セント・アンドリュースには、ゴルファーが知るべきことがたくさんある。その謎を解き明かすべく、ロンドンから名探偵シャーロック・ホームズが登場。 深く知れば知るほどゴルフが楽しくなる「ゴルフの聖地」の謎を、紹介しよう!
Q.この街ではトム・モリス親子が有名だが、彼らにゴルフを教えたのは誰?
ゴルフコースに入る前に、まずはセント・アンドリュースの街を見てまわったホームズ。海に面して東西方向に街が伸び、大通りを東へ向かうと突き当たるのが歴史的な建造物。中でもひときわ目を引くのが大聖堂だ。
そもそも、この街にはゴルフとともに宗教の歴史がある。キリストの12使徒の一人、聖アンドレの遺骨を乗せた船が難破し、西暦370年にこの地にたどり着いたという伝説がある。
その後6世紀になると街の骨格ができあがり、スコットランドの宗教の中心地として発展を遂げた。
1161年に着工された大聖堂は数百年を経て完成し、この街のシンボルとなる。それは宗教改革によって破壊されるまで、多くの巡礼者を受け入れ、ここに暮らす人々を温かく見守ってきた。破壊された大聖堂の石を使って家を建てた者もいるという。いまもこの街のどこかにそんな家屋がある。
この大聖堂の墓地には街の多くの人が眠っている。"ホーム・オブ・ゴルフ"を作り上げた偉人たちの墓標もある。
ゴルフ史上ただ一人の不敗の男と言われた、「アラン・ロバートソン」もそのひとり。第1回全英オープンのちょうど1年前にこの世を去った。フェザーボール製作の際に細かな羽根を吸い込んだ原因とも言われる。
アラン・ロバートソン
祖父、父とつづくボール職人の家に生まれ、品質のよいフェザーボールを作り出した。オールドコースの改修を手掛け、現在に至るコース設計の基礎を築いたことでも知られる。オールドコースで初めて80を切った(40・39)ゴルファーであり、試合の賞金で生活したプロゴルファーの先駆け。死後1世紀以上を経て2001年にゴルフ殿堂入り
彼に師事したトム・モリス親子。父は師匠と組んでフォアサムマッチに出場していた。息子はなんと17歳で全英オープンを制するほどの早熟の天才でだった。街の誰しもが彼らを尊敬し、敬愛する。
トム・モリス親子
アラン・ロバートソンに師事し、ゴルフを覚えた父親オールド・トム・モリス。息子のトム・モリスJr.は最年少で全英オープンに勝った
ここは遺跡の中にもゴルフが眠る、実に興味深い街なのだ。
Q. なぜ、セント・アンドリュースの17番が世界最難なのか?
世界中のゴルファーが回ってみたいと口を揃える「オールドコース」。そのレイアウトは時に理不尽と思えるものもあるが、それがゴルフを面白くするものだと先人たちは気づいていた。
自分のショットを遮るものがあるからこそ、そこをどうやって攻略するかを考えることができる。そして何より、それを考えることが楽しい。
答えは、17番パー4「ロードホール」は、すべてのショットが「大一番」だから。
簡単にショートカットできないからこそ、17番のティーショットに価値がある。
【17番ホール 第1打】看板の「O」の上を狙って打つティショット
右ドッグレッグの17番は、ホテルの黒い小屋を超えていくショットから始まる。壁に書かれた「OLD COURSE HOTEL」文字のうち、COURSEの「O」の上を狙ってドローボールを打つのが理想だ。
【17番ホール 第2打】入れたら地獄の「ロードバンカー」
ティーショットが成功しても気は抜けない。グリーン手前のポッドバンカーがクセモノだ。かつて中嶋常幸がこのバンカーにつかまり「9」を叩いて以来、「トミーズバンカー」とも呼ばれる。
砂面に傾斜がつき、アゴは直角、ボールの位置次第では、グリーン方向には打てない。ヨコに出すかしか方法はないのだ。
トミーズバンカー
1978年の全英オープン3日目。17番ホールまでトップタイだった中嶋常幸プロが脱出に4打を要し、その結果パー4で9打を叩き、優勝争いから脱落。以後、そのバンカーは中嶋プロの海外での登録名から"トミーズバンカー"とも呼ばれるようになった。
【17番ホール 第3打】奥にこぼせば、砂利の上でも"あるがまま"
バンカーを嫌ってグリーン奥にこぼすと地道からのショットを強いられる。遠く日本やロンドンのような救済ルールは皆無。どこからでもあるがままの状態で打つ。地道奥のアスファルト上からでも同様だ。
【17番ホール 第4打】テレビでは分からない、アルプス級の傾斜グリーン
グリーンオンしたからといって油断は禁物だ。1ヤード以上のマウンドがあり、さらにロードバンカーに向かって傾斜がついている、カップ位置次第ではミスパットがバンカーに転がり落ちることもあるそうだ。
Q. オールドコースには、ブラインドホールがいくつある?
正解は7ホール。
先が見えなければ、見えないなりに打つしかない。コース内に112個あるバンカーは見えないところにいくつもある。ナイスショットを放っても、入ってみれば人が1人やっと入れるような大きさのバンカーにつかまっていることもある。
そんな場合でも、さっさと脱出の方法を考えるのが賢明なゴルファーというもの。ゴルフが実にシンプルなゲームであるということをオールドコースは教えてくれるのだ。
「見えない」「分からない」を愉しめるようになって、ゴルファーとして一人前なのではないだろうか。だからこそ、オールドコースにはコースを熟知したキャディが付くのだ。クラブとボールを拭くためだけにいるわけではない。
そして、耳を澄まして、ブッシュやマウンドの向こうを想像してみるのだ。「あれこれ考えずに打ってみればいいさ」と、昔の名手たちの声が聞こえてくるようだ。
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