体の回転とともに無理なく体を起こしていく
尾崎三兄弟は長年〝腰痛〞との戦いを強いられてきた。ジャンボ尾崎が腰にシャフトを当てて歩く姿はお馴染み。尾崎健夫も尾崎直道も長年腰の治療をしてきた。だからこそ、タイガーが腰痛から奇跡のカムバック、そしてメジャー優勝という快挙を成し遂げたことに、3人とも驚きを隠せないのだ。
健夫 オレはどうしても痛いところを甘やかしてスウィングしちゃっている。タイガーは復帰した当初は少し甘やかしていたけど、マスターズでは、まったく甘やかさずに腰を回せるようになっていたな。
直道 ボクも腰を痛めて手術したけど、腰って完全に治らないんだよな。だから徐々にスウィングを変化しながらやっているんだけど、タイガーのスウィングのリニューアルは凄いね。昔のイメージは残しつつ、うまくパワーをいなせているよね。上下動がなくなり、その場で体を回転して、回転と共に体が起きるようになったね。
40を超えて復活する難しさ、俺もよくわかっている byジャンボ尾崎
40歳をすぎてからの復活と言えば、ジャンボ尾崎と重ね合わさずにはいられない。ジャンボは40歳をすぎてから63勝を挙げ、賞金王を9回も獲った。
55歳でツアー優勝を飾り、70歳を過ぎた今も戦っている。そのジャンボに話を聞いた(取材はマスターズの翌週)。
ジャンボ 素直に嬉しいよね、タイガーの復活は。あれだけ世界が興奮する選手はいないからね。(マスターズでは)非常にバランスのいいスウィングをしていたよな。8割ぐらいの力でシュンと振っていたな。よっぽど体調が良かったんだろうなと思うよ。アイアンも左右に上手く曲げられていたし、狙い打ちできていた。パッティングのフィーリングもすごくよかった。あの距離感、ああいうのが出てくれば、もうタイガーに勝てる選手はいないよ。
ジャンボ 元々持っているものが違うんだし、タイガーはゴルフの神様だからな、ちょっとしたことで復活できるんだよ。
── 腰の手術を経て、長年のブランクを経て復活する難しさというのは相当なものだったと思いますが……。
ジャンボ オレもそうだったけど、人間って40歳を超えると体が思うように動かなくなるし、スポーツ選手というのは妙にプレッシャーがかかってくる時期なんだよ。でもそういうのはまったく感じられなかったな。この調子ならまだまだいけるんじゃないかな。
── サム・スニードの通算優勝記録( 82勝/タイガーは81勝)もニクラスのメジャー優勝記録( 18勝/タイガーは15勝)も超えられますか?
ジャンボ 20年前だったら行けたかもしれないけど、すべてにおいて変わっていて、世界のゴルファーはすごく伸びているからな。50すぎたらゴルフはだいたい終わりだし。だから優勝記録を超すには、これから40代でどれだけやれるかにかかっているよ。タイガーはおそらく50歳で引退するんじゃないかな。
「腰に負担のないスウィングだよね」(直道)
捻転の深さは変わらず、前傾は今のほうが深い。ダウンスウィングで、以前は胸が飛球線後方に向くほど我慢していたが、それが自然になっている。
また、2003年のころのフォロースルーは上体の前傾がなかなか起き上がらずに粘っていたが、2019年は体が起き上がるのが早く、あまり粘らなくなった。
日本のレジェンドも含めて世界中が興奮するタイガーの活躍。40代のうちにメジャーであと何勝を挙げるのだろうか? これからもゴルフ界の中心にはタイガーがいるはずだ。
月刊GD6月号より