1枚ではもったいない。ここでは常識!「はしご蕎麦」
「白くて綺麗と言われる蕎麦の花は、かつて痩せた土地の代名詞でした。ここ深大寺周辺も田んぼの代わりに蕎麦を作っていた背景があります」。そう教えてくれたのは深大寺の「雀のお宿」店主の御林洋さん。昭和30年代中頃に起きた深大寺そば屋開店ブーム。「雀のお宿」もブーム只中に生まれた一軒だそうだ。
この近辺は湧水が多く、深大寺周辺のそば畑でとれたそば粉と湧水を使っていたが、開発でそば畑がなくなり、現在は各店がそれぞれのやり方で営業しているという。「なので、正確に言うと『深大寺そば』というのは、深大寺で打たれ、お寺の門前で食べられるそばを指しているんです」(御林さん)
味とともに雰囲気を楽しむ今どきなエピソードだが、400年もの間、多くの文化人から愛されてきた「粋」を、江戸っ子気質の東京人たちは受け継いできたのだろう。現在、約30店舗ある深大寺そば加盟店はどこも昔ながらの佇まいを見せ、江戸の町へタイムスリップしたかのような錯覚を与えてくれる。
深大寺付近へ来ると、まず驚くのがそば屋の数。まさに「軒を連ねている」お店のほとんどがそば屋で、それぞれのお店が贔屓客でごった返している。道行く人に聞いてみると、近所の住人が散歩がてらに食べにくるケースがことのほか多い。なかでも評判がいいのが御林さんの「雀のお宿」と、天ざるがおすすめの「きよし」、細打ちせいろの「玉乃屋」、更科系と粗びきそばの「そばごちそう門前」の4店だった。
まず、雀のお宿の「もりそば」をズズッとたぐってみる。茹でた後、冷水でさらしたそばはツルツルで喉ごしがよく、最後に香る蕎麦の香りも心地よい。やや甘めの汁は、かえしが効き、そば湯とともに供すれば最後の一滴まで飲み干したくなる。この味目当てに海外からのリピーターも少なくないという。
「いろいろはしごしてみて味を比べてください」と御林さんのアドバイス通り、そば屋をはしごしてみる。「そばごちそう門前」では白く艶のあるそばをいただく。付け合わせの焼き椎茸がよく合う。そば粉の香りをより感じる粗挽きそばも評判だそうだ。お次は深大寺横の坂道を上がった先にある「玉乃屋」。自家製粉されたそば粉十割の細打ちせいろは香り高く、噛むと甘みが口の中に広がる。
最後に訪れたのは、数十年来の常連も多いという「きよし」。一風変わった柔らかめのそばに、「これでもかっ!」と盛りつけられた天ぷら。「なぜか病みつきになる」という常連の意見もうなずける。満腹になって店を出ると、玉乃屋で見かけた人とすれ違った。
そう、深大寺では「はしご蕎麦」が常識のようだ。
雀のお宿
TEL.042-485-1188
営業/11時~17時(土日祝11時~18時)
定休/無休
駐車場/なし
玉乃屋
TEL.042-485-0303
営業/9時30分~16時30分
定休/月曜(祝祭日の場合翌日)
駐車場/なし
きよし
TEL/042-483-3329
営業/10時~19時
定休/水曜
駐車場/食事の方は無料(普通車5台)
そばごちそう門前
TEL.042-487-1815
営業/10時~16時
定休/月曜(祝祭日の場合振替)
駐車場/なし
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