ゴルフコースことはじめ
文芸評論家を経て、ゴルフジャーナリストとしても活躍した田野辺薫氏。ゴルフコースの目利きとして全国のコースを取材し、週刊ゴルフダイジェストで「ゴルフの歴史を歩こう」を連載（2005~2013年）。それを一冊にまとめた「美しい日本のゴルフコース」から多くの人に名コース誕生の歴史を知ってもらおうと再編集公開しています。
宇部興産の経営理念「企業は地元住民ともども繁栄を図らねばならない」、それは中安の人生哲学だった。昭和30年代に入る。経済も生活も好調。
中安の脳裏で、市民が楽しめるスポーツの場としてのゴルフ場のイメージが膨らみ、実現の時が近づいていた。
中安の構想には候補地があった。吉敷郡阿知須町の西北部、源田畑にひろがる松林の丘陵地だ。彼は、自ら山に入り谷を下って踏査、仮の設計図が100数枚に増えていた。そのようにして中安は、国内はもちろん英米の名コースも訪ね、設計を独学していた。
「阿知須」コースを上田治が設計
昭和34年4月、阿知須の現地に、実際に杭を打ってのレイアウト実測が始まった。昭和34年10月23日起工式。設計家上田治の意見を求めながら、監督は中安。1年後の昭和35年10月29日9ホールを仮開場。
阿知須1番ホール／435㍎／パー4 真っすぐ上っていくホール。昭和35年開場、設計は上田治
昭和44年 万年池の畔に「万年池東」、昭和50年 牧場跡地に「万年池西」開場
阿知須12番ホール／150㍎／パー3
万年池をとり囲むようにレイアウトされた変化に富むコース（万年池東12番ホール／165㍎／パー3）
万年池東15番ホール／440㍎／パー4 左は池、右の林にはOBがある。バンカーの右サイドがベスト
万年池西4番／370㍎／パー4 右ドッグレッグを飛距離に応じてショートカットで攻めるホール
昭和37年10月13日「阿知須18ホール」を正式開場。昭和44年6月7日、万年池をめぐるレイクサイドコース「万年池東コース」18ホールを本開場。
昭和50年10月1日、万年池の西北にひろがる旧宇部不動産牧場跡に「万年池西コース」18ホールを本開場した。テープカットには、元首相の岸信介が率先参加している。
R・V・ヘギーが「江畑池」を設計、平成12年開場
平成12年11月1日、「江畑池コース」18ホール・6981 ㍎・パー72開場。設計はロバート・ボン・ヘギー。これで西日本最大の72ホールとなり、「宇部カントリー倶楽部」から「宇部72カントリークラブ」と名称を変えた。
江畑池4番ホール／179㍎／パー3 奥からのアプローチが難しく、方向性と距離感が要求されるホール
江畑池13番ホール／181㍎／パー3 フェアウェイのマウンドとビーチバンカー、R・V・ヘギーらしいホール
江畑池16番ホール／408㍎／パー4 右の花道サイドよりも、左の方が距離が近い独特なグリーン形状
江畑池18番ホール／441㍎／パー4 やや打ち上げのセカンドは1クラブ大きめのクラブで
「宇部72カントリークラブ」は、昭和51年〜平成13年まで、それぞれのコースでツアー競技「ペプシ宇部興産オープン」を開催した。
宇部72カントリークラブ
山口県山口市阿知須2423-1☎0836-65-5151
開場日：昭和35年10月29日
コース：18Ｈ／7115Y／P72（阿知須）
18Ｈ／6938Y／P72（万年池東）
18Ｈ／6876Y／P72（万年池西）
18Ｈ／6981Y／P72（江畑池）
設計：上田治、中安閑一、R・V・ヘギー
公式ホームページ
美しい日本のゴルフコースより（弊社刊）
取材・文／田野辺薫
気になるコースの会員権相場はこちら↓
