16番から17番へ歩く木立のなかに「高岡馬の神」碑がある。この周辺の標高507㍍の高岡山麓は、古くから軍馬の種畜場で有名。それは太平洋戦争中も続いた。昭和25年GHQ命令で廃止、農林省種馬牧場、姶良郡牧園町の町営牧場と変転していた。

ゴルフコースことはじめ
文芸評論家を経て、ゴルフジャーナリストとしても活躍した田野辺薫氏。ゴルフコースの目利きとして全国のコースを取材し、週刊ゴルフダイジェストで「ゴルフの歴史を歩こう」を連載(2005~2013年)。それを一冊にまとめた「美しい日本のゴルフコース」から多くの人に名コース誕生の歴史を知ってもらおうと再編集公開しています。

昭和20年代、鹿児島県下にゴルフ場はない。ゴルフ好きの集まり「鴨池ゴルフ同好会」は、伊敷の練兵場跡や鴨池の海軍航空基地跡の3ホールでプレーを楽しんだ。月に1回日曜には阿蘇の「熊本GC湯の谷コース」へ出かけ、月例競技を行った。

「鹿児島にもゴルフ場がほしい」気持ちになった頃、鹿児島に、山形屋の仕事で大成建設の保田与天が滞在していた。保田は「熊本GC」、「福岡CC和白C」を設計、九州では知られた存在だった。折から鴨池の航空基地跡のゴルフは、空港再開準備で出張してきた航空官に大目玉をくらい、遂に断念。

町営牧場を借り入れ、鹿児島ゴルフクラブを設立

「愈々自前のゴルフ場を」と吉野の島津家山林、桜島3合目など探し回ること9箇所、最後に探しあてたのがGHQの解放後5年目の牧園町町営牧場だった。その一部10万3000坪余を借地契約、昭和31年12月23日9ホール造成の起工式。

昭和32年4月10日、「社団法人鹿児島ゴルフクラブ」設立。同時に9ホール仮オープン。『大部分は手づくり、フェアウェイはトラクターで耕し、畑のようにした。芝の代わりに牧草の種を蒔いた』(霧島30年)。グリーン造りは小鍬でひとつ造るのに2〜3週間かかったという。

画像: 14番ホール/535㍎/パー5 左ドッグレッグの上りホール。右はOBゾーンが連続するためスライスは禁物。1、2打とも左狙いで攻めていく

14番ホール/535㍎/パー5 左ドッグレッグの上りホール。右はOBゾーンが連続するためスライスは禁物。1、2打とも左狙いで攻めていく

画像: 17番ホール/184㍎/パー3 打ち下ろしのパー3。グリーン左手前のバンカーを避けて右から攻める。グリーンは2段

17番ホール/184㍎/パー3 打ち下ろしのパー3。グリーン左手前のバンカーを避けて右から攻める。グリーンは2段

保田の設計コンセプトは「自然のかたちを極力残す」、しかし難しいコースだった。平日はひとりの客もない日も。18ホールになるのは遅れて昭和36年7月30日、37年6月に新クラブハウス落成。昭和45年5月28日、鹿児島ゴルフクラブを「霧島ゴルフクラブ」に改称。

画像: 8番ホール/348ヤード/パー4 グリーン手前バンカーに注意し、グリーンセンターを狙っていきたい

8番ホール/348ヤード/パー4 グリーン手前バンカーに注意し、グリーンセンターを狙っていきたい

ミヤマキリシマイワツツジなど植栽事業の熱心さでも知られ、昭和59年5月20日、コース隣接地で行われた全国植樹祭に昭和天皇が行幸されている。

画像: 町営牧場を借り入れ、鹿児島ゴルフクラブを設立

霧島ゴルフクラブ
鹿児島県霧島市牧園町高千穂3311 ☎0995‐78‐2324
開場日:昭和32年9月23日
コース:18H/6781Y/P72
監修:保田与天
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取材・文/田野辺薫

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