極めたのは、美しい起伏を生かしたクラシックデザイン
2014年8月~2016年9月まで、約2年をかけて全面改修を行った横浜カントリークラブ。改修を手掛けたのは、2014年全米オープン&全米女子オープンが開催されたパインハースト・ナンバー2の改修を手掛けたビル・クーアとマスターズ2勝のベン・クレンショー。数々のコース設計、改修を手掛け"世界一"の呼び声高い名コンビ。
改修のコンセプトは、コースが持つ元々の趣きを壊さず、戦略性を高めること。既存のレイアウトを最大限に生かしながら"自然回帰"したクラシックデザインを採用したのだそう。
フェアウェイは広く、グリーンはより戦略的に
ボックス型のティグラウンドは姿を消し、替わりに、かつてアメリカなどでよく見られたフェアウェイと同じレベルにティグラウンドが設定されます。まるでフェアウェイにティマークが置かれたようなホールも。
ティの数も従来の3から5に増えました。使用するティによって距離が大きく変わり、戦略性が向上しています。ティマークはシンプルな木製。あらためてコースを見回してみると金属製の人工物が見当たらないことに気づきます。ヤーデージ杭もなく、残り距離はフェアウェイに埋め込まれたスプリンクラーに記載されているのみ。
とはいえ、心配は無用。フラグスティックにはリフレクターが埋め込まれているので、レーザー測定器を用いて距離を計測することが可能です。
ちなみに、茶店や小屋、トイレは日本を代表する建築家、隈研吾の手によるウッディでモダンなデザイン。コースの細部に至るまで自然回帰が徹底的に図られていました。
フェアウェイの改修にも抜かりはありません。改修前と比べておよそ120~140%広くなり、アンジュレーションも大きくなりました。アマチュアにとってはミスの許容範囲が広がり優しくなったといえますが、プロや上級者にとってはルートやクラブ選択の幅が広がり、より戦略性が高まったといえます。
「フェアウェイはシェーピングをイチからやり直して、すべてコーライ芝に張り替えました。今大会ではティグラウンドからフェアウェイが9ミリ、ファーストカット32ミリ、セカンドカット60~70ミリに設定します。ラフは野芝で110ミリ前後ですが、野芝のラフよりコーライ芝のセカンドショットのほうが選手にとっては厄介かもしれません」とは、コース管理部長の棚橋氏。
バンカーは、まるで海の入り江のような淵をしたシェイプに生まれ変わり、グリーン周りの景色も一変。グリーン側のバンカーエッジは、ほとんど切り立った断崖のように垂直にカットされているので、浅く見えても入ると深いです。バンカーの砂はキメの細かい安曇野産。
そして、最も変わったのがグリーン。従来の2グリーンから1グリーンへと変更されましたが、グリーンから100ヤード付近まではすべて新しく設計されています。花道がなくなり、ほとんどのホールがフェアウェイからストレートにグリーンにつながりました。
グリーンは一見、受けているように見えますが、やさしくはありません。乗せただけでは傾斜で手前に転がり落ちてしまいます。グリーン周りのカラーもなくなり、グリーン周辺は刈り込んだ芝生のスロープに。グリーンを外すと、これまたスロープに沿ってボールは転がり落ちていきます。
「形状とアンジュレーションが複雑で、速くしすぎてもゴルフが面白くなくなってしまう。昨年の日本オープンでは13フィートだったと聞いていますが、今大会では12フィート程度になると思います」(棚橋氏)
アダム・スコットも参戦。今年の日本オープンは、ティショットの精度が高いプレーヤーが有利
改修された横浜カントリークラブを制するのは誰なのか。コースと相性のいい注目選手を横浜カントリークラブ所属の野仲茂プロに解説してもらいました。
野仲 先日、藤田寛之選手、宮本勝昌選手と一緒に回りましたが、彼らは「日本のコースではないような印象。本当に難しくなった」と言っていました。そう感じたポイントとして、1グリーン化された割に、グリーンが小さく、アンジュレーションがきついことを上げていました。砲台になっているグリーンも多く、しっかりとボールを止める技術がないとこぼれてしまいます。
── フェアウェイからグリーンを狙うことが重要ということですね
野仲 そのためには、ティショットの飛距離がでて、しかも曲がらない選手が有利。「トータルドライビング」で上位にいる選手に注目してほしいですね。
── あえて注目選手を上げるとすれば?
野仲 先月のダイヤモンドカップで優勝して、調子を上げている池田勇太選手が一番手。昔から安定感のある武藤俊憲選手、若手の筆頭、今平周吾選手にも大いにチャンスがあるのではないでしょうか。
2018トータルドライビング ランキング
順位 | 選手名 | ポイント | ドライビングディスタンス | フェアウェイキープ率 |
---|---|---|---|---|
1 | 池田勇太 | 34 | 300.26y(6位) | 58.42%(28位) |
2 | 大槻智春 | 36 | 292.12(19位) | 60.4%(17位) |
3 | 秋吉翔太 | 38 | 293.18y(18位) | 59.38%(20位) |
4 | 木下裕太 | 40 | 289.68y(29位) | 63.7%(8位) |
5 | A・キュー | 49 | 293.3y(16位) | 58.05%(33位) |
6 | K・T・ゴン | 50 | 298.82y(8位) | 56.51%(42位) |
7 | 今平周吾 | 53 | 289.37y(34位) | 59.66%(19位) |
8 | Y・E・ヤン | 57 | 288.48y(41位) | 60.45%(16位) |
9 | ハン・ジュンゴン | 63 | 295.79y(12位) | 54.47%(51位) |
10 | 池村寛世 | 64 | 299.93y(7位) | 53.85%(57位) |
11 | 木下稜介 | 68 | 289.83y(29位) | 57.19%(39位) |
星野陸也 | 68 | 298.02y(10位) | 53.67%(58位) | |
13 | 武藤俊憲 | 72 | 290.2y(28位) | 56.25%(44位) |
野仲 池田選手と同じく日本オープン3勝がかかる谷口徹選手や片山晋呉選手といったベテランも見逃せませんね。グリーン周りの小技の引き出しが多いですから、技を駆使して耐えるゴルフができれば面白い展開になると思います。
注目ホールは11~13番、オーガスタと同じですね(野仲)
野仲 インの11番は距離が長いパー4で、セカンド地点からグリーンまでは10ヤードの打ち上げになり難しい。続く、12番、13番も一癖も二癖もあるホールなので、ここが横浜カントリークラブの"アーメンコーナー"ですね。
野仲 アウトでスコアを伸ばして、インで耐える展開になると思います。前半2アンダー、後半上手くしのいで、優勝スコアはイーブンパー前後になるではないでしょうか。
20代の若き力にも注目!
星野陸也選手:長身細身の体から放つドライバーショットは魅力十分
時松隆光選手:桜美式のテンフィンガーが特徴、曲がらないショットが持ち味
稲森佑貴選手:FWキープ率75%と脅威の数字を誇るMr.フェアウェイキープ
グリーン勝負なら、パット巧者からも目が離せない
大会を現地で観戦するならドライビングレンジ、ギャラリープラザにも注目
大会期間中は、ドライビングレンジと隣のホールが20打席、300ヤードの練習場に。気になる選手を間近で見るチャンス。
クラブハウス脇がギャラリープラザに。観戦の合間にタイミングを見て腹ごしらえ。天気に恵まれればピクニック気分で過ごせます。
最寄り駅はJR横須賀線「東戸塚駅」または相鉄本線「二俣川駅」。コースへはギャラリーバスで駅から15分ほど。詳しくは大会公式HPでご確認ください。
週刊GD2018年10月23日号より