このコラムでは、1980年に週刊ゴルフダイジェストが短気集中連載で報じた「県別、優良会員権ガイド」と、2019年現在の員権市場を照らし合わせることで見えてくる、ゴルフ場の「本当の価値」を考察していきます。第6回は「栃木県」「群馬県」の巻です。1980年当時、栃木県のゴルフ場数は69コース(うちパブリック3コース)で全国5位。その後、数を増やし2019年140コース余りとなっています。ここ10年で15コース以上が閉鎖する厳しい状況にありますが、それでも北海道、兵庫、千葉に次ぐ全国4位の「ゴルフ県」であることは間違いありません。

名門・那須ゴルフ倶楽部誕生(昭和11年/1936年)から83年…。1972年に東北自動車道、岩槻~宇都宮間が開通。1974年には那須ICまで伸延。鉄道も国鉄(現JR東北本線)だけでなく、1929年(昭和4年)には東武鉄道日光線が全線開通し、1931年(昭和6年)には浅草駅に乗り入れました。1960年(昭和35年)には、デラックスロマンスカーと呼ばれた「特急けごん」を運行。日光観光をめぐり、国鉄と熾烈な市場獲得競争を繰り広げた結果、「鉄道で旅」をする方が増えました。

東北新幹線も1985年に上野が始発駅となり、宇都宮まで50分弱、那須塩原まで約1時間。それまでは、「プレー前泊」が当たり前だった栃木のゴルフでしたが、日帰りが可能になりました。

しかし、現在でも栃木には、「泊りゴルフ」が定着しており、ロッヂやホテルを併設しているところが多く、金曜の夕刻(もしくは土曜の朝)にゴルフ場に入り、「週末2プレー」を楽しむ方が多いのも特徴です。ゴルフ目的なら、別荘やリゾート会員権を持つより、「宿泊施設のあるゴルフ場」のメンバーになった方が、何かとお得だと思います。

当コラムは、1980年の記事(『』で囲んだ部分)に、2019年現在の市場をGD会員権サービスが【一言】加筆して構成しております。

【ゴルフダイジェスト社・会員権サービス部】
会員権取引57年、10万件超をお手伝い
1962年(昭和37年)から、ゴルフ会員権取引業務を始めました。以来57年、ゴルフダイジェスト社でお手伝いさせていただいた方は、延べ「10万件」を超えております。ゴルフダイジェスト・ブランドがもつ安心感に加え、豊富な情報量、経験豊かなスタッフによる適切なアドバイスで全国をカバー。よりよいゴルフライフ、豊かなメンバーライフのお手伝いをさせていただきます。

以前から会員権の動きが鈍かった栃木県だけに…

【栃木県:1980年と2019年の会員権相場比較】

1980年2019年
ゴルフ場相場名変相場名変
小山95040120100
皆川城41030020
宇都宮310303030
唐沢280203045
日光1855030200
烏山城150201530
栃木145201030
芳賀1001510以下40
都賀93302530
※相場/2019年8月現在

【群馬県:1980年と2019年の会員権相場比較】

1980年2019年
ゴルフ場相場名変相場名変
伊香保270301550
桐生200309080
高崎サン14020-停止中
赤城国際110301580
草津80301520
※相場/2019年8月現在

では、1980年の栃木県のゴルフ会員権事情を週刊ゴルフダイジェストはどのように分析していたか見てみましょう。

『国鉄・宇都宮駅におり立つと、すぐわかる。クラブバス発着の看板が目に入る。最近、出口がわかれ、コースによって降り口がかわってくる。東口が10コース、西口が13コース。壮観である』

『ひところ、人の話では駅前に温泉地の旅館の呼び込み屋まがいの男がいたという。のぼりをたて「さあ、こちらへ」――まさか、そこまではいかないだろうが、クラブバスが多くて、お目当てのコースの車が見当たらないケースは、多分にあった』

『これほどコースが多ければ、ゴルファーも分散。平日など入りが少なくなるのは当然。いきおい、
歴史のない新しいコースは、割引券の乱発になる。コース数が多くて、地元のゴルファーの数が少ない。東京からでは、電車賃だけでも、特急に乗れば往復3千円はとられてしまう。ハイウェイ(東北自動車道)を走っても、そのくらいはとられる。だから自然と敬遠されがちになる。いわば、遠隔地の宿命でもある』

『だから、正直いって、会員権相場は動きが鈍い。業者もあまり在庫にしない。いつ売れるか、わからないからだ』

『さて、パブリックを除くと66コースもあるから、どれを選んでいいか、選択に困るのが実情だ。
ご注意申し上げたいのは、青色吐息のコースがあることだ。売りに出ているゴルフ場が現実に、かなりあるという噂さえ聞く。たしかに、老舗のコースを除いたら、経営者の中には「どこか高く買ってくれるところがあったら、売りたい」が、偽りのない心境だろう。気が滅入るような話で申し訳ないが、栃木のコースを選ぶ場合は、よほど慎重にしてほしい』

【GD会員権サービスから一言】
栃木県は139コースと増え、全国4位のゴルフ場数になりました。しかし、内90コースが民事再生などで、経営権が変わっています。現在はゴルフ場を閉鎖し、用地を太陽光発電(メガソーラー)などに転用したゴルフ場も多く見られます。

『自然、相場の上でもコースの評価が出てくる。小山がダントツである。会員数も600人たらず。年会費1万円。栃木県下では最も南、交通の便もいいところにある。間もなく1千万の大台にのるだろう。従来(昭和47、48年の会員権ブーム)の高値更新した唯一のコースでもある。あとはほとんど大衆向きのお値段である』

画像: 小山ゴルフクラブ(18H・6639Y・P72)

小山ゴルフクラブ(18H・6639Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、小山ゴルフクラブの会員権相場 は110万円、名変料100万円、年会費72000円です。日立、日産などの協力で昭和35年開場した株主会員制倶楽部になります。現在のメンバー数は1120名。平成2年2月には8600万円をつけた「栃木の名門」です。コースはJR小山駅から10分の場所にあり、農場跡地に造成した林間コースになります。法人入会もあり、「法人会員」がお勧めです。

『安くて名門を望まれる方に…日光がまっ先に出てくる。昭和11年オープンの那須ゴルフにはかなわないが、2番目に古いコースである。井上誠一の設計で、春秋の栃木の緑が素晴らしいし、フェアウェイの細かなうねりはプレーをむずかしくさせる(1980年当時のコースレート72.3)。社団法人制で、メンバーも1200人余り、落ち着いた雰囲気がある。ただ冬は、降雪がありクローズが多い』

画像: 日光カンツリー倶楽部(18H・7061Y・P72)

日光カンツリー倶楽部(18H・7061Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、日光カンツリー倶楽部の会員権相場 は30万円、名変料200万円、年会費9万円です。設計家井上誠一の代表作で、2003年日本オープンを開催。2020年7月には、日本プロを開催いたします。コースの歴史や風格など疑う余地がないですが、名変料200万円と、2014年に年会費を54000円から90000円に値上げしました。値上げが相場に影響し、現在に至っています。「法人会員不可」で、高い年会費を個人が負担するには重い感じがします。ぜひ「法人入会」を承知して頂ければと思います。

『コースレイアウトを重視するなら…烏山城が面白い。これまた井上誠一作だが、昭和48年(1973年)にできたコースとしては、一過言もって運営している。近ごろのコースは、やたら自然に逆らって、苗木など植えて木を増やそうとしているが、烏山城の場合、巨大な芝山(マウンド)が、ホール間をセパレート、木を1本も植えず、壮大な感じをプレーヤーに与える個所もある。ニクイ設計だ。土日のスタートもとりやすい。ただ難点は足の便が悪いこと』

画像: 烏山城カントリークラブ(27H・10776Y・P108)

烏山城カントリークラブ(27H・10776Y・P108)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、烏山城カントリークラブの会員権相場は18万円、名変料30万円、年会費3万円です。日光CCと同じ井上誠一氏設計の27ホール丘陵林間コースになります。2021年には日本女子オープンの開催が決まっています。クラブハウスに隣接する142室の大型ホテル施設を完備し、焼肉レストランや和食処などもあり、宿泊してプレーを楽しむには最高の環境です。難点は、東北道・矢板ICより26キロ(約30分)は遠いため、現状の相場となっていますが、2人乗り乗用カートのセルフでフェアウェイへの乗り入れ可など、長期滞在型リゾートや週末宿泊して楽しむプレースタイルには、お勧め致します。

『コースの良さを重視するなら…芳賀があげられる。東京の大手会員権業者が会員アンケートをとったら、200万円以下のコースで、レイアウトを含むコースコンディションのいいナンバーワンが、芳賀だった』

『コースの手入れがよく、コースレートも3コースすべて72以上あるのは立派。日本緑化土木というコース造成造園を業とする会社が造ったのだから間違いない。ここも足が不便なのが玉にきず。1973年オープン時、記念会員を300万円で募集した。まさか、その額面の証券は出ないだろうが、現在値(1980年)なら、買ってお得』

画像: 芳賀カントリークラブ(18H・7030Y・P72)

芳賀カントリークラブ(18H・7030Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、芳賀カントリークラブの会員権相場10万円、名変料40万円、年会費35000円です。ゴルフ場造成土木の老舗だった日本緑化土木系列の緑産業が手掛けたコースになります。同系列に江戸崎CC(茨城)があります。コースメンテナンスの良さは今も高評価です。しかし、北関東自動車道 真岡ICから25分は遠い。メンバーは地元の方が多いですが、新しいメンバーを取組むならロッジなどメンバーとビジターの差別化を期待します。

『家族サービスを重視するなら…矢板(27H)37万円プラス名変料10万円がいい。ここの社長がなかなかユニークな人で、ホテルからテニスコート、プールがあり、料理は、その道の専門家だけに自慢の活魚料理をだす。那須小川(27H)も35万円プラス20万、矢板と同じ設備をもっているが割引きしすぎで相場を落としている』

画像: 矢板カントリークラブ(18H・6279Y・P72)

矢板カントリークラブ(18H・6279Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、矢板カントリークラブは名義書換停止中、年会費3万円。矢板CCは、日本料理店経営の宮本勇氏が建設しましたが、その後ユニマットグループに営業譲渡。2010年に、さがみ典礼等で知られる冠婚葬祭のアルファクラブグループに譲渡し現在に至っています。名変停止の理由は、正会員募集中11万円(入会金)。

画像: 那須小川ゴルフクラブ(18H・6767Y・P72)

那須小川ゴルフクラブ(18H・6767Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
那須小川ゴルフクラブは、会員権相場15万円、名変料5万円、年会費24000円。1980年当時は27ホールで、その後9ホール増設し36ホールとなりました。(当時)女子ツアー那須小川レディスを開催していたため人気コースでしたが、2011年、 経営の那須八溝物産(株)が民事再生を申請。「チャレンジコース」18ホールをメガソーラ事業者に転売し、現在は「トーナメントコース」の18ホールで営業しています。

『安ければ多少のことは目をつぶる…鹿沼(45H)23万プラス30万円がある。名変料が高いのが気になるが、コースはいい。交通の便も、東北自動車道・鹿沼インターから約5キロと近いし、栃木県下では便利なほう。ただ、どうも評判がよくない』

画像: 鹿沼カントリー倶楽部(45H・16672Y・P180)

鹿沼カントリー倶楽部(45H・16672Y・P180)

【GD会員権サービスからひと】
40年後の現状、鹿沼カントリー倶楽部は会員権相場8万円、年会費3万円。昭和39年開場。当時、倒産した帝国観光を引き継ぎしたため会員数が多いのが弱材料です。2004年、民事再生を申請。再生計画の書面決議で投票者数が「13312名」でした。民事再生法により会員数が減り、予約も以前よりは取りやすくなったようです。東北道鹿沼ICから10分と近く、45ホールの大型コースで、名変料が5万円と安くなっています。総予算が安いのでプレー本位のかたにお勧めです。

『今後注目のコース…山田照明経営の広陵(18H)。誕生5年目のコース。縁故200万円でスタート。400万で募集を終えたが、さて、相場はいくらつくか。ある大手業者は80万と値ぶみ、ならばコースはいいし、安い。恐らく150万円前後では』

『倒産したコースや、経営者交代のコース、まったく目立たないコース、交通の便が悪いところは避けた方がいい』

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、広陵カントリークラブの会員権相場は10万円、名変料50万円、年会費3万円。当時、秋葉原電気街の山田照明が経営し信頼度があり、コースも人気が有りました。2006年に民事再生を申請。現在はアコーディアグルーフに経営権を譲渡しました。山田照明が経営していた1990年「日本女子オープン」を開催した実績あるコースです。アコーディアでは正会員募集を行っており総額18万円。地元の方、50歳以上は10万円で販売しているため、これでは時価相場は立ちません。

宿泊施設は遠隔地の第一条件?

『県内に33コース(うちパブリック6コース)ある。群馬は県がゴルフ場に力を入れているせいか、県営のパブリックが多い。それはともかく、関越自動車道が3カ月前に開通したことで、来場者が増えたことは事実である。ただ、東京・練馬から前橋インターまで片道1800円は痛い』

『群馬県は、会員募集中のコースが多く、新設も多いが、相場では東武がバックの伊香保がトップ、桐生が迫っている』

『滅多に行かない人にとっては、270万もだして伊香保を買うのは、ちょっと考えもの。年に1、2回なら、その都度、ビジターフィ払っても、その方がお得。割引パックがあれば、それを利用すればいい。伊香保温泉に泊まれば、たいていの宿の主人が会員、スタートがとれる』

画像: 伊香保カントリークラブ(18H・6794Y・P72)

伊香保カントリークラブ(18H・6794Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、伊香保カントリークラブの会員権相場は15万円、名変料50万円、年会費45000円。群馬県最古(昭和34年開場)の株主会員制です。当時、東武鉄道グループ。2013年年、東武鉄道グループから伊香保グリーン牧場に経営交代。経営母体が、東武鉄道から離れると経営不安が先に立ち売りが売りを呼び、値崩れを起こしました。

画像: 桐生カントリークラブ(18H・6464Y・P72)

桐生カントリークラブ(18H・6464Y・P72)

【GD会員権サービスから一言】
桐生カントリークラブの現在の会員権相場は100万円、名変料80万円、年会費18000円こちらは今でも東武鉄道(株) 100パーセントの子会社。系列の下仁田CC、朝霞パブリックなどがあります。コースは赤城山南の標高600メートルの丘陵地に広がる林間コースです。メンバー数が少なく、母体の信頼度から預託金返還にも応じており、売り物件は殆ど出ない優良会員権になります。

『夜のムードを楽しむロマンチックな人には…赤城国際はどうだろう。なんでまた、という人もいようが、あの前橋市内を見下ろす夜景がすばらしい。もちろん、コースもいい。彼女でも1度連れて行ったら、眼下に見える灯りはムードを盛り上げる。翌日は紅葉。これまた彼女のハートを強く打つだろう。標高750メートル。これからはちょっと寒くなるが…』

画像: 赤城国際カントリークラブ(27H・10657Y・P108)

赤城国際カントリークラブ(27H・10657Y・P108)

【GD会員権サービスから一言】
赤城国際カントリークラブ、現在の会員権相場は20万円、年会費25000円。ロッジから前橋市内を見下ろせる夜のムードはバッグンです。コースは27ホール丘陵林間。アクセスは関越道・赤城IC20分。2019年、年会費2万円から25000円に値上げしましたが、低設定は経営努力と言えます。

『ノーザン赤城(27H)、ノーザン上毛(18H)、そして埼玉のノーザン錦ヶ原(45H)この3コースが共通で110万円プラス名変料15万円は安い。錦ヶ原単独だけで60万以上はつけられる。とすれば、残り2コースは50万。さきごろ日本プロが行われたノーザン赤城。立派なホテルつきで、国鉄・渋川駅から約20分で行ける。おそらく150万から160万にあがってくるだろう』

『安くて将来性のあるコース…高崎サンコーがいい。しかし、なぜこんなに安いのか。安売りしすぎである。コースはまあまあ。宿泊施設は立派。54ホールもあって、バックは賛光電器。高額所得者で高崎市内でもトップに近い寺本欣正社長の経営。「客を大事にしたい」が、サービス過剰になって割引券の乱発になり、相場を下げているのでは。これから体制を立て直したら、上がってくるのは必至。名変料を20万から一気に5万にしたのも、入りやすくなった。ただ、こうやたら安くして結果は、というと、上げムードにならないから不思議』

画像: サンコー72カントリークラブ(54H・19962Y・P216)

サンコー72カントリークラブ(54H・19962Y・P216)

【GD会員権サービスから一言】
40年後の現状、サンコー72カントリークラブは名変停止中、年会費無料です。賛光電器産業(本社・東京・上野)の創業者、寺本欣正氏は、全国の街路灯60パーセントのシュアーを持ち、同じ地元の中曽根康弘元総理の後援会会長も務めた人物です。本コース63ホールにプラス、ミニコース9ホールを造り72ホールに。夏に男子トーナメント、サンコーサマーを開催。1986年15周年で350万円、87年クラブハウス(8階建てホテル)完成記念で1100万円で募集。72ホールの大型コース、年会費無料もあり、それなりの人気がありましたが、会員権業者指定3社だけが取扱いしたことで、マーケット(市場開放)が徐々に減り、名変停止に。指定3社扱いの「裏名変取引」に至っています。現在は、観音コースの営業を停止。コース用地は太陽光発電事業に替り54ホール営業となっています。

『あえて一言…会員募集中のコースがやたら多い。十分注意してほしい。「新設」を選ぶなら、
バックがしっかりしている所を選んでほしい。でないと、安く買ったはいいが、会員数が多くて、ろくにプレーできない、なんてことにもなりかねない』

(週刊ゴルフダイジェスト1980年11月12日号)

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