これまでは「ブレードタイプには細いグリップ」、「マレットタイプには太いグリップ」が合うと言われてきた。だが、PGAツアーを見ると、どうもそうとは言い切れない。それぞれのパッティングスタイルやストロークに合わせてグリップをチョイスするプレーヤーが増えている。アマチュアがぴったりのパターを選ぶにあたって、今どきのヘッドとグリップの組み合わせ方を、最新のゴルフ理論に精通している小野寺誠プロに聞いた。
画像: 【解説】小野寺誠プロ 年間150回以上のラウンドレッスンを行う実戦派プロ。単身アメリカに留学し、最新理論を吸収。ギアにも精通している

【解説】小野寺誠プロ
年間150回以上のラウンドレッスンを行う実戦派プロ。単身アメリカに留学し、最新理論を吸収。ギアにも精通している

パターとグリップの機能をおさらい

パターヘッドの2大本流といえば、今も昔も「ブレードタイプ」と「マレットタイプ」。それぞれの特徴は以下の通りだ。

画像: (左)ブレードタイプ(SIGMA2アンサー)(右)マレットタイプ(SIGMA2タイン4)

(左)ブレードタイプ(SIGMA2アンサー)(右)マレットタイプ(SIGMA2タイン4)

ブレードタイプ は操作性重視
重心深度が浅く、自分の意志でフェース面を操作できる。フェースが開閉しやすいのでショット感覚でフック・スライスをイメージして出球を操れる。振り幅でタッチを作りやすく、距離感も合わせやすい。

マレットタイプ 直進性重視
深重心なのでミスヒットに強く、フェースをスクェアに保ちやすい。ヘッド重量があるので多少芯を外しても転がりがよく、ブレードタイプより直進性が高い。慣性モーメントが大きいため打ち出す方向もブレにくい。

画像: (左)細いグリップ(PP58) (右)太いグリップ(PP60)

(左)細いグリップ(PP58) (右)太いグリップ(PP60)

細いグリップ 敏感派
指先で包むように握るので、繊細な感覚がクラブに伝わり、フェース面を操作しやすい。指関節のひっかかりが良く、いつも同じ握りを作れる。反面、細いことでパンチが入りやすい、感情がヘッドに伝わりやすい、などの弱点もある。

太いグリップ 鈍感派
手のひらで握るので、指先の敏感な感覚を抑えられる。さらにリストの動きが抑えられ、フェース面が安定しやすい。指先の感覚を殺すことになるため、繊細なタッチが出しにくい反面、感情に影響されにくいともいえる。

【これまでの王道セッティング】

画像: (左)繊細なヘッドとグリップを組み合わせたフィーリング優先のセッティング。ロングパットに強い。 (右)ストレート軌道のストロークに最適な組み合わせ。方向性重視でオートマックに打てる。ショートパットに強い。

(左)繊細なヘッドとグリップを組み合わせたフィーリング優先のセッティング。ロングパットに強い。
(右)ストレート軌道のストロークに最適な組み合わせ。方向性重視でオートマックに打てる。ショートパットに強い。

このように「繊細×繊細」、「オートマ×オートマ」とヘッドとグリップの機能を揃えるのが常套だったが、J・スピースやJ・トーマスは、それをせずに、あえてクロスさせることで「感性」と「オートマ」の共存を狙っていると言えそうだ。

スピースとトーマスは「いいとこ取りのセミオートマ」セッティング

「ブレードのタッチの合わせやすさや操作性を大事にしつつ、太いグリップで感覚の繊細さをセーブ。フェースの開閉の度合いも抑えられ、方向性が安定します。マニュアルのヘッドとオートマのパターを組み合わせたセミオートマ仕様ですね」(小野寺)

【ブレード×太いグリップ/スピース】ヘッドの操作感を活かしつつグリップで鋭敏度合いをセーブ

画像: ジョーダン・スピース。メジャー3勝。昨季のソニーオープンでは28メートルの超ロングパットを決めて話題を集めた。2017年PGAツアーで平均パット数2位だが、2018年は得意のパットでやや苦しんだ

ジョーダン・スピース。メジャー3勝。昨季のソニーオープンでは28メートルの超ロングパットを決めて話題を集めた。2017年PGAツアーで平均パット数2位だが、2018年は得意のパットでやや苦しんだ

画像: 15歳から使っているブレードの"スコッティキャメロン009"がエースパターだが、グリップはスーパーストロークのテーパーのない円筒タイプ。「ブレード×太いグリップ」セッティング

15歳から使っているブレードの"スコッティキャメロン009"がエースパターだが、グリップはスーパーストロークのテーパーのない円筒タイプ。「ブレード×太いグリップ」セッティング

【マレット×細いグリップ/トーマス】直進性の高いマレットヘッドに、指先の感覚をプラスする

画像: ジャスティン・トーマス。昨季の平均パット数3位。平均バーディ数4位でパット巧者として知られる

ジャスティン・トーマス。昨季の平均パット数3位。平均バーディ数4位でパット巧者として知られる

画像: トーマスはマレット派。グリップはJ・スピースと同じスーパーストロークだが「ピストル型」を使い、最も細いタイプを選択している

トーマスはマレット派。グリップはJ・スピースと同じスーパーストロークだが「ピストル型」を使い、最も細いタイプを選択している

「マレットの特徴である方向性の良さや直進性の高さを生かしながら、細いグリップで指先の感覚をプラス。感覚も加えてパッティング慣性を高めています。オートマのヘッドに、マニュアルのグリップを組み合わせた、こちらもセミオートマ仕様といえます」(小野寺)

2種類の「セミオートマ」。トライする価値は高い

セオリーの「ブレード×細いグリップ」は超繊細。ハマればパットが入りまくるが、そうでない日はカップに嫌われ続け……という不安がよぎる人もいれば、「マレット×太いグリップ」では、ショットとはまるで別物の超鈍感さが気になる人もいるだろう。スピースやトーマスのアイデアを見倣って、自分のフィーリングにマッチした新しい組み合わせを試してみてはいかがだろう。

週刊GD2018年11月20日号より

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