ゴルフ場メシ向上委員会は「高くて」「マズい」と何かと不評の多いゴルフ場の「味改革」に役立つヒントを探しながら、誰もが食べて旨いと感じる味覚の標準値を探ります。「旨いの基準」は本家本元、本流の味を提供し続ける伝統店、人気店のメニューを考察し、多くの人に支持される味の秘密に迫るものです。
出汁は使わず、具材の旨味で炊き上げる。これが本物の味!
釜めし春は大正15年創業。その歴史は90年になる。創業のきっかけは関東大震災まで遡る。震災が起きたとき、地域住民で助け合い、大きな釜で炊き出しを行ったそうだ。それを喜んで食べている人々の姿を見て、「この大きな釜じゃなくて、一人前の釜めしを提供することはできないだろうか」
と考えたことろが始まりだったそうだ。一号の釜めしを始めて提供していく中で、初代はその技術を惜しむことはせず、教えを乞いに来た人にはすべからく、その技術を伝えた。これが今になり、
浅草に釜めし屋が多い理由のひとつになっている。
さて、秋の食材の王様といえば「松茸」。その香りの高さに、秋を心待ちにしている人も多い。釜めし春でも、この季節は季節限定で「松茸の釜めし」を提供している(9月~11月頃)。地元の客はもちろんのこと、秋になると「松茸、はじまったかい?」とわざわざ連絡してくるファンもいるほどだ。
「うちの釜めしは出汁を一切使っていないんですよ」というのは、釜めし春の4代目、豊田善弘さん。出汁を使っていないとはどういうことなのだろう。「ご飯と出汁を先に炊いて、具材を後から乗せるところもありますが、うちは最初から米と具材を一緒に炊きます。その時に使う調味料は、実はどの釜めしも同じ。醤油と酒とみりんのみ。それでも味が違うのは、一緒に炊き込んだ具材の味が、
その釜めしの味を決めているからなんですよ」
グルグツグル……そろそろ火加減、調節しようかな
「釜めしを炊く時の一番のポイントは火加減です。中に入れる具材によって少しずつ火の具合が変わりますからね。釜めしというと、最初からフタをして炊いているように思う人が多いかもしれません
が、実は違うんですよ。最初はフタをしないで火にかけて、沸騰して汁気が少し減ったら金物のフタをします。そこからはトロ火にかけて炊いていきます。炊きあがりの時間は全部同じ。でも火を調節するタイミングが微妙に違うんです。炊けたら薬味をのせてフタを木製のものにかえて出来あがりです」
さっそく、炊き立ての松茸の釜めしをいただく。フタを開けると蒸気と一緒に松茸の香りが「ホワッ」と立ち上がる。炊き立てをハフハフ言いながら口に運ぶと、もちもちの米に上品な松茸の香りが加わって、鼻から抜けていく。華美に主張はしないが、存在感のある味。そして香ばしいおこげが顔を出す。
松茸の釜めしと一緒に土瓶蒸しも。松茸のエキスが十分にでた出汁にサッとすだちを絞っていただきます。すだちの爽やかな酸味が、松茸の香りを引き立てる。秋の風が口から鼻の奥を通り、四季を愉しむ日本の心に届く。釜めし春の「秋の食欲」は、初代から続く90余年の年輪にも似た、深い味わいでした。
一緒にどうぞ!こちらも限定、松茸土瓶蒸し
【今回紹介した旨いの基準店】
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月刊ゴルフダイジェストより