスを取ろうとすると、かかとに体重が乗りやすくなります。そうすると、ボールに届かないと思って一生懸命に手を伸ばそうとしてしまう。それではスウィングできません。それほど傾斜の強い場所だったら、チョコンと当てて、とにかくその場を脱出するしか方法はありませんね。

画像: 傾斜が強ければ脱出を最優先に考える

傾斜が強ければ脱出を最優先に考える

GD つま先下がりはスライスしやすくて、つま先上がりはフックしやすいといわれ、実際にそうなることも多いですが、ときには、つま先下がりでも極端に左へ飛び出してしまうこともありますよね。これはどうしてなんでしょうか?

湯原 クラブヘッドのトウを浮かして構えているからですよ。その構えで振ると、インパクトでソールがヒールから接地しやすいので、ヘッドが返ってボールはカキーンと左に飛んでいきます。これは何もつま先下がりばかりではなく、平らに近い場所でも、トウを浮かしすぎていると起きる現象です。

GD その場で似たような傾斜を見つけて素振りをしてみれば、どんなふうにソールが接地するのか、ある程度わかるんじゃないでしょうか?

湯原 それも大変重要なことです。素振りをしてみれば、どこが適切なボールの位置なのかもわかりますからね。

画像: 傾斜地はボディバランスが肝心

傾斜地はボディバランスが肝心

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