30ヤードの飛距離差が、そのまま「開発の差」となった
2019年モデルとなる日本メーカーのプロモデルは、小ぶりなハイバックの「日本型」から、投影面積が大きなディープフェースでシャローバックの「グローバル型」に移行してきた。
「このようなドライバーの傾向を見ると、日本も世界を舞台としてドライバー開発を考えるスタート地点に立った、第一歩を踏み出したかなと感じます」というのは、クラブ設計家の松尾好員氏。
日米のドライバー開発に違いと差が出てきた理由には、メインターゲットとなるプロプレーヤーの飛距離差が考えられる。「日本のプロが300ヤードなのに対してPGAツアーのトップは330~340ヤード。この30ヤード差は大きいですね。一般のゴルファーでいえば、アベレージ用とアスリート用のクラブを作るほどの差があります。2000年頃までは“いい勝負”をしていたと思うんです。それが今では新しいテクノロジーは米国が先行し、日本がそれに追従する。プロの“持ち飛距離”の差がそのまま開発の差になった気がします」(松尾)
300ヤードを軽々とオーバーするパワー、極限の精神状態のなかで求められる正確性、それに応えるためのクラブづくり。そこには最先端の技術が導入される。重心を適切な位置に設定するためのカーボンクラウンに、シャフト、ロフト、ライの調整機能。画期的なテクノロジーも、普通のゴルフでは考えられない場面で結果を出すために考えられたものなのだ。
【日米ドライバー比較】
【其の1】「高反発」を捨てきれなかった日本メーカー
日米の開発の差が広がったのは2000年あたり。日本は高反発クラブとのダブルスタンダードにこだわっていたころ、米国は大型ヘッドの研究を始めていた。
【其の2】飛距離の基準が違いすぎる
330~340ヤードを正確に飛ばすドライバーを作るのと、300ヤードを正確に飛ばすドライバーを作るのでは、プロ用とアマ用の差ぐらいコンセプトが違ってくる。
【其の3】商品構成が違っている
日本ではプロ用とシニアを中心としたアマ用の2ブランドを展開する一方、米国は1ブランドでタイプが異なるヘッドをラインナップするのが主流となっている。
ジャスティン・ローズが「本間」で勝った! 日本メーカーの逆襲がはじまった
「ドライバーに投入されているテクノロジーも、車の開発と同じく、最初は高級なオプションだったものが、そのうち標準装備となります。求められる標準装備のレベルが上がり、初めて同じ土俵にあげられるのです」(松尾)。そして厳しい要求をクリアしてプロが使うことは大きな影響を及ぼす。
「日本は今、トッププロ(アスリート)のクラブとアマチュア、とくにシニア用のクラブ作りが別々に進んでいます。しかし、米国は基本的にプロ、アマ同じクラブです。かつては日本もそうであったように、またプロのクラブからの影響が重要視される時代になるでしょう」(松尾)
それだけにカーボン製のクラウンが装着されたニューモデルたちには、世界で活躍するという大きな期待がかかる。
「FWも含めて世界での使用率が上がっていってほしいですよね。日本のツアーで認められるだけではいけません。たとえ試合で使われなかったとしても、近くにいるプロも興味を示して打ってみるはずです。これが世界基準の開発のヒントになるのです」(松尾)
もともと評価の高かった打感のよさと、仕上げの美しさに加えて世界基準のテクノロジーの「標準装備」が搭載された日本メーカーのドライバー。世界を舞台にして活躍する姿が2019年には、見られるかもしれない。
【本間ゴルフ】TW747 460
プロが信頼を寄せる日本伝統の匠の技術を結集。世界の舞台を意識したデザインと形状へ大きく進化したニューTWシリーズ。プロたちもヘッドが大きく、調整機能がついたシャローバックの「TW747 460」をメインに使用予定。ジャスティン・ローズがPGAツアーで早くも優勝をあげ、海外の展開にも注目だ。
「本間ゴルフ」契約プロもテスト開始
PGAツアーをよく知る岩田寛は「TW747 460」をテスト。真っすぐに伸びる高弾道と、やさしさに驚いた。
小田孔明も「TW747 460」をチョイス。ソールにある前後のウェートを入れ替え打ち比べている。
【ブリヂストン】ツアーB XD‐3
金属繊維を用いたカーボンクラウンを搭載し、目でわかる機能面での見直しが図られた。形状はプロが好んで使っていた小ぶりなハイバック形状からシャローバックへ変化しており、ねじれの少ない直進弾道が打てる。
【ダンロップ】スリクソンZ785
カーボンクラウンと最新のカップフェースを搭載。形状も日本のプロ好みの形から、ディープフェースでシャローバックの「グローバル型」となった。日本では使用を開始したプロたちが、次々に優勝。性能の高さを証明した。世界の舞台で活躍するシーンを早く見てみたい。(了)
週刊GD2018年10月16日号より