ゴルフコースことはじめ
文芸評論家を経て、ゴルフジャーナリストとしても活躍した田野辺薫氏。ゴルフコースの目利きとして全国のコースを取材し、週刊ゴルフダイジェストで「ゴルフの歴史を歩こう」を連載(2005~2013年)。それを一冊にまとめた「美しい日本のゴルフコース」から多くの人に名コース誕生の歴史を知ってもらおうと再編集公開しています。
そこから紫CCの36ホールが始まる。パブリックのあやめコースの用地は、野田醤油・茂木一族の所有、話は早かった。昭和35年すみれ、あやめコースを造る計画で紫興業が設立される。
醤油のことを俗に「むらさき」という。もっともらしい説だが、短絡でもある。実際は、後に終身会員にもなった作家、吉川英治の「紫といえば、武蔵野が浮かんでくる。紫草と武蔵野の土とは、切っても切れない縁である」という命名によるものだ。
地形は「100%申し分なし」(小林英年)、地主の総意に支えられ順調に進行。昭和35年10月着工、36年3月にすみれコースが完成、4月16日開場式、8月にはあやめコースが開場。わずか10カ月で36ホール完成という新記録を立てた。
コース設計は小林英年
すみれコース、18ホール・7070㍎・パー72。設計は小林英年。小林は昭和28年頃、すぐ隣の梅郷コース用地に計画されて幻に終わった小林英年設計、藤田欽哉、井上誠一監修という計画に加わっているので、その経験を買われたのか。
7070 ㍎のすみれコースは長大さで随一の難コースとなったが、もうひとつ1番ホールのライオンに始まって18番の鹿で終わるティーングエリアわきの動物像も評判になった。太平洋美術会・今里龍生の作である。
たとえば16番ホールは“駱駝のコブ”で、コブに見たてたふたつの砲台グリーンがある。1番長い13番(565 ㍎)は“象の背”でフェアウェイは広いが、背中だから微妙に左右の林へ傾き、2つのグリーンは象の耳の形で大きい。
各ホールの設計モチーフがブロンズの動物として象られた教養派のコースである。
紫カントリークラブ すみれコース
千葉県野田市目吹111 ☎04‐7124-1166
開場日:昭和36年4月16日
コース:18H/7070Y/P72
設計:小林英年
公式ホームページ
美しい日本のゴルフコースより(弊社刊) 取材・文/田野辺薫
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