日本最高と言われるグリーンはほとんど変えずに、難易度を高める
D・ジョンソン、B・ケプカ、J・トーマス、R・マキロイ……。現在の世界ランク上位者には、300ヤードを軽く超す飛ばし屋がずらり並ぶ。トッププレーヤーの驚異的な飛距離アップは、長い歴史をもつ世界の名コースにとっても頭痛の種であった。
オーガスタナショナルGCを始めとするメジャー開催コースでは、近年ヤーデージを伸ばすことで、プロの飛距離の伸びに対応してきたが、これは当然の常套手段にすぎない。
太平洋クラブ御殿場コースの改修も、プロの飛距離アップに対応することは大きなテーマであったが、各ホールの敷地には制約があって、ヤーデージを伸ばすことに限界もあった。
「多くのコースが距離を伸ばすことで難易度を高める方法をとっていますが、他にも方法はあります。今年の全米オープンはそのいい例でしたね」と話すのは御殿場コース改修の設計を担当したリース・ジョーンズ氏の右腕として、現場で指揮を執るブライス・スワンソン氏。
2018年の全米オープン会場となったシネコックヒルズは7440ヤード。近年の全米オープンとしては、それほど長いほうではない。しかも、フェアウェイのランディングエリアを広くとり、ドライバーを使用できる設定だったにもかかわらず、多くのトッププロがスコアメークに苦労した。
そのカギが、グリーン周りのセッティングだった。
わかりやすい例では4番のパー3。池をグリーンに近づけることで、難度をアップさせた。
4番ホール 池をグリーン面に近づける
Before(改修前)
After(改修後)
「御殿場コースでも、グリーン周りの形状を見直すことで戦略性と難度を高めて、昨今のプロの飛距離の伸びに対峙できる、と改修を進め行きました」(スワンソン氏)
御殿場コースは、たびたび「日本最高のグリーン」と称賛される。今回、そのグリーン面について、全面改修した7番ホール以外には手をつけていない。
もともと高評価のグリーンはそのまま活かしたうえで、ほぼすべてのホールのグリーン周り形状には手を入れた。多くのホールのグリーン周りは野芝だったが、それを高麗芝へ全面的に貼り替えた。
高麗芝になったことで、グリーンを外したボールは止まりにくくなり、グリーンの外へ外へと転がり出る。転がり出た先に、形状を見直したバンカーや拡張されたウォーターハザードが待ち構えるホールも増えた。
8番ホール グリーンをこぼれたボールは、グリーンから離れていく
Before(改修前)
After(改修後)
グリーンを狙うショットに対する難易度を高めると同時に、スコアメークに重要なショートゲームの技量が試されるコースになったといえる。
14番ホール グリーン手前の池が左サイドまで回り込む。外したボールは池へ転がり落ちる
Before(改修前)
After(改修後)
グリーン周りの形状に手を入れたことによって、飛距離アップに対抗する戦略性を得た御殿場コース。これも世界基準への改造のひとつだ。
「でも、メンバーの方(アマチュア)が太刀打ちできないほど難しくはしません。グリーン周りの芝生の刈り高を変化させることで、シビアさの調整は可能だからです。トーナメントウイークはセッティングによって難度を上げますが、通常はアマチュアが楽しめることが大事です。トーナメントは1年のうちのわずかですから」(スワンソン氏)
三井住友VISA太平洋マスターズ(11月8日~11日)では、ピンを狙ったボールがひとたびグリーンをこぼれると、刈り込んだ斜面を池やバンカーに向かって転がっていく……。そんなスリリングなシーンが展開されるはずだ。
太平洋クラブ御殿場コース
静岡県御殿場市板妻941-1
TEL.0550-89-6222
18H・7327Y・P72
原設計(加藤俊輔)、改造(R・ジョーンズ)
東名高速<御殿場I.C.>より約9km
東名高速<裾野I.C.>より約10.7km
中央高速道・東富士五湖道路<須走I.C.>より約10km
35年ぶりに日本で開催されたワールドカップ。米国はT・ウッズとD・デュバルの当時最強コンビで参戦。最終日、首位に2打差で18番を迎えた米国チームの2打目はグリーンの右サイドに外れる。下り斜面でピンまで下り傾斜という絶体絶命のライから、タイガーが放ったアプローチは奇跡的なチップインイーグルに。取り囲むギャラリーは総立ちになって大歓声を上げた
2018三井住友VISA太平洋マスターズ大会公式ホームページはこちら
週刊GD2018年9月11日号より